誰でも何らかのきっかけで不動産を所有する可能性があります。特に親が所有していた賃貸物件を相続すれば、大家としてデビューしなければなりません。同時に、親から子へ名義人が変わることで、子はさまざまな手続きが必要になります。ここでは、そのときやるべきことをステップ別に解説します。

相続で賃貸物件を引き継ぐこともある

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(画像=Africa Studio/Shutterstock.com)

相続で引き継ぐものが預貯金だけであれば簡単ですが、土地や、親が経営していた賃貸物件を引き継ぐケースもあります。不動産経営に興味がなければすぐに売却したいところですが、土地と建物では事情が異なります。土地は更地であれば何の問題もありませんが、賃貸物件の場合は借り主がいるため、容易に売却することはできません。

売却する場合は、敷金や前払い賃料の返還、借り主の同意取り付け(「賃貸人の地位承継および通知書」を売り主・買い主・借り主で取り交わすことが必要)などの問題が生じます。では、売却せずに賃貸物件を引き継ぐ場合の手順について見てみましょう。

まずは登記など公的手続きが急務

最初にすべきことは、法務局への不動産登記手続きです。故人名義になっている不動産所有者名義を、相続人へ変更することで公的な物件のオーナーとなります。手続きの際に提出する相続登記申請書は、法務局ホームページからダウンロードできます。申請書に添付して提出する基本的な書類は以下の通りです。

・被相続人(故人)の戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍(出生から死亡まで連続しているもの)
・被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
・相続人の住民票
・相続人の戸籍謄本(被相続人と相続人が繋がっており、関係が分かるもの)
・相続人の印鑑証明書
・固定資産税評価証明書
・相続関係説明図

その他の書類は、相続人の数や遺言書の有無などによって提出するものが異なりますので、相続物件を仲介している不動産会社に相談すればアドバイスしてくれるはずです。なお、手続きにかける時間がない場合は、司法書士に代行してもらうこともできますので、ご自分の事情に合わせて利用するのもよいでしょう。

居住者にどのように説明するのか(大家自身で管理している場合)

次に大家が変わることを居住者に通知しなければなりません。管理会社に管理を委託し、家賃の支払いは口座振替による自動引き落としを採用している場合が多数ですが、物件の規模によっては、自主管理をしているケースなど、大家が出向いて集金しているところもあるでしょう。そのような場合、事前の通知無しに別の人が集金に来たのでは不審に思われてしまいます。居住者に大家が変更になったことを知ってもらうためにも、公的手続きが済んだら直ちに通知することが大事です。この通知に記載する必要がある項目は以下の通りです。

・相続で大家が変更になったことの説明
・家賃の新しい振込先の口座番号(直接大家名義の口座に振替で集金の場合)
・契約内容に変更のないこと
・大家の連絡先電話番号

この内容に「登記簿の自分の名前が記載されている部分」のコピーを添付します。なお、郵送方法としては、「書留配達証明郵便」で送るようにしましょう。普通郵便は、郵便事故があった際に証明できないためNGです。

管理を委託しているケースでは管理会社に連絡

故人が管理会社と契約していた場合、大家が変更になったことを管理会社へ直ちに連絡しましょう。その際、管理会社への対応は次の2つに分かれます。

・そのまま同じ管理会社を利用する場合
管理委託契約は委託者の死亡によっていったん終了しますが、相続人が引き続き同じ管理会社を利用する場合は、特に問題なく継続できます。

・別の管理会社に変更する場合
一方、管理会社を変更したい場合は、委託契約書の条文と契約期間を確認する必要があります。条文の中に委託者が死亡した場合は相続人が管理委託契約を引き継ぐということが明記されていれば、契約期間内に変更することはできません。どうしても変更したいのであれば、違約金を支払うことになるケースもあります。特別な事情がない限り、管理会社は変更しない方がよいでしょう。

親が残した賃貸物件を引き継いで故人の意志を大事にするのも立派な志です。居住者に大家さんと呼んでもらうためにも、上記のステップでしっかり手続きと説明を果たし、良好な関係を築けるようにしましょう。(提供:相続MEMO


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