「ストレスチェック制度」とは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐために、定期的に労働者のストレス状況を検査する一連の取り組みのことです。2015年12月1日に施行されたストレスチェック制度は常時50人以上雇用している企業に実施義務があります。中小企業経営者が必ず知っておきたい本制度のポイントを分かりやすく解説します。

ストレスチェック制度とは?法律の内容と趣旨

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(写真=PIXTA)

「労働安全衛生法 第66条の10」において、事業者は常時使用する労働者に対してストレスチェックを毎年1回行い、その検査結果に基づいて医師による面接指導などを実施することが義務付けられました。

近年、仕事を原因とした精神障害による労災認定者の増加が社会問題になっており、その打開策として設けられたのがストレスチェック制度です。

義務化の要件や報告義務――常態的に50人以上の労働者がいる事業場

ストレスチェック実施義務があるのは「常時50人以上の労働者を使用する事業場」であり、「50人未満の事業場」については「当分の間努力義務」とされています。

これは、直接雇用(契約社員、パート、アルバイトなど)や派遣社員といった雇用形態、あるいは勤務時間にかかわらず、継続的に雇用または使用している労働者が50人以上いる事業場(支店や営業所など)ごとに規定が適用されるものです。

常時50人以上の労働者を使用する事業場において、ストレスチェックを実施していない、あるいは受検率が低い場合でも、特に罰則規定は設けられていません。

ただし、従業員にストレスチェックを実施していない場合には、労働契約法の安全義務違反となり、労働者が労務を提供している最中に、身体や生命に損害が発生した際には、損害賠償の請求を受ける可能性があります。またストレスチェックを実施した/しなかった場合、いずれにしても所轄の労働基準監督署への報告義務があります(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第52条の21)。違反の場合には罰則があります。なお、50人未満の事業場については、報告義務はありません。

ストレスチェックの実施者――医師や保健師などの有資格者

ストレスチェック実施者は、医師(産業医)や保健師、あるいは厚生労働大臣の定める研修を受けた看護師または精神保健福祉士の中から選びます。実施者を外部委託することもできます。

検査結果により高ストレス者と判断された人のうち、実施者に面接指導を申し出た者に対して、医師(産業医)が個別指導を実施して、残業禁止や休職などの措置が必要かどうかなどの意見を伝えます。

なお、労働者の人事権を持つ者(上司または人事部長など)は、その労働者のストレスチェック実施者や実施事務従事者になることはできません。

実施上の注意点――プライバシーの保護と結果の不正利用禁止

本制度の実施は、労働者の個人情報が適切に保護されて、他の目的に不正使用されないことが大前提になっています。

プライバシー保護のため、以下のような対策が講じられています。

・ストレスチェック分析の結果を事業者に提供できるのは、集団規模が10人以上の場合(10人未満の集団だと個人を特定される恐れがあるため、全員の同意が得られた場合のみ提供可能)
・個人情報を取り扱う実施者や実施事務従事者には守秘義務があり、違反した場合は罰則の対象となる
・ストレスチェック結果を事業者が入手できるのは、本人への通知後に同意が得られた場合のみ
・結果については、原則5年間保存する(事業者が保存する場合は「義務」、実施者の場合は5年間保存するのが「望ましい」)

以下のような労働者に対して、事業者が結果を不正利用して、解雇や退職勧奨、不当な動機による配置転換などを行うことは禁じられています。

・ストレスチェックを受けなかった労働者
・事業者への結果通知に同意しなかった労働者
・面接指導を申し出た、あるいは申し出なかった高ストレス者

ストレスチェックによって職場環境を改善して生産性向上につなげる

ストレスチェック制度を徹底できれば、労働者のメンタル不調の兆しを察知して、遅滞なく職場環境の改善策を講じることができます。これによって、労働者が働きやすい環境を整備できれば、企業としての生産性向上につながります。

今後は、ストレスチェックを労働者と企業が共に成長するきっかけとして捉えて、継続的に取り組む姿勢が企業にとっては大切になるでしょう。(提供:企業オーナーonline

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