ミレニアル世代の経営者が語る未来の働き方
1980年以降に生まれた「ミレニアル世代」。ポスト平成のビジネスシーンは、次世代へと引き継がれ、彼らが消費や労働の主役となる。ビジネスシーンを生き残るにはミレニアル世代への理解が欠かせない。ビジネスSNS「Wantedly」を展開し、自身がミレニアル世代である経営者の仲暁子氏は、そう指摘する。ミレニアル世代の台頭によって、企業の経営や個人の仕事はどう変わっていくのか。日本人の新たな仕事の価値観を紐解いていく。(取材構成 野牧 峻 写真撮影:永井浩)
ミレニアル世代は「トライブ」を探している
平成が始まってから約30年、テクノロジーや経済は大きく変化した。それに伴い、私達の働く環境はどう変わってきたのか。
「戦後、日本は焼け野原から製造業で復興し、世界のトップへと上りつめました。しかし、製造業がコモディティ化した結果、日本は国際的な優位性を失い、製造業の次に来る産業を構築できずにいます。正確に言えば、AIやロボット、IoTなどを含んだ広義のインターネット系の産業が立ち遅れていることで、経済成長が鈍化しているのです」
閉塞感を打破するには、インターネットと共に生まれ育った「ミレニアル世代」への理解が欠かせない。
「令和には世代交代し、『ミレニアル世代』が、ビジネスの中心に代わります。この世代の価値観を理解し、事業や組織を作る必要があります」
ミレニアル世代の行動原理を理解するポイントに、「トライブ」という考え方がある。
「トライブとは、共通のポリシーやライフスタイル、または消費行動を持つ共同体のことです。ミレニアル世代は、帰属するトライブを探しています。
では、どういった基準でトライブを探すのか。キーワードになるのが『ストーリー』です。
彼らは製品のスペックではなく、ストーリーによって購買を決定します。ストーリーとは、『なりたい自分像』や『理想の世界の状態』しいては「どういった成り立ちで、今そのプロダクトや組織があるのか」という物語のことです。卑近な例で言えば、Apple製品を支持するユーザーは、別に音楽プレーヤーがほしいだけではなく、それを持っているイノベーティブでスマートな自分像を買っているのでしょう。
働く意義についても同様です。アウトドアウェアメーカーのパタゴニアでは、『品質の高いフリースを作りたい』ではなく、『自然への敬意・情熱・愛を持って生きる人たちと一緒に世界を良くする』を実現すべく働いているのです。こうしたストーリーをユーザーや社員に対して提供できる企業が支持されます」
ストーリーを魅力的に語るには、「why=なんのためにやるのか」という軸が欠かせない。
「企業のフィロソフィーやビジョンとも言い換えられます。ミッションやバリューが言語化できれば、ストーリーがはっきりするので、トライブの結束感はより強固になります。働く人にとっては、働く意義が明確になりますし、消費者にとってはその商品が魅力的な理由が明確になります。この『why』を重視していることこそが、ミレニアル世代の最大の特徴かもしれません」