「バレンタイン・ショックの影響? ああ、そりゃ甚大だよ」保険代理店を経営する知人がそう言いました。今年2月13日、国税庁は『拡大税制研究会』に生命保険各社の担当者を集めて、節税保険の税務上の取扱を見直す方針を示しました。それまで中小企業のオーナー経営者などの顧客から人気を集めていた「節税目的の法人保険(以下、節税保険)」に対し、国税庁が新たな課税ルールを適用する意向を示したのです。
国税庁の意向を受けて、生命保険各社は翌2月14日以降次々と節税保険の販売停止に動きました。この時点で国税庁の具体的な方針は不明でしたが、それまでのように節税メリットを顧客に説明することが難しくなったためです。「全額損金に出来る節税保険」が突然売り止めとなったこの出来事は、業界関係者やメディアで「バレンタイン・ショック」と呼ばれています。
今回は、オーナー経営者等に人気の「節税保険」が販売停止となった背景についてお届けしましょう。
「全額損金に出来る節税保険」とは?
バレンタイン・ショックで売り止めとなった「全額損金に出来る節税保険」とはどのような商品なのでしょうか? その仕組みは様々ですが、ここでは一例を簡単に説明しましょう。
まず「全額損金に出来る節税保険」には第1保険期間と第2保険期間があります。たとえば死亡保険の場合、第1保険期間は傷害死亡保険期間となります。この期間は不慮の事故や感染症等で死亡したときにだけ支払われる保障です。一方、第2保険期間は通常の死亡保険となります。
たとえば商品Aの第1保険期間は10年で、10年後に解約返戻金がピークを迎えるとします。この場合、10年後に解約をすると約80%以上の保険料が戻る仕組みです。戻った保険料は雑収入で課税対象となりますが、退職慰労金等に使うことによって利益を相殺させることができ、節税効果があるとされています(※実際に節税効果があるかはケースバイケースで議論の余地を残しますが……)。こうした節税保険の中には、解約返戻金のピークが5年など、より短い期間の商品もありました。
一般的な生命保険というのは、保険料が安ければ安いほど良いと考えられていますが、法人保険は保険料が高ければ、その分損金扱いの金額が増えるので「保険料は高ければ高いほうが良い」ということになります。ちなみに、保険料は「純保険料」と「付加保険料」で決まります。付加保険料は保険会社の人件費や営業経費など運営や維持等にかかる費用のことです。そこで節税保険の中には付加保険料を通常よりも高く設定して、同じ保障内容でも保険料が2倍、3倍の商品も登場しました。