鉄鉱石メジャーによる国際カルテルの定着は不動
石油採掘を行う事業会社を、世界的に「メジャー」と呼びますが、鉄鉱石を扱う鉱山開発は「資源メジャー」または「鉄鉱石メジャー」と称されます。鉄の原料になる鉄鉱石は、主にブラジル、豪州が良質であり、中国、インド、ロシア、ウクライナ、カナダなどが主要な産地に数えられます。
鉄鉱石の需要が最も高いのが中国です。実は世界最大の産出量(2011年 4億1200万トン)を誇りますが、中小の採掘企業ばかりなことと、鉄鉱石そのものの品質が悪く、採掘停止するところが増えています。結果、鉄鉱石メジャー3社によって、世界市場価格が固定する状況は続いています。
3大鉄鉱石メジャーの強気の理由は
リオ・ティント・グループ(英、豪)、BHPビリトン(豪、英)そしてブラジルのヴァーレによる3社は、世界市場の80%の海上供給を行っており、3大鉄鉱石メジャーの地位を固めています。特に世界最大のサプライヤーであるヴァーレは、採掘から港湾までの鉄道輸送、大型鉱石船による運搬、供給国での積み降ろしなど、様々な技術を必要とします。鉄鉱石の世界消費量は2012年では20億トンであり、海上輸送は11億トンに上ります。
ヴァーレは日本の三井物産とも事業協定を結んでおり、世界の優良な鉄鋼メーカーとの取引に有利な状況があります。鉄鋼生産国は中国、日本、アメリカ、インド、ロシアの順であり、鉄鋼1トンの生産に1.6トンの鉄鉱石を必要とします。ですが、ブラジルと豪州の鉄鉱石以外は、鉄分の含有量が低く、コストがかかるため、メーカーはメジャーに資源を頼ることになります。結果として独占発掘権を持つヴァーレ、BHPビリトンなどが価格上昇を行うことができるのです。
中国国内の鉱山閉鎖という市場の矛盾
では、中国の鉱山について、もう少し詳しく見てみましょう。2013年の中国の鉄鋼生産量は7億8千万トン。2位の日本が1億1千万トンですから、約7倍の生産となります。全世界で15億トンもの鉄鋼が生産されていますが、中国だけでその半分を占めている事になります。ちなみに、中国で採掘される鉄鉱石は4億トン(2011年)ですから、その時点で資源輸入に頼らざるを得ないことになります。
そればかりではなく、①中国の鉄鉱石鉱山は採掘技術が低く人災が多い、②石炭や金といった精製技術の不要な鉱山に外資(日本も含む)の出資が集中している、などの要因によって、ヴァーレなどの寡占状態が揺るがないものとなっています。
また、ブラジルや豪州が露天掘りなのに対し、中国にはその技術が鉄鉱石採掘にはありません。結果として、国内にありながらコスト高、あるいは採掘量の保証もない鉱山ばかりとなり、中国では鉄鉱石の産出国でありながら、海外メジャーの価格引き下げのたびに閉山する鉱山が増加してしまう矛盾に悩まされています。年間300万トン以下の小規模鉄鉱石生産会社が、市場の50%を占めるため、中国政府は業界の再編成を促しています。