不動産を売ると発生する譲渡所得税。売却額が同じであれば、買ったときの価格が低いほど納めなければならない税金は増えます。では、贈与の場合はどうなるでしょうか。もともとタダで手に入れたのだから、所得税をたくさん払わなければならないのでしょうか。いいえ、違います。計算方法は以下のとおりです。

譲渡所得の基本的な考え方

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(画像=small smiles/Shutterstock.com)

まず、不動産の売却にかかる税金の基本をおさらいしましょう。

土地や建物を売って得る収入は、10種類ある所得の中の譲渡所得にあたります。株式やゴルフ会員権なども同じ分類です。

譲渡所得は以下のように計算します。

収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) = 譲渡所得

収入金額とは、土地や建物の売却金額です。

取得費とは、購入にかかった費用のことです。物件価格だけではなく、買ったときに払った仲介手数料や登録免許税、不動産取得税、印紙税などの費用も含まれます。なお、建物の減価償却相当分(経年劣化分)は差し引かなければなりません。

譲渡費用とは、売却するためにかかったお金のことです。仲介手数料や印紙税、立ち退き料や建物の取り壊し費用などが該当します。

不動産所得のように総合課税と呼ばれるものは最終的に給与所得などと合算しますが、不動産の譲渡所得は他の所得と合算せず、個別に計算する分離課税です。

税率は、不動産の保有期間によって決まります。売却した年の1月1日時点で5年を超えていたら20.315%(長期譲渡所得)、5年以下なら39.63%(短期譲渡所得)です(税率は所得税と住民税、復興所得税の合計)。

相続や贈与の取得費はこのように計算する

上記のように、不動産を購入した「時期」と「価格」がわからなければ、正確な譲渡所得の計算はできません。贈与は売買ではないので、長期譲渡所得の判定は贈与された時期ではなく、また価格は0円ではありません。前の所有者の情報を引き継ぎます。

例えば、Aさんは2005年10月に別荘を5,000万円で買い、2008年2月に息子のBさんに贈与。Bさんは2013年3月にこの別荘を6,000万円で売ったとします。話を単純にするため、付随費用や減価償却は考慮しません。

この場合、取得時期は2005年10月として保有期間を計算します。Bさんが贈与によって別荘を取得したのは2008年2月です。売却した2013年の1月1日時点では5年経っていないので、短期譲渡所得のように思える人もいるかもしれません。しかし、保有期間はAさんが別荘を購入した2005年10月からカウントします。すると7年以上経過していることになり、長期譲渡所得になるのです。

取得費はAさんが購入したときの価格、5,000万円です。譲渡所得にかかる税金は概算で以下のようになります。

(6,000万円-5,000万円)×20.315%=203万1,500円

相続も同様に考えます。不動産とともに、税金計算に必要なデータを引き継ぐイメージです。

もし購入時期が古すぎて価格がわからなかったら、売却価格の5%を取得費用とすることができます。

10年超の特例や各種特別控除

不動産の譲渡所得には、いくつかの特例があります。

まずは、マイホームを売ったときの軽減税率の特例です。保有期間が10年を超える自宅を売ると、所得6,000万円までの税率が14.21%になります。親から相続した家をすぐに売ったとしても、もともと親が10年以上保有していれば軽減税率が適用されるのです。

またマイホームの売却には譲渡所得から3,000万円を差し引ける特別控除があり、上記の軽減税率との併用もできます。自宅を売ったときの所得税に関しては、かなり優遇されていると言えるでしょう。ただし、この特別控除は夫婦や親子などへ売った場合には適用されません。

かなりピンポイントですが、2009年と2010年に取得した土地の売却では、譲渡所得から1,000万円を控除できます。

これらの特別控除は贈与や相続とはあまり関係がありませんが、不動産を運用する上で知っておいて損はないでしょう。

贈与で受け継ぐ取得時期と取得費

譲渡所得を計算する際、贈与によって得た不動産の取得時期と取得費は、「前の所有者が購入したとき」のものが適用されるので注意が必要です。加えて、相続・贈与・所得税対策をするうえで、各種特例が適用されるかどうかも確認するようにしましょう。(提供:相続MEMO


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