結果の概要:6月の個人所得、消費支出ともに市場予想通りの結果

米個人所得・消費支出
(画像=PIXTA)

7月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は6月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月改定値:+0.4%)となり、+0.5%から下方修正された前月値、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%に一致した(図表1)。個人消費支出は、前月比+0.3%(前月改定値:+0.5%)とこちらは、+0.4%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想の+0.3%に一致した。一方、価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.2%(前月改定値:+0.3%)と+0.2%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想(+0.2%)に一致した(図表5)。貯蓄率(1)は8.1%(前月改定値:8.0%)と、年次改定に伴い過去の所得水準が大幅上方修正された結果、前月の貯蓄率は改定前の6.1%から大幅に上方修正された。

価格指数は、総合指数が前月比+0.1%(前月改定値:+0.1%)と+0.2%から下方修正された前月、市場予想(+0.1%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.2%(前月改定値:+0.3%)と、こちらは+0.2%から上方修正された前月を下回ったものの、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.4%(前月改定値:+1.4%)と+1.5%から下方修正された前月に一致した一方、市場予想(+1.5%)は下回った。コア指数は+1.6%(前月改定値:+1.5%)と、+1.6%から下方修正された前月は上回ったものの、市場予想(+1.7%)は下回った(図表7)。

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(1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

結果の評価:消費の伸びは3ヵ月連続で鈍化も、貯蓄率の水準は過去改定で大幅上方修正

名目個人消費(前月比)(図表1)は6月が+0.3%の伸びに留まり、3月の+1.0%から3ヵ月連続で伸びが鈍化した。一方、6月の個人所得は+0.4%と消費の伸びを上回った結果、貯蓄率は前月から+0.1%ポイント上昇した。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

なお、過去数値の年次改定に伴い、18年の利息収入が+862億ドル、配当収入が+757億ドル、賃金が+672億ドル上方修正されたことなどから、18年の個人所得は改定前の水準を+1.4%上回る2,496億ドルに上方修正された。この結果、18年の貯蓄率は改定前の6.7%から7.7%に大幅な上方修正となった。前述のように5月の貯蓄率も改定前の6.1%から8.0%に上方修正されており、改定前に想定されていたよりも、個人消費は所得対比で余力を残していると言えよう。」

また、同日発表された7月のコンファレンスボードの消費者信頼感指数は135.7と株価下落を受けて急落する直前の18年11月(136.4)に迫る水準まで改善を示した。このため、好調を維持している労働市場と併せて消費を取り巻く環境は良好で、当面は堅調な消費が持続する可能性が高いとみられる。

物価は(前年同月比)は、総合指数が18年11月以来、FRBが物価目標としている2%の水準を下回っているほか、物価の基調を示すコア指数も、前月から+0.1%ポイントの上昇はみられたものの、19年1月以来、2%の水準を下回る状況が持続しており、物価上昇圧力は抑制されている。」

所得動向:可処分所得は名目、実質ともに前月から伸びが加速

6月の個人所得(前月比)の内訳をみると、賃金・給与が+0.5%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速する一方、利息配当収入が+0.3%(前月:+0.8%)、自営業者所得が+0.4%(前月:+0.7%)で前月から伸びが鈍化するなどまちまちの結果となった(図表2)。

一方、個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、6月が+0.4%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベースも+0.3%(前月:+0.2%)と前月から伸びが加速した。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

消費動向:自動車関連が減少

6月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.3%(前月:+0.6%)、サービス消費も+0.3%(前月:+0.4%)といずれも前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費では、非耐久財が+0.2%(前月:+0.1%)と前月から小幅ながら伸びが加速したものの、耐久財が+0.4%(前月:+1.5%)と鈍化し、財消費の足を引っ張った。

耐久財では、家具・家電が+0.7%(前月:+0.6%)と前月から伸びが加速した一方、娯楽財・スポーツカーが+1.1%(前月:+1.5%)と伸びが鈍化したほか、自動車・自動車部品が▲0.4%(前月:+1.5%)と前月からマイナスに転じた。

非耐久財ではガソリン・エネルギーが▲2.8%(前月▲2.6%)とマイナス幅が拡大したものの、食料・飲料が+0.7%(前月:+0.4%)、衣料・靴が+0.6%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した。

サービス消費は、外食・宿泊が+0.7%(前月:+0.9%)と前月から伸びが鈍化したほか、住宅・公共料金が▲0.1%(前月:+0.5%)と前月からマイナスに転じた。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

価格指数:前月比、前年同月比ともにエネルギー価格が物価を押下げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲2.3%(前月:▲0.6%)と2ヵ月連続で物価を押下げた(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.1%(前月:+0.3%)とこちらも前月からマイナスに転じ物価を押下げた。

前年同月比では、エネルギー価格指数が▲3.4%(前月:▲0.4%)と2ヵ月連続のマイナスとなった(図表7)。一方、食料品価格指数は+1.1%(前月:+1.3%)とこちらは17年7月以来24ヵ月連続のプラスとなった。

米個人所得・消費支出
(画像=ニッセイ基礎研究所)

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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