(本記事は、堀口龍介の著書『1分で売る 最小の労力で成果を最大化させる「AI時代の即決営業」』冬至書房の中から一部を抜粋・編集しています)
「AI時代の即決営業」』シリーズ
リアクションの「さしすせそ」で感情同化させる
みなさんは、「話し上手より聞き上手」という言葉を聞いたことがありますか?人は、他人の話を聞くよりも、自分がしゃべりたい動物です。つまりお客様は、自分の話がしたいのです。
ですから、お客様にはしゃべらせてください。お客様は、しゃべれば しゃべるほど、気持ちがよくなり、心がほぐれていきます。自分のことをテーマにした話 であれば、お客様はいつまでも気持ちよく話し続けてくれます。
そのためには、お客様のことをテーマにして話を進めてください。お客様の自慢話、武勇伝、最近はまっていることなど、お客様は自分の話をすればするほど、気持ちがよくなり、警戒心も解いていきます。
その結果、私たち営業マンの要求を受け入れやすくなるのです。お客様をしゃべらせていく上で、守ってもらいたいスタンスがあります。それが、これから説明する「100%同意」です。「100%同意」とは、契約と関係のない意見に対しては、「100%同意しろ」ということ。
世の中には、いろいろな考え方があります。お客様もさまざまな考え方を持っています。あなたがお客様と話をしていく中で、「それはおかしいんじゃないかな」「それはちょっと矛盾しているんじゃないかな」と思うこともあるかもしれません。
でも、お客様の意見がどんなにおかしいと思ったとしても、どんなに許せないと思ったとしても、契約と関係のない意見であるならば、100%同意してほしいのです。
私は家庭教師と学習教材の訪問販売の営業をずっとしていましたが、商談中にお客様がこういうことを言ってきたことがあります。
「やっぱりたこ焼きは、大阪のたこ焼きよりも東京のたこ焼きのほうがおいしいよね」
「結局、男よりも女のほうが偉いのよ」
こういった私と異なる意見を言ってくる場合があったのです。大阪出身の私としては、大阪のたこ焼きのほうがおいしいと思っていますし、男性も女性もどちらも偉いと思っています。でも、これは契約とは関係のない意見ですから、100%同意です。
「間違いないです。確かにたこ焼きは東京のたこ焼きのほうがおいしいです」
「お母様のおっしゃる通りです。絶対に男性よりも女性のほうが偉いです。なぜかと言うと、子供を産みますから」
このように、あなたが関西人であろうが関東人であろうが、男性であろうが女性であろうが、契約と関係のない意見に対しては、100%同意してほしいのです。もちろん、反論したくなる気持ちもわかります。でも、私たち営業マンの役割は、売ることです。
なので、お客様との余計な議論は避けてください。契約と関係のない意見に対しては、すべて同意していくことが売ることへの近道なのです。
さらに「100%同意」では、感情も合わせて言うようにします。お客様の感情部分に対しても、100%同意するのです。もしお客様が「旦那の浮気が許せない」という話をしてきたら、「腹立ちますねぇ。それは許せませんよね」という感じで、あなたも一緒に怒ってあげてください。
息子さんがマラソン大会で優勝したという話をしてきたら、「え!優勝したんですか!すごいじゃないですか!めっちゃうれしいですね!最高ですね!」という感じで、あなたも一緒に喜んであげてほしいのです。
お客様の話に同意することに加えて、感情部分も合わせていけば、お客様はあなたのことを「この人は、私の気持ちをわかってくれる人なんだ」と認識するはずです。お客様の感情部分と同化して、信頼関係を築いていく方法を「感情同化」と言います。
また、リアクションも大切です。リアクションの「さしすせそ」という技術があります。お客様が、自慢話や武勇伝を話してきたとき、「さしすせそ」のリアクションをするようにしてください。
さ……「さすがですね!」
し……「知らなかったです!」
す……「すごいですね!」
せ……「説得力があります!」
