相続税で税務調査が入ることがあるのはよく聞きますが、実は贈与税でも入るケースがあります。いったいどんなケースが税務調査の対象になるのでしょうか。
税務調査とは何か
税務調査とは、税務署などの組織が、納税者の申告内容を帳簿などで確認し、誤りがないかどうかを確認する調査のことです。法人税や所得税と同様に、相続税や贈与税の申告があった際にも調査が入る場合があります。相続税と贈与税の申告時期は以下の通りです。
・贈与税
贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までです。ただし3月15日が土日祝日だった場合は翌月曜日まで。
・相続税
相続があったことを知った日から10ヵ月以内。
贈与税の申告時期は確定申告と同じなので覚えておきやすいですが、相続税は相続があったことを知った直後から計算が始まるため、申告漏れがないように覚えておき、早めに準備することが必要です。
どんなケースで税務調査が入るのか
どのような人が税務調査の対象になりやすいのでしょうか。以下のようなケースでは税務調査が入る可能性が高くなります。
・申告内容に不備が多くある
当然ながら申告内容に不明な点が多ければ、調査が入る恐れは十分にあります。基本的なことですが、申告書の記載は慎重に行わなければなりません。
・金融資産を多く相続した
国税庁の調査によると2017年の相続における主要4科目(土地・家屋・有価証券・現金預貯金)のうち、最も申告漏れが多いのが現金預貯金で34.1%、2番目に多いのが有価証券15.2%です。不動産よりは金融資産のほうが申告漏れを指摘されやすいという結果が出ています。
・無申告の人
管轄する税務署は被相続人(故人)の財産や過去の確定申告内容などを把握しています。そのため相続の無申告がばれないという可能性は低く、調査が入る可能性は大です。
「相続税」税務調査のチェックポイント
「相続税」の税務調査で税務署がチェックするポイントは、被相続人の趣味や経歴などのパーソナルな部分から、預金通帳、株などの有価証券、不動産関係書類、香典帳といった具体的な資料まで多岐にわたります。今はマイナンバー制度で預金や株式など、インターネット取引であっても把握が容易なので、申告漏れとならないためには、すべて正直に提出することが必要です。
国税庁のホームページによると2017年度の「相続税調査」で実地調査の件数は1万2,576件にのぼり、そのうち内申告漏れなどの非違件数は1万521件となっています。率にして83.7%で約10件に8件は何らかの申告漏れを指摘されたことになります。また申告漏れ課税価格は約3,523億円で、1件当たりでは2,801万円とかなり高額です。
税理士へ依頼する場合、相続は受け継ぐ金額に比例して報酬が高くなります。しかし信頼できる専門家へ委託するほうが、自分で申告するよりも申告漏れのリスクは少なくなり安心です。
「贈与税」税務調査のチェックポイント
一方、「贈与税」の税務調査は、すぐに調査が入ることはありませんが、不動産であれば移転登記した時点で贈与されたことがわかります。移転登記せずに親の土地を使っていた場合でも、相続時にはわかってしまうため、相続税が課税されることになります。「連年贈与」になっていないかも、よくチェックされるポイントです。
贈与税は年間110万円の基礎控除があるため、1,000万円を100万円ずつ10回に分けて贈与すれば非課税となります。しかし祖父母が毎年4月に100万円を孫の銀行口座に10年間振り込むなど、同じ金額を同じ時期に贈与することを書面で約束していると、はじめから1,000万円という1つの贈与を分けて振り込んだものとみなされ、課税されるケースがあるのです。
税務調査を受けないためには、振り込む時期や金額を毎年変えたり、その都度贈与契約書を作成したりするなどの工夫が必要です。また贈与は単純に資金移動させるだけでは贈与扱いにならないこともあります。お金をもらった人が銀行口座の払い戻しをするための印鑑を管理していたり、キャッシュカードや通帳を保管していたり、いつでも使えるようにしておくことが必要です。
もし子供や孫に資金移動しただけで、通帳や印鑑は贈与した側が管理しているというケースがあったら、贈与契約書があったとしても贈与として認められない可能性が高くなります。相続税や贈与税はもともと不労所得であることから、通常の確定申告よりは厳しくチェックされると考えたほうがよいでしょう。ただし税務署は調査のプロですから、不当に課税されるということはないので、それほど心配することはありません。税務調査が入ってもあわてずに、堂々としていることが大事です。(提供:相続MEMO)
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