前日については、米・6月消費者物価指数(前月比/前年比)が市場予想±0.0%/+1.6%に対して+0.1%/+1.6%、米・6月消費者物価指数(コア)(前月比/前年比)が市場予想+0.2%/+2.0%に対して+0.3%/+2.1%となり、前年比のCPIこそ市場予想通り低調な数字ではありましたが、CPIの前月比は市場予想を上回り、コア部分については改善部分が散見されるため、ドルの買い戻し材料になりました。この経済指標が全て悪化するような事態になれば、マーケットは50bpの利下げを織り込む形でドル売りが加速したと思いますが、CPIの数字を見る限りは、25bpの利下げに落ち着きそうなことから、既に織り込まれているとの思惑もあり、ドルの買い戻しが強まりました。
パウエルFRB議長の上院での半期議会証言では、質疑応答にて「失業率と物価の関係は失われた」「今の金融政策は緩和的とは言えない」などと発言し、引き続き利下げを示唆したものの、これは想定の範囲内であったことから市場の反応は限定的でした。過度な利下げは金融市場の混乱を招きますが、25bpの利下げは既に100%織り込まれていることから、前日はNYダウが初めて2万7,000ドルの大台に乗せ、史上最高値を更新するなど、株高の動きがクロス円の下値を支えています。引き続き株式市場が堅調な推移を見せるのであれば、ドル円については、再び108円台がコアレンジになりそうです。
ラマポーザ南ア大統領がクガニャゴ南アフリカ準備銀行(SARB)総裁を再任したとの報道が好感されているランドですが、深刻な財政難に陥っている国営電力会社ESKOMに対して、最大の債権者である南ア公共投資会社(PIC)がエクイティスワップなどを使った支援策を提案と報じられており、ランド円では7.789円まで上値を拡大しています。しっかりと7.80円台に乗せてくるようであれば、もう一段高を目指す動きになりそうです。
今後の見通し
英ガーディアン紙の市場調査によると、保守党党首選でジョンソン前外相はすでに当選するに十分な票が固められていると報じられています。党首選は7月23日に発表されると報じられていますが、一部では23日の前にハント現外相が選挙戦から撤退する可能性もあるのではないかとも報じられています。次期欧州委員長候補であるドイツのフォンデアライエン国防相は、「もし英国がもっと時間が必要なら、延期は正しい考えだろう」との見解を示していることもあり、ジョンソン前外相の圧勝ムードが強まる中でも、それほどポンドの下落は確認できていません。
また、BOEの金融行政委員会は、半期に一度の金融リスク評価を明らかにし、英国内銀行は合意なきEU離脱や世界的な貿易摩擦の両方に対して対応できるだけの十分な資本を備えているとの判断を示しました。仮にジョンソン前外相が党首になったとしても、「合意なき離脱」を目指すうえでの最終手段となる議会閉鎖は、「議会閉鎖を阻止するための修正法案」が僅差で可決されており、議会が「合意なき離脱」を防ぐことができる環境が整いつつあります。ジョンソン前外相が党首になる=ポンド売り、という図式はやや崩れつつあるのかもしれません。
ポンド円136.20円レジスタンスをベースとした戦略
135.80円のポンド円ショートポジションが成立し、直近のレジスタンスラインである136.20円が上値目途として機能しているため、このままショート継続とします。ファンダメンタルズでは、ポンドの売り材料がやや解消されつつありますが、テクニカル的に上値が抑えらえていることを背景に、戦略継続です。利食いは135.00円、損切りは136.20円に設定します。
海外時間からの流れ
5月10日に対中制裁関税第3弾が発動されたことで、中国6月の対米貿易黒字が拡大基調にあるかどうかが注目されています。状況によっては、トランプ大統領による貿易赤字への牽制発言、加えて、為替操作への言及が懸念されることで、ドル円の上値を抑える要因となるかもしれません。
今日の予定
本日は、ユーロ圏・5月鉱工業生産、米・6月生産者物価指数などの経済指標が予定されています。要人発言では、ビスコ・伊中銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。