そ……「そうなんですね!」
このように、「あなたの話をもっと聞かせて!」と言わんばかりに、大きなリアクションを取ってほしいのです。その話がどんなにくだらない話だったとしても、どうでもいい話だったとしても、最大のリアクションで反応してください。
あなたの大きなリアクションによって、お客様はさらに気持ちよくしゃべり続けます。そのくらいリアクションは大切です。ですから、お客様に対するリアクションは「さしすせそ」を意識して、大きく取るのです。
「話し上手」より「聞き上手」が最高の営業
最後に、ひとつ注意点があります。お客様の意見の中には、同意してはいけない意見があります。
例えば、「不景気だから、どこの家庭もお金がない」「急いでいない」「今の問題が解決しなくても別にいいと思っている」といった契約から遠ざかろうとする意見に対しては、しっかり反論してください。契約から遠ざかろうとする意見に対して同意してしまうと契約が取れなくなってしまうからです。
プレゼンテーションにおいて、お客様が契約から遠ざかろうとする意見を言ってきた場合は、「確かに不景気ですよね。うちの家計も火の車です」といったん同意します。そして、クロージングに入ったら、それを次のように覆します。
「お客様は先ほど、不景気だからどこの家庭もお金がないとおっしゃっていましたよね。ただ、世の中の親御様たちは、景気の悪い時代だからこそ、お子様の教育にお金をかけるんです。私のおばあちゃんが母親にいつも言っていたことがあります。
「あんたな、子供には教育だけは残してあげや。それが親の役目や。親はな、味噌なめてでも、塩なめてでも、子供に教育を残してあげなあかんねや」と、ずっと言っていました。
今は昔と違って、どこのご家庭でもお子様を家庭教師か塾に通わせています。どこのご家庭でも教育費はかけられているんです。どうか、この機会にご決断ください」
このときのポイントは、「不景気なのでお金がない」という契約から遠ざかろうとする意見に対して、最初は同意しておきながら、最後にひっくり返すことです。また、「急いでいない」「今の問題が解決しなくても別にいいと思っている」という意見に対しては、クロージングのときに次のようにひっくり返します。
「お客様は先ほど『急いでいない』(もしくは『解決しなくてもいい』)とおっしゃいましたが、人が問題解決できない理由は、ひとつだけなんです。それは、スタートしないことです。スタートしないと、ゴールはありません。
私はこの仕事を10年していますので、1000人以上の方にこの説明をしてきたのですが、結局、お話を聞かれる方は問題を抱えていらっしゃる方なんです。そういう方は、例外なく、まだスタートしていない方です。スタートしていないから問題があるわけです。
私たち営業マンの仕事は、お客様の背中を押してスタートしていただくことです。私たちが説明させていただいてもスタートしなかった方が、半年後、1年後にスタートされたという話を、今まで聞いたことがありません。
結局、スタートできない方は、いつまで経ってもスタートできない方なんです。スタートしないと、○○様の問題は絶対に解決しません。ですから、どうかこの機会にご決断ください」
気をつけるべきことは、プレゼンテーション中は議論を避けること。プレゼンテーションの目的は、あくまでも商品説明です。ここでお客様と議論になると、話はこじれてしまいます。ですから、商談序盤での議論を避けるために、プレゼンテーションではお客様の意見にいったん同意してください。そして、最後のクロージングのときに、その意見を覆すのです。
お客様の意見は、契約と関係のない意見と契約から遠ざかろうとする意見の2種類に分けられます。契約から遠ざかろうとするお客様の意見に対しては、きっちり覆すこと。契約とは関係のない意見には100%同意してください。リアクションも大きく取り、お客様を気持ちよくしゃべらせます。
話し上手より聞き上手。お客様はしゃべればしゃべるほど、心がほぐれてきて、私たち営業マンの要求を受け入れやすくなるのです。