「自分が持っている不動産を売りたい」と思ったとき、一般的には不動産業者に「仲介」を依頼することになるが、ほかに「買取」という方法もある。しかし、仲介と買取の違いがよくわからない人も多いのではないだろうか。そこで、仲介と買取の違いをわかりやすく解説しよう。この違いがわかれば、自分に合った不動産の売却方法が見つかるはずだ。

不動産売買仲介とは?

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(画像=PIXTA)

不動産売買における仲介(ちゅうかい)とは、売り主と買い主の間に不動産業者が入ってマッチングすることだ。具体的には、物件価格の査定や購入希望者への物件情報の紹介、現地への案内、売買契約手続きの手伝いなどを行う。仲介は、「媒介(ばいかい)」と呼ばれることもある。

不動産の売却を業者に任せる方法には、買取(かいとり)もある。これは、物件を不動産業者に買い取ってもらうことで、仲介とは異なるメリットとデメリットがある。

いずれにせよ、一個人が自分の不動産に適正な値段をつけ、売却先を見つけて、売却手続きを進めるのは手間がかかるし、リスクも大きい。詳しい知識がない限り、信頼できる不動産業者を見つけて依頼したほうがいいだろう。

仲介と買取の3つの違い

仲介と買取には、大きく3つの違いがある。それぞれ説明していこう。

「誰が購入するのか」が違う

仲介で取引の相手方となるのは、不動産業者に紹介された購入希望者で、多くの場合は個人だ。一方買取では、不動産業者が相手方となる。売り主は、不動産業者に不動産を売却して家や土地などを手放す。その後、不動産業者が自分たちで購入者を探すことになる。

「不動産を売却するまでの期間」が違う

仲介の場合は、購入してくれる相手が見つかるまで待たなくてはならない。物件の状態や価格にもよるが数ヵ月かかることもあり、最悪の場合「いつまで経っても売れない」可能性もある。つまり、売却が完了するまでの期間は、相手次第なのだ。

一方買取は、すでに購入者が不動産業者と決まっているので、話が早い。手続きに必要な期間はあるものの、早ければ数日で売却代金を入金してくれる業者もある。

「売却できる金額」が違う

売却金額だけを見れば、多くの場合仲介に軍配が上がる。買取の場合、不動産業者は購入者が見つかるまでの、物件が損傷するリスクや買い手が見つからないリスク、物件の維持管理コストなどを考慮しなければならない。そのうえで、利益も出さなくてはならないので、どうしても買取額は低く見積もらざるを得ないからだ。

仲介のメリット・デメリット

仲介には、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのだろうか。

メリット

最大のメリットは、買取の場合よりも高く売れることが多いことだ。また、売り手と買い手が直接会って、話をしたうえで売却するかどうかを決めることもできるので、長年住んだマイホームなど思い入れのある物件を「大切に使ってくれる人に譲りたい」という希望をかなえることができる。

デメリット

売却を急いでいない場合は問題ないかも知れないが、買い手を探す期間が必要なため、買取よりも売却までの期間が長くなりやすい。

また、業者に依頼することによって、買い手を募集するチラシが出回り、オープンハウスとして内覧希望者に自宅を開放しなければならないこともある。売却を近所に知られたり、自宅に見知らぬ人がやってきたりすることもデメリットと言えるだろう。

買取のメリット・デメリット

買取には、どんなメリット・デメリットがあるだろうか。

メリット

買取の最大のメリットは、早くて楽に売却できることだ。納税資金の確保や急病、離婚など何かの事情があって早く土地や建物を現金化したい、または大きなお金が必要な時期が決まっているので、それまでに売ってしまいたい場合などに役立つだろう。

また、買い手が不動産業者の場合は、「売却物件の構造や設備などで何か不備があった場合は、売り主側が費用負担して修繕します」という瑕疵担保責任が適用されない。つまり、売却後に不具合が見つかっても、不動産業者側が対応することになるのだ。

リフォームや解体など大掛かりな工事が必要な場合も、売主はそれらの費用を負担する必要はない。

デメリット

煩わしさがなくメリットが多いように見えるが、その分売却価格が安くなってしまうのが買取の最大のデメリットだ。場合によるが、仲介の場合の7割程度の価格になるケースが多い。仲介で3,000万円の値がつく物件でも、買取では2,000万円程度になってしまうということなので、かなりのデメリットであることがわかるだろう。

また、購入した不動産をどのように売却するかは不動産業者次第なので、大幅に改築しようが、解体して更地にしようが、それについて口を挟むことはできない。

仲介と買取、どちらを選ぶ?

特に急いでいない場合や、買い手がすぐに見つかりそうな条件の良い不動産(立地がいい、築年数が浅いなど)は仲介、何か事情があって早く現金化したい場合や、条件の悪い不動産(老朽化している、中で人が亡くなったような事故物件など)は買取がおすすめだ。

それぞれにメリット・デメリットがあるので、自分に合うほうを選ぼう。不動産業者によっては、最初は仲介でも、売れなかった場合は買取に変更できるところもある。

媒介契約は3種類

仲介に決めたら、不動産を業者を選んで媒介契約を結ぶことになる。媒介契約には、「専属選任」「専任」「一般」の3パターンがある。それぞれの特徴を確認して、最も自分に合う契約形態を選ぼう。

専属専任媒介

1社だけに売却を依頼する(媒介契約を結ぶ)タイプ。会社と契約している間は他社に依頼することができないので、仮に自分で購入者を見つけてきても、その業者を通して契約することになる。

依頼を受けた業者は、5日以内に不動産情報を流通機構のオンラインで確認できるようにしなければならず、1週間に1回は販売状況の報告をしなければならない。不動産業者にとっては、買い手を見つければ確実に仲介手数料をもらえる案件なので、優先的に対応してもらいやすい。

