激務なコンサルタントでありながら、不動産投資家として本業の年収の何倍もの金額を稼ぎ、“億超え”の資産を築く。連載『資産“億超え”の兼業投資家が教える「時間レバレッジ」のかけ方』では、石川貴康さんがいかにして時間を生み出し、資産を増やし続けているのかを実例を交えて紹介してもらう。

第10回のテーマは「『転ばぬ先の杖』発想を持つ」である。ご存知のとおり、転ばぬ先の杖とは「失敗しないように、事前に準備・用心すること」を指すことわざだ。石川さんは仕事や投資だけでなく、あらゆるシーンでリスク低減策と緊急対応策を準備している。策を検討するのには手間がかかるが、結果的に時間を生み出すことにつながっているという。

計画の目的は「不確実な未来のリスク」に対処すること

時間レバレッジ#10
(画像=Ben Harding/shutterstock.com,ZUU online)

私は大企業をクライアントとするコンサルタントだ。予算、販売計画、生産計画、調達計画といった計画の立案業務を高度化するのが主な業務である。

計画というのは、未来の目標を設定し、その目標に向かってスケジュールを引き、段階的にヒト・モノ・カネの資源を配分・投入するステップを切っていくことだ。計画こそ、企業収益を決め、対応できる策を決めることだと言える。

計画とは未来を推し量り、未来を決めようとする行為だ。未来の変動リスクに対する対応策を事前検討し、リスク低減策(リスクミティゲーションプラン)やリスク発生時の緊急対応策(コンティンジェンシープラン)を事前に検討することが計画の目的である。

計画を立てると時間を節約できる理由

計画することは物事の硬直化を招く。そうイメージする人もいるかもしれないが、それは誤解だ。リスク低減策と緊急対応策があれば、むしろ柔軟性を獲得できる。

リスク低減策と緊急対応策を備えた計画は、オプション(対応の選択肢)をもっているに等しい。オプションがあれば選択肢があり、右往左往せず対応でき、時間を無駄にしないで済む。すでに対応策があるので、即適切な対応ができる。「備えあれば憂いなし」であり、「算多きものは勝つ」のである。

証券取引のオプションと同じとも言える。暴落時にプットオプション(売る権利)があれば売ることができるし、暴騰時にコールオプション(買う権利)があれば買うことができる。

暴落を眺めていて、損の拡大をしこたま浴びてしまい、あとで大損の対応に追われる。逆に、暴騰していても買うことができるのに、後に高値づかみをせざるを得ない。そういった一刻を争う時間の競争に勝つための対応策を、オプションは瞬時に可能にしてくれるのである。

ここからはやや専門的になるが、計画を立てるうえでしておきたい、時間をセーブするための対応について解説する。簡単に言うと「転ばぬ先の杖」。転ぶと後が大変だが、転ばぬことで、結果的に転んだときの多大な時間ロスを回避できるというわけなのだ。

「転ばぬ先の杖」発想1:リスク低減策を実行する

リスク低減策を実施することで、リスクを下げることができる。リスクとは不確実性のことで、必ずしも悪いことではないが、できれば不確実なことは避けて、粛々と計画どおりに目標を達成したい。思いどおりにいきたいのだ。不確実なことが起きると、事後に対応が生じて大変な目に遭う。だから、不確実な事象を起こさないように事前対応する。

不動産投資の例で話をしよう。対応が大変になるリスクの一つは家賃滞納である。滞納なんてないようにと願いたいところだが、起きる可能性はあり、ゼロにはできない。そのリスクを低減する策を事前に打てるだけ打って、可能な限り滞納が起きないようにするのがリスク低減策だ。