1.「億ション」のはじまり
昨今のタワーマンションブームにより「億ション」という言葉をしばしば耳にされることと思います。好立地に分譲された1億円以上のマンション「億ション」は憧れの的となっており高い人気を誇ります。日本に億ションができたのは、1965年に表参道に建設された「コープ・オリンピア」が先駆けで、当時は多くの著名人が購入したことで知られていました。
1980年代になるとバブル経済の影響によって都心にタワーマンションが少しずつ増え、1997年の建築基準法改正と都市計画法改正により、タワーマンションの建築方法が緩和されたことがきっかけで更にマンションが建てやすくなったことで供給が増大し、2000年代になってからはタワーマンションブーム到来で供給も急激に増大していきました。
2.億ションブームにも変化が...
アベノミクスが始まり東京オリンピック開催が決定した2013年以降を境に、タワーマンションブームはますます広がりを見せ、億ションも売りに出せばすぐに完売するという現象が起きていました。その理由は、日銀のマイナス金利政策により住宅ローンが低金利化したこと、オリンピック開催により日本の注目度が上がり、海外の投資家が投資目的で購入したことなどが挙げられます。
昨今ではタワーマンションブームにも陰りが見えてきたようなことをよく耳にするようになってきましたが、具体的にはどのような傾向を示しているでしょうか?
不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」によると、2018年度のマンション供給は東京都区部で前年度比:5.7%ダウン、初月契約率の平均は62%と前年同期比で6.8%ダウンとなっています。それでも東京都区部の供給数は他のエリアと比較して微減であり、依然として高い人気を誇っていますが、一時の勢いからは調整局面に入ってきたと言えます。
3.にわかに広がりつつある「億邸」とは
セレブなイメージで憧れの「億ション」は今も高い人気を誇りますが、最近では「億邸」がひそかに今どきの富裕層を中心に広がりを見せているのをご存知でしょうか?
「億邸」とは、名前の通り1億円を超える住宅のことで、人気上昇の理由はさまざまですが、自分のライフスタイルや好みに合わせてこだわりを実現できることや、非日常を味わうことができる空間を実現できるなど、仕事と時間に追われる生活にあるがゆえに自分らしい時間の過ごし方を大切にしたいと思う人が増えてきていることが主な理由に挙げられます。
自分の時間を自分らしく過ごしたいというのが今どき富裕層の特徴とも言えるかもしれません。
4.「億ション」「億邸」どちらを選ぶ?
これから購入するなら、「億ション」「億邸」どちらが良いでしょうか?ライフスタイルや価値観で意見は分かれると思いますが、それぞれの特徴をまとめてみました。これから購入を検討される方の検討材料になればと思います。
5.価値観の多様化で住宅もモノ消費からコト消費へ
投資目的や資産として億ションは未だ高い人気を誇りますが、居住用として購入した方は中古マンション価格が高値で推移している今の間に売却しようとする動きも見られます。また、億ションを売却された方が次に居住用住宅として購入するターゲットとして億邸を選ぶ方が増えています。
ライフスタイルの変化、ライフステージごとに求める住環境の変化など、さまざまなきっかけはありますが、家族全員が安らぎや幸せを感じつつ、マンションでは実現できなかったこだわりを取り入れ、非日常的で贅沢な時間が過ごせるのが、今どき富裕層から支持されている「億邸」なのかもしれません。
モノが溢れた現代で価値観が多様化しているからこそ、居住用住宅も家族やオーナーの価値観に合わせて多様化を求めるようになってきたのかもしれません。タワーマンションを購入するという一種のステータスと言えるモノ消費から、暮らしに満足を求めるコト消費へ。その流れは住宅にも徐々に浸透してきていると言えます。(提供:sumuzu)