筆者が主宰するFund Garageに最近お問い合わせが増えている項目のひとつが「AI(人工知能)関連の投資信託」に関する見立てだ。証券市場に負けず劣らず、投資信託業界も「旬な話題や単語」に飛びつき易いのは同じ。当然、商品開発の段階で「何かAIに関係するファンドは作れないか?」というニーズが販売会社や運用会社の営業サイドから沸き起こるのは経験に照らしてみても極自然な話だと理解出来る。

「AI関連の投資信託」の二つの分類

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(画像= metamorworks / shutterstock, ZUU online)

「AI関連の投資信託」には2種類の考え方がある。ひとつは「AIをテーマとしたテーマ株ファンド」であり、もうひとつが「AIそのものを投資判断のツールとして利用するファンド」だ。

前者は投資信託業界では「旬な話題や単語」を商品開発に生かす伝統的な手法であり、その意味での目新しさはない。販売の現場で「これからはAIの時代だってことは、多くのメディアで取り上げられている通りなので議論の余地は無いと思いますが、このファンドはそのAIに関わる銘柄に投資をして収益をあげることを狙ったファンドです」というセールストークは、短時間でお客様に訴求するキャッチーなストーリーとしては非常に使い易いはずだ。よくよく考えると「突っ込みどころ満載」のフレーズではあるのだが、限られた時間で行われる(聞く側も長い説明を嫌がる傾向がある)セールスにはもってこいだ。

今回は「テーマ株ファンド」としての「AI関連の投資信託」ではなく、後者「AIそのものを投資判断のツールとして利用するファンド」について、運用担当であり、商品開発担当でもあった元ファンドマネージャーとして、どの程度の実力を期待出来るのかを詳らかにしてみたい。

そもそもAIって何だろう?

実はお問い合わせの内容や直接多くの人とのやり取りを通じて筆者が強く感じているのは、そもそも「AIって何だろう?」という定義が本当に人それぞれ千差万別ということだ。同様なことが投資信託の商品開発などの場にも存在するであろうことは想像に難くない。まずここを見極めないと、過大な期待を抱いてしまったり、過小評価となってしまう恐れがる。現在の等身大のAIを把握することが大切だ。