著作権等と並び、知的財産を保護する法律に「意匠権」があります。実はこの法律、法改正によって不動産にも深く関わるようになりました。自分が建てたビルが意匠登録されている物件と酷似していたらどうなるのか、そのペナルティとは?

「特許法等の一部を改正する法律案」が施行へ

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(画像=fuyu liu/Shutterstock.com)

2019年5月10日に可決・成立した「特許法等の一部を改正する法律案」が、5月17日に公布されました(正式な施行は2020年の予定)。

経済産業省の見解によると、今回の法改正の趣旨は「デジタル革命により業種の垣根が崩れ、オープンイノベーションが進むといった変化を踏まえて、特許等の権利によって、紛争が起きても大切な技術等を守れるよう産業財産権に関する訴訟制度を改善するとともに、デジタル技術を活用したデザインの保護やブランド構築等のため、意匠制度等を強化する」というものです。

意匠権とは何か

まず、意匠権の内容について確認しておきましょう。意匠とは物品の形や模様、色などの要素からなるデザインのことです。意匠権は意匠登録したデザインの生産、使用、販売などを独占でき、権利を侵害した者に対して差し止めや損害賠償を請求できる権利です。意匠権は、著作権や商標権と同じく知的財産権の一種です。

建築物の外観・内装デザインも対象に

今回の法改正で、意匠法はかなり大きな変更がなされます。中でも不動産関連で注目されるのが、これまで意匠法の対象外だった「建物の外観やデザイン」も保護の対象になったことです。

これまでの法律では意匠として認められるのは物品のみで、しかも量産できることが条件でした。したがって、同じものを大量生産できない建築物は対象外だったわけです。法改正によって、空間デザイン(建築物、内装)も意匠登録ができるようになりました。

建築物も保護されるようになったきっかけは、大手コーヒーショップチェーン「コメダ珈琲店」が外観を模倣したとして「マサキ珈琲」を訴えた事件でした。この時は意匠法ではなく不正競争防止法によって保護を求めましたが、今後は意匠法を盾に権利を主張することができるようになるため、訴訟が増える可能性があります。

また、権利の保護期間もこれまでの「登録日から20年」が「出願日から25年」に延長され、本意匠の出願後10年間は関連意匠の出願もできるようになります。

侵害した場合のペナルティは?

では、意匠権を侵害した場合、どのようなペナルティが課されるのでしょうか。以下の5つが意匠権侵害のペナルティです。

  • 刑事罰
    まず、刑事罰として意匠権の侵害に犯罪性がある場合、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が課されます。
  • 損害賠償請求
    罰金とは別に、意匠権利者に与えた損害額に応じて賠償責任を負う場合があります。
  • 差し止め請求
    意匠権を侵害している商品の製造・販売の停止を求められます。
  • 不当利益返還請求
    意匠権を侵害して得た利益を、権利者に返還しなければなりません。
  • 信用回復措置請求
    いわゆる謝罪告知です。罰金や損害賠償のみならず、新聞等への謝罪広告まで掲載することになれば、相当な金額の負担が発生することになります。

「コメダ珈琲店」の事例によって、外食チェーンなどは同じ外観を量産していると解釈することができるようになり、チェーン化を進める際は類似の外観がないか慎重に調査する必要があります。さらに内装もパッケージで1事例として意匠登録ができるため、店舗の意匠権は広範囲に及ぶことになります。

今回の法改正は権利者に極めて有利な内容となっていますが、今後各チェーン企業や建設会社、ハウスメーカーなどは難しい対応を迫られることになりそうです。(提供:相続MEMO


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