相続が発生した場合、遺言書がなければ相続人同士で遺産分割の話し合いが行われ財産が相続されますが、その話し合いが終わらないうちに相続人の一人が亡くなった場合はどうなるのでしょうか。今回はこのようなケース、「数次相続」についてお伝えします。

数次相続とは

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(画像=Philip Steury Photography/Shutterstock.com)

税法上の「相次相続控除」は、相続の発生後10年以内に次の相続が発生した場合、要件に該当すれば後に起こった相続税の負担が少なくなるという制度です。

例えば父が亡くなった3年後に子が亡くなったケースで、父の相続(一次相続)の時に子が相続税の負担をし、3年後の子の相続(二次相続)の時に子の子(孫)が相続税の負担をすることになる場合などに活用できます。相続税の負担が発生しているということは、遺産分割の話が進み相続の手続きが完了していることになります。

では、父が亡くなって遺産分割の話をしている途中で、相続の手続きが終わらないうちに子が亡くなり次の相続が発生してしまった場合には、遺産分割の話は誰が進めていくことになるのでしょうか。
こちらは誰が相続人となるかという民法上の問題となります。短期間で複数の相続が発生した場合のほか、長い間、遺産分割の話し合いがまとまらずに放置されていたケースも考えられます。

例えば父Aの相続の相続人が妻Bと子C・D・Eの合計4人で、遺産分割協議の途中で子Cが亡くなってしまった場合、父Aの相続に伴う子Cの相続権は、子Cの法定相続人が引き継ぐことになります。子Cに妻Fと子G・Hがいる場合は、この3人が子Cに代わって、父Aの相続における相続人となります。このような相続を「数次相続」と言います。

「二次相続」との違いは?

「二次相続」との決定的な違いは、遺産分割協議・相続手続きが完了していない点です。このため、父Aの相続における相続人が本来の4人から、相次相続を経て6人に増えています。

今回の例では数次相続の対象は子Cの1人ですが、長い間、遺産分割協議をせずに相続手続きを完了しないままにしておくと、複数の人に数次相続が発生し、その分相続人の数が本来の相続人より増えてしまう可能性があります。

相続人が多くなるということは、それだけまとまる話もまとまらなくなる可能性が高くなるということです。思いがけず短い期間で複数の相続が発生した場合にはやむを得ませんが、できるだけ遺産分割協議は早目に完了させたほうがいい理由の一つが、この数次相続の問題なのです。

ちなみに父Aの相続においては、妻B・子D・子Eは「相続人」、数次相続によって地位を引き継いだ妻と子供2人は「相続人兼、子Cの相続人」となります。

「代襲相続」との違いは?

また、数次相続と似たものに「代襲相続」があります。上記の家族構成ではじめに子Cが亡くなった場合、相続人は妻Fと子G・H の3人です。その後父Aが亡くなった場合、相続人は妻Bと子供C・D・Eの4人になりますが、子Cがすでに亡くなっているために、その子であるG・Hが相続人になります。これが「代襲相続」です。

数次相続との違いは、配偶者が相続人にならない点です。数次相続の場合は亡くなった人の法定相続人が相続権を引き継ぎますが、代襲相続の場合は直系卑属が相続権を引き継ぎます。

亡くなる順番によって、数次相続となるか代襲相続となるかが決まると覚えておけばわかりやすいでしょう。代襲相続も数次相続と同じく、相続人の数が本来の相続人よりも増えることがありますが、配偶者が相続人とならない分、増える人数は少なくなります。

代襲相続は遺された相続人にはどうすることもできないことですが、数次相続については早急に分割協議・相続手続きを行うことで回避できる可能性が高くなります。相続が発生したらできるだけ速やかに手続きをする、そのためには生前に分割方法について決めておいたほうがスムーズに事を進めることができます。

また、数次相続と代襲相続が同時に起こると相続人の数も多くなり、相続人の関係が希薄になる可能性があります。数次相続や代襲相続はどの家庭でも起こる可能性がありますので、相続発生前の遺産分割対策や相続発生後の分割手続きなどは早めに行うようにしましょう。(提供:相続MEMO


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