インドネシアの財政状況・法人税

インドネシアでは、多くの新興国で導入されているような燃料補助金制度が導入されています。燃料補助金は国際価格で輸入した燃料を安く国内に販売し、その差損分を国が負担するもので生活保障の意味合いが強いです。

この燃料補助金制度が、慢性的に財政を圧迫しています。財政収支(対GDP比)2010年:-1.24%、2011年:-0.63%、2012年:-1.66%、2013年:-2.15%。そして、13年半ばからの通貨ルピア安によって調達コストがかさみ、政府の補助金負担がさらに増加しています。その上、景気後退による法人税収入の減少で財政はさらに悪化している状況です。

こうした財政状況を懸念した政府が、今年度の財政収支(対GDP比)予測を出したところ、法律で定められた-3%以内を大きく下回り-4.5%となっていることから、大幅な歳出削減に踏み切りました。その規模は8600億円になり、それにより-2.5%程度の着地になると見られています。金融引き締めのみならず、こうした緊縮財政がインフラ整備等の面から景気をさらに冷やすことにならないか注視されています。

インドネシアの消費者物価

上記で挙げた国際収支の天井の問題により、消費者物価は常に上昇圧力を受けています。それに加えインドネシアでは、2013年の6月に政府が燃料補助金の削減に踏み切ったことから、燃料価格が上昇し、消費者物価率が急激な上昇を始めました(2010年:7.0%、2011年:3.8%、2012年:4.3%、2013年:8.4%、2014年7月:4.53%)。

足下はその影響が消え、落ち着いてきたように見えますがまだ油断ができない状況です。さらなる燃料補助金の削減や経常収支の悪化に伴う海外投資家からの通貨ルピアの売り圧力には引き続き注意が必要です。

インドネシアの為替動向

ルピアは2010〜2011年に天井を付けます。その後12年以降は、欧州の金融不安や中国経済の調整などを背景に、商品市況下落及び貿易・経常収支悪化—>ルピア下落—>インフレ圧力—>ルピア下落の悪循環を繰り返し下落してきました。

しかし、金融・財政政策の引き締めにより、ようやく底値を付けたように思えます。USドル/1000ルピア 2010年:0.111、2011年:0.110、2012年:0.104、2013年:0.084、2014年8月:0.086。しかし、消費者物価と同様に、今後も注意は必要です。

インドネシアの経済見通しとその課題

インドネシアは上記で挙げた国際収支の天井という問題が最もネックになっているように思えます。この問題を解決するために、構造的に輸出を増やすことが求められます。それにより、経常黒字の維持、通貨価値の下落防衛、輸入インフレを抑えることにより長期的経済停滞を回避することができます。

しかし、構造的に輸出を増やすには時間を必要とします。外部要因の変化で輸出が増えることがなければ今の経済状態がしばらく続くことを意味するのだと思います。そのスピードを早めるためにも新政権での新たな政策に期待がかかります。

photo credit: インドネシア via wikipedia cc