「O2O」(オンラインからオフラインへ)の時代から「OMO」(オンラインとオフラインが融合)の時代へ、世界が変わりつつあります。先行しているのが中国で、OMOの概念を取り入れたビジネスが中国でその存在感を高めているのです。
「O2O」と「OMO」の違いとは
OMOとは「Online Merges with Offline」の略称として使われているマーケティングの新たな手法で、直訳すると「オフラインと融合したオンライン」という意味です。簡単にいえば、「現実の世界とデジタルの世界が一つとなる」という概念を指しています。これまでマーケティング手法として注目されていたO2O(Online to Offline)は、「オンラインからオフライン」という、あくまで一方向への不可逆性を有する概念でした。
一方OMOは「双方向性」が特徴です。例えばO2Oではオンライン(デジタル世界)でユーザーに広告を配信し、オフライン(現実世界)での行動に結びつけます。一方でOMOはこうした仕組みに加え、オフラインでの個人の行動を解析したうえで、オンライン上でユーザーに向けてアクションを行うという新たなベクトルが付加されているのです。
最初にOMOの概念を提唱したのは、中国の大手ベンチャーキャピタル(VC)「シノベーション・ベンチャーズ」(旧イノベーション・ワークス)を率いる李開復(リー・カイフー)氏だとされています。2017年後半ごろのことで、英経済誌エコノミスト上で持論を展開しました。李氏はかつて米Googleの中国事業の責任者だったこともある人物で、OMOの普及により世界はさらに進化すると提唱しています。
中国で一気に店舗数を増やしたLuckin coffee
李氏が提唱したOMOの概念をうまくビジネス戦略上で応用し、中国国内で一気に店舗数を拡大することに成功した新興コーヒーチェーンが「Luckin coffee(ラッキン コーヒー)」です。中国ではすでにスターバックスなどの大手コーヒーチェーンが存在感を示していました。しかしLuckin coffeeは2017年10月に設立後、その牙城を崩しにかかり、すでに中国国内の40都市以上で3,000店舗を展開しているとされています。
Luckin coffeeは、まずOMOマーケティングの軸として実店舗を訪れるユーザーがアプリをスマートフォンにインストールしなければコーヒーを購入できない仕組みを導入しました。そしてコーヒーの無料キャンペーンなどをアプリ上で展開し、一気にユーザー数を増やしていきます。さらに注目したいのが、ユーザーが実質的にオフライン(店舗)で購入した商品や訪れた店舗をアプリの導入によってオンライン上で把握することができるようになったことです。
こうしたデータはLuckin coffeeが経営戦略を練るうえでの貴重な検討材料となり、事業の収益性をより高めることにつながります。囲い込んだ各ユーザーにマッチするプロモーションを個別に打つことも容易になります。
日本でも「OMO」店舗が登場する日は近い!?
米Amazon.comが展開する無人コンビニ「Amazon Go」もLuckin coffeeと同様にアプリを使わなければ買い物ができません。そしてAmazon Goではこうしたデータを基に商品棚の陳列計画や品揃えを最適化していくことでしょう。中国でもアメリカでも、まだOMOは浸透しはじめた段階ですが、このマーケティング手法に対する注目は世界でも徐々に高まっており、近い将来、全面的にOMO戦略を採用した実店舗が日本にも登場することが期待されます。
レストランやスーパー、家電量販店などのほか、映画館などの娯楽施設においても人々の商品購入やサービス利用風景が、ガラリと変わる日がいずれやって来るのではないでしょうか。(提供:J.Score Style)
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