相続放棄をした場合、被相続人(亡くなった人)の借金だけでなく、すべての財産を放棄する必要があります。しかし相続人が受取の権利を持つ生命保険金については、相続放棄の対象から外すことができることをご存じでしょうか。そこで今回は相続放棄の際における死亡保険金の受取について解説します。

「相続放棄」とはすべての財産の相続を放棄すること

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(画像=lovemelovemypic/Shutterstock.com)

被相続人(亡くなった人)に多額の借金があり、財産だけでは借金を返せないようなケースでは、相続人が相続発生を知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」を申述することで、相続財産のすべてを放棄することができます。ただし相続放棄をするということは、借金だけでなくすべての財産を放棄するということです。

借金だけを放棄して、預貯金やほかの財産を受け取ることはできません。しがたって相続放棄を選択する際には、プラスの財産もマイナスの財産(借金など)も含めて、すべての資産状況を明らかにしてから判断する必要があります。そこで気をつけたいのが「生命保険金」の扱いです。被相続人が生命保険に加入し、その受取人が相続人になっていることは多くあります。

相続放棄を選択した場合、すべての相続財産を放棄することになるため、生命保険金の受取も放棄となる気がしてしまいますが、そうではありません。相続放棄をしても生命保険だけは受け取ることができるのです。

生命保険は相続財産ではない

生命保険の契約では、保険会社と契約し保険料を支払う「契約者」、保険の対象となる「被保険者」、保険金を受け取る「受取人」の3者を指定する必要があります。契約者と被保険者が被相続人で、受取人が相続人に指定されている生命保険の保険金は、現預金や不動産、株式のような「相続財産」には含まれません。

そのような生命保険金は、保険契約に基づいて被相続人の死亡という事実が発生することで相続人が受け取れるものであり、相続人の固有の財産とされるからです。したがって相続放棄を選んだとしても、自分が受取人になっている生命保険金だけは受け取ることができます。

死亡保険金を受け取れないケースもある

注意したいのは、「受取人が誰になっているか」です。もし受取人が被相続人であった場合、その生命保険契約に基づく保険金は被相続人の「相続財産」に含まれます。相続財産の対象ということは、相続人が相続放棄をした場合、ほかの財産と同様に一切受け取れないことになるのです。
一方、受取人が被相続人以外であった場合には、その生命保険金は被相続人の相続財産には含まれません。受取人に指定されている人の固有の財産になり、相続人が相続放棄したとしても生命保険金を受け取ることができます。
つまり、保険金受取人が「被相続人なのか」「そうではないか」によって相続放棄しても生命保険金が受け取れるかどうかが変わってくるということです。

受け取った保険金に対して相続税は発生する

相続放棄をしても生命保険金は受け取れますが、受け取った保険金に対する相続税は発生するという点は注意が必要です。なぜなら相続税法上、生命保険金は「みなし相続財産」として相続財産と同様に課税対象となるからです。加えて相続放棄した場合には、通常の生命保険金の相続では適用される「生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数が非課税になる)」を使うことができません。

ただし、「相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数が非課税になる)」は適用されます。したがって、基礎控除の額を超えて生命保険金を受け取った場合には、相続税が発生することになるので、申告や納税の手続きが必要です。借金を多く抱えている親が亡くなり、自分が相続人になった時は、相続放棄の検討と同時に生命保険契約の内容や金額をよく確認しておく必要があります。(提供:相続MEMO


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