親族が亡くなった場合、葬儀・納骨を済ませ、相続税の申告や納税が終わるとようやく落ち着く場合も多いと思います。ただし申告が終わった後に申告内容等について調査が行われているのをご存知でしょうか。
正しく申告をしていれば問題ありませんが、故意・過失に関わらず申告漏れ等があった場合には調査の対象となる可能性があります。そこで今回は、相続税の調査の状況や内容についてお伝えしていきます。

申告額が「過少」と判断された場合に調査が

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(画像=eamesBot/Shutterstock.com)

相続税については、申告年度から2年後に調査が実施されます。すべての申告に対して実施されるわけではなく、「申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案等」について実施されます。これが「相続税の実地調査」になります。

2017年度は、2015年度に発生した相続を中心に国税局・税務署で収集した資料情報等から、調査が必要と思われる12,576件について調査が行われました。どのような形で資料や情報を収集しているのかは不明ですが、後にお伝えする申告漏れの件数や割合等から見ると、精度の高い情報等を得て調査を行っていることがうかがえます。いわゆる「逃げ得」は許さないということでしょう。

いわゆる「申告漏れ」はどれくらい見つかっているのか

では、調査が行われた件数のうち、どの程度の割合で申告漏れ等があったのでしょうか。申告漏れ等の「非違」があった件数は10,521件で、全体の83.7%とかなり高い割合となっています、申告漏れの課税価額は3,523億円、調査1件当たり2,801万円の申告漏れが見つかっています。

また、どのような財産が申告漏れしていたかですが、圧倒的に現金の額・割合が多く1,183億円(34.1%)、次いで有価証券の527億円(15.2%)、土地については意外と少なく410億円(11.8%)となっています。

さらに相続税だけではなく、贈与税についても調査が行われています。2017年度に行われた3,809件の調査のうち「非違件数」は3,565件、割合は93%と相続税よりも高い割合で申告漏れ等が見つかっています。また贈与税における申告漏れ等の非違件数については「申告漏れ」17.3%に対して、「無申告」が82.7%を占め、申告をしないで贈与税の負担を回避しようとする案件について、積極的に調査が行われていることがうかがえます。

追徴税、重加算税のリスクも

当然ながら調査後に申告漏れや無申告が判明した場合には、新たに税負担が発生することになります。申告漏れの場合には、新たに納めることになった税金に加えて最大10%の「過少申告加算税」がかかります。ただし、新たに納めることになった税金が50万円を超える場合には、その超える部分の過少申告加算税は最大15%となります。無申告の場合には、納める税金に加えての最大15%の「無申告加算税」がかかります。ただし、税額が50万円を超える場合には、その超える部分の無申告加算税は最大20%となります。

仮装・隠蔽等が行われ、悪質な不正事実が発覚した場合の「重加算税」はさらに税負担が大きくなり、過少申告加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%の税率が課されることになります。また、加算税が課された場合には、本来納めるべき税金に対して最大年14.6%の「延滞税」がかかり、税負担がさらに大きくなります。

このように実地調査が入った場合には、誤って過少申告をしてしまった場合でも新たな税負担が発生してしまうのはもちろん、故意に税負担を逃れた等悪質と判断された場合にはさらに重い税率が加算されてしまいます。

一時的に手元に多く財産が残ったとしても、誤った申告をしてしまうと本来負担すべき金額よりも多くの税金を支払うことになりますので、相続税はもちろん贈与税についても税理士等の専門家に依頼をしたうえで、正しく申告をすることが重要となります。(提供:相続MEMO


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