「お遍路」という言葉を聞いたことがあるだろうか。四国の各地を白装束で歩く人たちを想像する方もいるかもしれない。お遍路とは、空海(弘法大師)のゆかりの地である四国の八十八ヵ所の札所を礼拝することだ。お遍路をする人たちのことを親しみを込めて「お遍路さん」と呼んでいる。
札所を回る順序や回る方法は厳格に定められていないが、徳島の一番札所から番号順に巡る「順打ち」が一般的な巡礼方法だ。この「お遍路さん」による経済効果はどれほどのものなのだろうか。
宮本勝浩名誉教授による試算
関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によると、お遍路さんによる経済効果は2016年の1年間、全国で約1,650億円、四国地域で約1,320億円であると新聞で発表された。なお、2016年は、札所を逆から回ると御利益が増すとされる“うるう年”であるため、巡礼者が例年より3割増えると推定して試算された。
●巡礼用品
お遍路する際には、金剛杖(こんごうづえ)や菅笠(すげがさ)、白衣(びゃくえ)など、伝統的な装いを身に着けている人が多い。これらを身に着けると見た目で「お遍路さん」ということがわかるだろう。費用は1人5万円として考え、総額は約97億円と算出している。
●交通費、宿泊費、飲食代
移動手段は、「歩き遍路」「車遍路」「バスツアー遍路」とさまざまあり、自分の希望に合わせて選択できる。行く先々で発生する宿泊費や食事代なども合わせて約618億円と算出されている。
●納経費用
納経帳に御朱印などをもらう納経費用は約52億円と算出されている。
●周辺への波及効果も
お遍路さんの経済効果によって従業員の所得が増加し、それにより地元での消費の拡大なども見込まれる。直接的な効果だけではなく、間接的な効果も期待できるとして、この費用を約882億円と算出されている。
外国人のお遍路による経済効果
お遍路による経済効果は、外国人からももたらされていると推測できる。これは、2017年の四国での外国人延べ宿泊者数は、2016年に比べて23%増加、伸び率は全国の12%を上回っているためである。
NPO法人遍路とおもてなしネットワークでは、八十八ヵ所を回りきる「結願(けちがん)」を達成した人に遍路大使の称号を発行している。2007年7月~2008年6月には、外国人の比率が1.4%であったのに対し、2017年7月~2018年6月には16.6%と増加傾向だ。
遍路大使の称号を手にした外国人は、香川県では外国人のためのお遍路体験を行うなど、文化に対する理解を深めてもらう機会を提供しており、人気がある。
また、愛媛大学ではお遍路について研究する「四国遍路・巡礼研究センター」を開設。このセンターでは、学術的にお遍路を掘り下げ、さらに世界の巡礼との国際比較を行うなど、お遍路への理解を深める取り組みを行っている。
外国人だけではなく、地元の人も理解を深めることで、お遍路巡りに参加する人も増えており、これからもより大きな経済効果が生まれると考えられるだろう。
「経済効果」を考えるのは連想ゲーム
「お遍路さん」の経済効果について考えると、さまざまな消費とつながっていることがわかるだろう。このように、「経済効果」を考えることは連想ゲームと同じである。特別なことではなく、身近なことからも経済について考えることができるのだ。お遍路さんの場合を例に、経済効果を連想してみると下記のような流れになる。
・日本人だけでなく、外国人もお遍路さんに参加する人が増える ・巡礼用品である金剛杖、菅笠、白衣が売れる ・お遍路巡りでの交通費が発生する ・行く先々でホテル代や食費を支払う ・そこで働く従業員の収入が増え、その人たちの消費が拡大する
このように連想してみると、その事柄がどのように経済と関係しているのかが見えてくるだろう。「経済」というと少々堅苦しく感じるかもしれない。しかし、あまり難しく考えずに「自分の生活環境へどのような影響を与えるのか」について連想してみると経済を身近に感じることができるのではないだろうか。
連想を広げることで、経済や金融について興味を持ったり、理解ができるようになったりすることが期待できる。
テレビや本から気になるニュースなどがあれば、そこから経済効果について連想してみてはいかがだろうか。(提供:iyomemo)
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