アップルの時価総額が再び1兆ドルを突破してきた。先月の発表会で「iPhone11」の詳細が明らかとなったが、ここ数年の傾向にもれず製品に関してのサプライズはなく、既存モデルの改良にとどまった点は大方の予想通りだった。ただ、価格戦略の変更やサービス事業への注力といった点はこれまでとはやや趣きが異なっており、アップルが過渡期を迎えていることを浮き彫りにした。事業転換への取り組みはおおむね好感されたもようで、時価総額も再び1兆ドルを回復するところとなっている。

ウォール街でもアップルは何かと話題になる企業だ。今回はアップルの最新動向をリポートしたい。

売上高は過去最高、製品多様化とサービス事業にシフト

アップル,株価
(画像=konstantinbelovtov / shutterstock, ZUU online)

アップルの2019年4~6月期決算は製品ポートフォリオの多様化とサービス事業へのシフトが示される一方で「iPhoneへの依存度低下」をより鮮明にする内容となった。純利益は前年同月比13%減の100億4400万ドルと3四半期連続の減益だったが、ウォール街のアナリストからは「ほぼ想定通り」と失望する向きは意外と少なかった。むしろ、1株利益が2.18ドルと市場予想の2.09ドルを上回った点を評価する声も聞かれる。

もう一つ、注目されたのは同期の売上が1%増の538億ドルとわずかながらも増加に転じ、3四半期連続の減収減益を回避した点だ。iPhoneの売上高は12%減の260億ドルと市場予想(263億ドル)を下回ったほか、iPadは8%増の50.2億ドルと健闘したものの市場予想(51.7億ドル)には届かなかった。一方、アップルウォッチやAI(人工知能)スピーカー等の販売は48%増の55億ドルと好調だった。音楽配信やアプリ販売などのサービス事業の売上高は13%増の114.6億ドルと市場予想(116.8億ドル)に届かなかったが、それでも同事業としては過去最高を更新している。その結果、売上高全体では538億ドルと市場予想(533億ドル)を5億ドル上回ることとなった。一時は70%を占めたiPhoneの売上高比率は2012年以降で初めて50%を下回ったが「iPhoneへの依存度低下がより鮮明となる中で売上が増加した点は評価したい」(前出のアナリスト)との声も聞かれる。

なお、アップルは7~9月期の売上について、610億~640億ドルと前年同期に比べ「3%減から2%増」のレンジになると予想している。ほぼ前年並みの数字ではあるが、市場予想が609億ドルだったこともあり、ポジティブサプライズをもたらした側面もあるようだ。

時価総額が再び1兆ドル超え、2018年11月以来