専任媒介

1社だけに売却を依頼するという点は専属専任媒介と同じだが、こちらは自分で購入者を見つけた場合は、不動産業者を通さずに契約できる。

専属専任における不動産情報のオンライン掲載は「5日以内」だが専任では「7日以内」、また「1週間に1回」の報告は「2週間に1回」でよい。専任は、専属専任と次に説明する「一般」の中間に位置する契約形態だ。

一般媒介

複数の会社に売却依頼をすることができる契約形態だ。もちろん、自分で見つけた購入者と契約することもできる。複数の業者が競って買い手を探してくれることがメリットだが、複数の業者と継続的にやり取りすることを面倒と感じる人もいるだろう。

また、契約期間が3ヵ月である専属専任や専任と違って無期限であること、オンライン掲載や状況報告が義務ではないこと、不動産業者が必ず手数料がもらえるわけではないことから、不動産業者にとっては、どうしても優先度は低くなってしまう。そのため、なかなか買い手が見つからないこともある。

専属専任、専任、一般、どれを選ぶ?

仲介・買取と同様に、3つの契約形態にもそれぞれメリット・デメリットがある。自分で買い手を探す予定はあるか、どれくらい手間をかけられるか、急いでいるかなど、自身の方針や状況に合わせて選びたい。

専属専任と専任には3ヵ月という契約期間の縛りがあるが、契約期間終了のタイミングに合わせて一般媒介契約に変更したり、他社と専属専任契約を結んだりすることもできる。

仲介にかかる費用……仲介手数料の仕組み

仲介手数料とは、売り手と買い手の間に入る不動産業者に支払うお金のことだ。売却を依頼した時点ではなく、買い手が見つかって無事に売買契約を結んだ時点で支払い義務が発生する成功報酬型である。仲介手数料なので、買取をしてもらうことになった場合には発生しない。

計算方法

仲介手数料には、法律で定められた上限金額がある。物件価格が200万円以下なら「5%+消費税」、200万円超~400万円以下なら「4%+2万円+消費税」、400万円超なら「3%+6万円+消費税」だ。多くの場合、仲介手数料は上限額に設定されている。

たとえば、建物4,000万円、土地1,000万円の物件の売買が成立した場合、仲介手数料の上限は
「(5,000万円×3%+6万円)×1.08=168万4,800円」だ。

なお、消費税増税(2019年10月)以降の契約では、
「(5,000万円×3%+6万円)×1.1=171万6,000円」となり、3万円ほど費用が増える。

仲介手数料は一括で支払うのではなく、売買契約締結の時点で50%、引き渡し完了時点で50%など分けて支払うように設定している業者もある。
支払い時期が10月1日より前か後かで税率が変わるので、注意が必要だ。

そのほかの注意点

まれに、この上限を超えた手数料を請求したり、仲介手数料以外に「広告費」などの費用を当たり前のように上乗せしたりする不動産業があるので気をつけてほしい。「法律で決められているので、どこの会社でも手数料は同じ額」などと説明されることがあるが、上記はすべてルールに反していることを覚えておこう。仲介を依頼した不動産業者がこのようなことをしてきたら、迷わず別の業者に変えたほうがいい。

ただし、売買契約を結んだ時点で仲介手数料が発生するので、もし契約後に何らかの事情で売却をキャンセルしても、手数料を支払う義務は消えない。物件が売れていないのに手数料を払うことになってしまうので、注意してほしい。

仲介手数料以外にかかる費用

不動産売却費用の中で最も大きいのは仲介手数料だが、ほかにも売買契約書に貼る印紙代(印紙税)や抵当権抹消登記費用などもかかる。

印紙代は物件売却価格にもよるが数千円~数万円、登記は自分で手続きするなら1,000円程度で済むこともあるが、知識が必要で時間もかかるので司法書士に依頼するのが一般的だ。依頼先にもよるが、こちらも数千円~数万円程度の負担になるだろう。

不動産がそのままでは売れにくい場合に、リフォームやハウスクリーニング、測量や解体などを行うとなると、数百万円単位の費用がかかることがある。現在住んでいる家を売る場合は、当然引っ越し費用も必要だ。

不動産売却時に役立つ制度を調べておこう

不動産を売るとなると、売却代金や仲介手数料などかなり大きなお金が動く。そして、そこには税金がかかることもある。譲渡で利益が出た場合も、損失が出た場合も、一定の条件を満たせば税金がかからない、もしくは安くなる制度があるので、売却が決まる前に調べておきたい

参考までに、よく利用される制度を紹介しよう。

マイホームを売却した場合

・3,000万円の特別控除
・10年以上の長期所有による軽減税率
・譲渡損失の損益通算及び繰越控除
・買換え特例

相続で受け取った空き家を売却した場合

・被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除

これらの制度を利用するには確定申告が必要で、その際添付資料として売買契約書の写しや仲介手数料の領収書など、売却手続き関係の書類の提出を求められることがある。そのときに困らないように、売却関係の書類はきちんと保管しておこう。

自分に合った売却方法を選ぼう

不動産を売るためには、物件価格の決め方や各種手続きなどの専門知識が必要となるので、知識のない個人が自力で行うのは難しい。今は複数の業者に一括査定を依頼できるサイトもあるので、何社かとコンタクトを取ってみて信頼できる不動産業者を見つけよう。

そのうえで、仲介と買取のどちらが自分に合っているのか、仲介なら契約形態は専任なのか専属選任なのか一般なのか、それぞれのメリット・デメリットを理解して自分に合った売却方法を選ぼう。それが、悔いなく不動産を売却するための第一歩だ。

文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所 代表)