超高齢化社会に突入し、介護の重い負担が深刻な社会問題になっている日本。健康寿命を平均寿命に近づけることが喫緊の課題のひとつだと言えます。そんな日本のお手本となるのがデジタルヘルスケア先進国のイスラエルです。イノベーションの国イスラエルではどのような取り組みが行われているのでしょうか。
イノベーションの意気あふれるスタートアップ大国
欧州、アジア、アフリカの3大陸に囲まれたイスラエルは人口約850万人の小さな国です。現在は積年の課題であるパレスチナ問題に揺れ、存在感を強める隣国シリアに脅かされています。それと同時に若年層が人口の約半数を占め、成長力のポテンシャルを秘めているとも言えます。
世界経済フォーラム(WEF)の国際競争ランキングによると、2016年~2017年イスラエルのイノベーションランキングは2位(日本は8位)であり、2014年~2015年の3位からランクアップするほど。イスラエルがイノベーションの国であることがうかがえます。
また、小国ながら多数のノーベル賞受賞者を輩出し、アップル、グーグル、マイクロソフトなどグローバル企業が研究拠点を置いていることでも有名です。有名なところでいえば、ZIP圧縮技術やUSBフラッシュメモリ、カプセル内視鏡もイスラエル発の技術です。
またイスラエルは中東のシリコンバレーといわれるほどの世界トップクラスのスタートアップ大国であり、約90社のイスラエル企業がNASDAQに上場しています。「失敗しても終わりではない」という文化を背景に、起業への活発な挑戦が行われています。
イスラエルのスタートアップの中でも成長著しいのがデジタルヘルスケアの分野です。2016年にはこの分野のスタートアップ企業が300社にものぼり、イスラエル保健省は国家の成長エンジンとしてデジタルヘルス戦略を策定しました。
そして、2018年3月には省庁横断型のデジタルヘルスケア・プロジェクトを開始しました。約3兆5,000億円の投資が行われているというここのプロジェクトは、国民のヘルスデータを収集して予防医療に活用するという取り組みです。これは、人生100年時代を見据えて、高齢化に伴う疾患のリスクを抑えて健康寿命を延ばすという、日本の目指すところと一致するものでもあります。
デジタルヘルスケア先進的な取り組みとは
ここでヘルスケア分野において、イノベーションを活発に生み出すイスラエルのスタートアップをご紹介しましょう。
● Medial EarlySign
Medial EarlySign はAI技術により、通常の血液検査結果から大腸がんのリスクを判別するソフトウェアを開発しています。共同創業者のKalkstein氏はアルゴリズムベースのトレードをする会社も経営しており、その会社でファイナンシャルデータを解析していたAIと同じモデルを活用して血液のデータを解析しています。
同社はイスラエル、イギリス、アメリカ、アジア太平洋地域から集めた2,000万人もの患者の医療記録を解析し、がんのリスクのあるパターンを識別しています。さらにこのデータをもとに高血圧や糖尿病など他の疾病などでもモデルを開発しており、医療機関に対して月額もしくは年額年額いくらでの販売を始めています。同社はアメリカ進出を目指しており、すでにボストンにオフィスを構えています。
● Tytocare
Tytocareは遠隔医療に特化したサービスを展開しています。同社が開発したのは耳、喉、心臓、肺、腹部、皮膚を検査し、専用の聴診器で心拍数と体温を測定できるポータブルデバイスです。これは、学校、介護施設、在宅医療施設などで使用し、医療機関のクラウドにデータを送信すれば医師の遠隔診断を受けられるポータブルデバイスです。
このポータブルデバイスについて一部の医師からは従来の対面での健康診断よりも高精度だと評価を受けています。なお、テルアビブ大学の子ども医療センターで2歳から18歳までの137人の患者で診断をしたところ、精度の高さと使い勝手により、遠隔診療技術で正確な診断が得られると評価されました。
同社はアメリカの大企業と提しており、アメリカでの営業活動展開のための資金調達も行っています。
上記の2社は英語圏のアメリカに進出し、シェア拡大を目指すべく戦略を練っていると考えられます。これは、イスラエルでは子どものころから英語の教育が盛んで、多くの人が英語を流ちょうに話すことができるため、英語圏への進出にも抵抗がありません。そのため、彼らの目指す先は必然的に市場の大きい英語圏、アメリカになるのです。
スタートアップへ世界から熱視線
イスラエルのスタートアップが持つ市場開拓のポテンシャルは世界中から注目を浴びています。Medial EarlySign社はイスラエルのベンチャーキャピタルaMoonの他に香港のLi Ka Shingから約5,000万ドルの資金を調達し、Tytocare社は中国のPing An Groupから2,500万ドルを調達しています。
日本でもイスラエル企業との協業を模索するマッチングセミナーが盛んに実施されており、デンタルヘルスケアについて期待の高さがうかがえます。今後、イスラエルは卓越した技術を武器に世界での存在感を強めてくるに違いありません(提供:J.Score Style)
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