要旨
- 日本のコンビニは「時間」と「距離」、「品揃え」という3つの利便性を柱に発展し、「多様化したサービスの提供」や「丁寧な接客」という面でも進化し続けている。高齢化で買い物困難者が多い地域では、商品の配達サービスや移動販売などが進んでおり、海外と比べて、清潔なトイレの無料開放や店員の接客態度の質が高さも特徴的だ。
- 一方でコンビニ発展当初と現在の消費者の状況は変化している。来店客の高齢化が進み、セブンイレブンでは、1989年と比べて20代以下が3分の1に減る一方、50歳以上が4倍に増えている。高齢化により24時間営業に対するニーズは低下しているのではないか。
- かつてはコンビニの主要客であった若者の価値観も変化している。経済不安が強く、モノがあふれた成熟した消費社会に生まれ育ったがゆえに、コストパフォーマンス意識が高いため、定価で商品が売るコンビニよりも、ディスカウントストアや格安ネット通販を利用する傾向がある。
- また、未婚化や晩婚化、核家族化の進行で高齢単身世帯が増えている。高齢単身世帯の生活にとって、商品が小分けで近所に立地するコンビニは親和性が高い。高齢単身世帯は高齢化・過疎化が進む地方部ほど多いため、人手不足に悩む地域ほど深夜営業の必要性は低下しているのではないか。
- コンビニは家事の時短化ニーズの強い共働き世帯の受け皿にもなっている。しかし、特に子どものいる共働き世帯では帰宅時の利用が予想され、深夜営業に対するニーズは強くない。また、注文後、数時間で配送するネット通販サービスも増えており、人手不足の中で、コンビニだけが24時間営業に固執して疲弊する必要はないだろう。
- 一方で、特に高齢単身世帯の多い地方部では、コンビニは社会的なインフラとしても機能している。24時間営業の店舗が全くないと緊急時などの不安が高まるため、地域の診療体制のように、コンビニ各社が持ち回りで24時間営業を担ってはどうか。
- ただし、コンビニは24時間営業を前提として商品の製造や配送、商品の陳列等の店舗運営がなされているため、営業時間の短縮に合わせて、配送や製造の時間帯も変える必要がある。人手不足を背景にしたコンビニの時短営業化の実施には、コンビニのビジネスモデルそのものの見直しが求められている。