「過去問集は3回解け」の本当の意味とは?
参考書を10日で読破したあとは、過去問集にチャレンジしてください。ただし、ここでも守っていただきたいルールがあります。
それは、この段階では、年度別ではなく、分野別・項目別の問題集を選ぶこと。年度別の場合、色々な問題が混ざっているため、参考書のどの項目に対応する問題が解けて、どの項目と対応する問題が解けないのかの区別がつきにくいからです。
分野別であれば、わからない問題があれば、「参考書のあそこに書いてあったな」と、すぐに該当箇所に戻って復習することができます。
よく、「過去問集は3回解け」と言われますが、それにも効率的な方法があります。
まず、1回目は、残念ながら、解ける問題はほとんどないはずです。それでいいのです。1回目は、問題がどのような傾向や形式なのかを知ることが目的です。極端な話、「答えを見るために解く」くらいのイメージで、どんどん答えを見てください。
そして、全部の問題を解くのではなく、問題番号が奇数か偶数の問題だけを選んで解いていくこともポイントです。
例えば奇数を選んだ場合、1問目、3問目、5問目……と問題を解いていきます。また、奇数の問題すべてを解く必要もありません。比較的難易度の低い6割くらいを解きましょう。
2回目は、1回目に解いたのと同じ問題に、今度は「答えを読む」のではなく「解く」のだという意識で臨んでください。
ここでの注意点は、完璧主義に陥らないこと。真面目な人ほど「わからないことをゼロにしなければ次に進んではいけない」と考えがちですが、3割の内容を押さえれば本番で7割を得点できるのが資格試験の世界です。過去問は過去問であって、本番で同じ問題が出ることはないと割り切って、3回目に進みましょう。
1回目、2回目で奇数の問題を解いた場合は、3回目は偶数の問題にチャレンジします。つまり、初めて見る問題を解くわけです。慣れていない問題だからこそ、現時点での自分の実力を正しく測ることができます。
本番に近い環境を再現してみよう
3回目が終わる頃には、ある程度の実力がついているはずですから、模擬試験にチャレンジするのもいいでしょう。
ただし、闇雲に多くの模試を受ける必要はありません。あくまで模試は模試であって、予備校ごとの特徴も出るので、本番とは違うからです。ある程度、模試で自分の実力を測り、わからない点を潰せたら、試験直前の時期は、もう一度、過去問にチャレンジしましょう。
ここで、年度別過去問集の出番となります。
分野別問題集を解いても、まだ過去問全体の7~8割くらいしか解いていないはずですから、年度別過去問集を普通に解くと、初めての問題に出合えます。ですから、模試として活用できるのです。
また、本番が近くなると、難しい問題に手を出したくなるものですが、これにも注意が必要です。
不合格になった人の多くが、「難しい問題が解けていれば」と言うのですが、何度も指摘している通り、資格試験は、3割の内容を理解していれば7割の問題が解けます。難しい問題を解くことより、間違えてはいけない問題を確実に解くことのほうが大切なのです。
資格の本来の意味は、業務を確実に遂行するために必要な知識を保証することにあるわけですから、そのことに照らしても、難易度の低い問題を確実に正解することが求められます。
本番直前に問題を解くときは、その時間帯や環境も、本番に近づけることをお勧めします。例えば、試験が午前と午後に分かれているなら、午前と午後に分けて問題を解く。また、本番の試験会場は想像以上にうるさかったり、集中力を削ぐ出来事が起こったりするものですから、喫茶店など、少しうるさいくらいの場所で問題を解くのも、有効な対策だと言えるでしょう。
《取材・構成:池口祥司》
《『THE21』2019年8月号より》
並木秀陸(なみき・ひでたか)
ナルミナス・キャリア〔株〕代表講師
東京都生まれ。サラリーマンから一念発起し、独学で、司法書士をはじめ、行政書士、社労士、宅建試験など、数多くの国家資格に短期間で一発合格を果たす。大手予備校講師として、15年以上にわたり、延べ17万人以上に講義をした経験も持つ。取得した資格を活用し、特定社労士として、事務所、株式会社、社団法人の経営も行なっている。著書に『捨てる勉強法』(明日香出版社)など。(『THE21オンライン』2019年08月22日 公開)
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