仕組みの運用を確認しよう!

リーダーの「やってはいけない」
(画像=THE21オンラインより)

業務ルール、新人用マニュアル、チェックリスト、メール送付時のルール、ファイルやフォルダ管理のルール、ミス報告書、見積書のフォーム、請求書発行システム……。これらのルールやマニュアルなどの仕組みは、メンバーの業務を効率化し、業務レベルを標準以上にするために存在している。あるいは、コンプライアンスの観点から、会社やメンバー自身を守るため、というケースもあるだろう。ここで、できないリーダーは、「仕組みを作って満足」してしまう。

※本稿は、吉田幸弘著『リーダーの「やってはいけない」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

なぜ、仕組みを作っても問題だらけなのか?

たしかに、これらの仕組みは構築するだけでもひと仕事です。しかし、仕組みは運用しないと何の意味もありません。

たとえば、仕組みを作っただけで満足しているリーダーの下では、次のような問題が発生します。

・業務ルールの「形骸化」

お客様から注文を受けた場合、生産管理部に当日17 時までにメールすれば、3営業日後に倉庫に納品される。しかし、ベテラン営業マンの中には、締め切りの時間を守らなかったり、ゴリ押しして2営業日後の納品にさせたりするケースが多発している。

・ミス報告書の「形骸化」

細かなミスもメンバーで共有する仕組みを設けたのはいいが、ミスを報告することに抵抗があり、きちんと提出されていない。むしろ、メンバーの中に、発生したミスを隠ぺいしているケースが見られる。

・「本末転倒」な見積書のフォーム

見積書の作成時間を削減するために、見積書の共有フォームを作ったが、エクセルの関数がきちんと反応せず、結局手書きで修正しているため、各々が見積書を独自に作成していたときより、時間がかかってしまっている。

これらの問題の共通点は、仕組みを作った後に、リーダーが事態を把握していないために、メンバーに不利益が発生している点です。しかも、部下はルールの改善などは提案するにもハードルが高いため、問題が放置され、チームの生産性は低いままとなってしまうのです。

できるリーダーが注視している3つのポイント

一方、できるリーダーは、仕組みを構築した後の運用までしっかり確認しています。具体的には次の3つの点を注視しています。

1. 運用後に、部下からフィードバックをもらう

実際に仕組みを運用していて、不具合や問題点はないかどうかを、リーダーの側からメンバーに確認します。

2. 不具合や問題点は、対応が必要かどうかをすぐに判断し、放置しない

部下から不具合や問題点の提案があれば、次は対応する必要があるかどうかを判断し、適宜変更する姿勢を見せましょう。ルールは絶対不変ではなく、状況に応じて変わっていくものと考えることが大切です。

たとえば、先ほどの例の見積書のフォームなどは、当初の目的を果たしていないので、すぐに改訂する必要があります。

また、業務ルールの場合は、まずはベテラン営業マンやその関係者にヒアリングし、必要があればルール改訂を提案する必要があるでしょう。

この時、ベテラン営業マンがなぜそのようにしているかをしっかり聴く必要があります。そうしないと、ルール改訂の方向性が間違ってしまったり、当人の納得感が低くなってしまったりするからです。

3. そもそもの運用の徹底をメンバーに促す

先ほどの例のミス報告書の隠ぺいなどは、将来大きな問題に発展するリスクが高い問題です。これに関しては、ルールを変更するというより、口うるさく指導して、仕組みをしっかり守らせる必要があります。

そのうえで、どうしたら部下の側も運用しやすいかなどを議論していけばいいでしょう。できるリーダーは、このような小事・凡事をも徹底しているものなのです。

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吉田幸弘 発売日: 2019年03月19日
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リーダーの「やってはいけない」
(画像=THE21オンラインより)

吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)
リフレッシュコミュニケーションズ代表
1970年、東京都生まれ。大手旅行代理店を経て、学校法人、外資系専門商社、広告代理店で管理職を経験。「怒ってばかりのコミュニケーション」で降格を経験したことからコミュニケーションを学び、2011年に独立。現在はコーチングの手法を駆使し、経営者や中間管理職向けにコンサルティング活動を行なう。(『THE21オンライン』2019年09月13日 公開)

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