(本記事は、堀口龍介の著書『1分で売る 最小の労力で成果を最大化させる「AI時代の即決営業」』冬至書房の中から一部を抜粋・編集しています)

「考えます」がなくなる3つの伝え方

相手に決断を約束させる方法
(画像=PIXTA)

これから紹介する「先回り」という技術は、お客様に「考えます」を言いにくくさせる技術です。

具体的に言うと、最悪の状況に対して準備をしておくことです。例えば、雨が降りそうなときに、傘を持って家を出る。これも先回りです。雨に降られてずぶ濡れになるのが最悪の状況ですよね。傘を持って家を出ることで、最悪の状況を回避できるわけです。

私も企業研修やセミナーで、「携帯の電源はオフにしてください」と事前に言っておきます。これも先回りです。相手にしてほしくない行動を事前に告知しておくこと。これを「先回り」と言います。

では、営業における最悪の状況とは何でしょうか。それは、お客様に「考えます」と逃げられてしまうことです。お客様に「考えます」というセリフを言わせないためには、アポイントの段階で、事前に「考えますは言わないで!」と告知しておくことが重要です。みなさんも、お客様にアポイントを取ると思います。「明日の午後2時にお伺いします」「明後日の午後3時に会社にお伺いします」とアポイントを取った直後に「先回り」のフレーズを言ってください。伝えることは3つです。

ひとつは、「話を聞いて気に入らなかったら、断っていただいてもかまいません」と伝えてください。2つ目は、「話を聞いて、もし気に入ったら、ぜひこの機会にスタートしてください」と言います。それに対して、お客様が「はい」と返事をしたら、3つ目「よろしいですか?」と念押しをしてください。

これで約束が成立しました。「話を聞いて、もし気に入らなかったら断ってもらう。もし気に入ったら契約してもらう」という約束が設定されたわけです。

アポイントの段階で事前にした約束のことを「前提条件」と言います。サッカーで言うと「ゴールキーパー以外は手を使ってはいけません」、バスケットボールで言うと「ボールを持ったまま3歩以上歩いてはいけません」など、はじめから決められた前提のことです。

物事には、はじめから決められた前提条件があります。営業も同じです。プレゼンテーションをする側も、受ける側も、貴重な時間を割いています。私たち営業マン側からすれば、交通費も自腹で、さらに無料で説明に行くわけです。もちろん、商品を試していただいて、気に入らなかったら、断っていただいてもかまいません。ただ、答えはください。それだけのことです。

私たち営業マンの事前告知に対して、お客様が「はい」と返事をしたのであれば、私たちの無料説明に対して、お客様は買うのか買わないのかを答えなければいけません。それが、最初からの約束です。前提条件だからです。

納得できないオーラがお客様の背中を押す

この説明をすると、「『考えますは前提違反だ!』とお客様に言ったら、お客様と喧嘩になってしまうんじゃないですか?」と思う人もいるかもしれません。確かに、その通りです。お客様と喧嘩になってしまっては、取れる契約も取れなくなってしまいます。

ですから、「お客様を責めろ」とか「話の筋道をお客様に説教しろ」とか言っているのではありません。「先回り」で「前提条件」をお客様にきっちり伝えたという事実が、あなたの強いクロージングにつながるのです。

アポイントの段階で、事前に先回りを仕掛けたあなた自身は、その前提条件をしっかりと認識しているはずです。すると、お客様の曖昧な「考えます」に対して、あなたは憤りを感じると思います。「無料で説明を聞いて、試しに商品を使ったのに答えを言わない。それはないよね」「前提条件はしっかり設定したよね」という納得できない気持ちが生まれるはずです。

その納得できないあなたの気持ち、その納得できないオーラがお客様を押すのです。お客様は、あなたの話を耳だけで聞いているのではありません。あなたの表情、声色、態度など、あなたの発するエネルギーのすべてをお客様は五感で感じているのです。あなたの思い、あなたのオーラは、お客様に必ず影響を与えます。

この「先回り」の技術は、営業職だけではなく、さまざまな人間関係においても応用することができます。

例えば、恋愛で考えてみましょう。みなさんは、恋愛恐怖症という言葉を聞いたことがあると思います。この恋愛恐怖症は、35歳以上の未婚女性に多いと言われています。恋愛恐怖症の女性たちは、いったい何を恐れているのでしょうか。それは、男性の曖昧な答えです。交際しても結婚するのかしないのか、はっきりしない男性の態度を恐れているのです。

まさに私たち営業マンが、お客様の曖昧な「考えます」に苛立ちを感じるのとよく似ています。お付き合いはしたけれど、最終的には結婚に至らずに終わった。これが恋愛における女性側から見た最悪の状況です。でも、この「先回り」の技術を使えば、最悪の状況を回避できる可能性が高くなります。

「先回り」とは、相手にしてほしくない行動を事前に伝えることでしたね。つまり、相手の男性に「土壇場で曖昧な態度は取らないでね」と、お付き合いする前に伝えて念押ししておくわけです。

例えば、このような感じです。

「私も35歳なので、年齢的にも結婚を意識しています。なので、お付き合いして、合わないと思ったら、早めに言ってください。合わない人同士が結婚することはできないので、そのときはお別れしましょう。でも、1年付き合ってみて、もし気に入ったら結婚してね」

相手の男性が、その事前告知を承諾した上で交際が始まったのならば、その交際の前提条件は「1年付き合ってみて、もし気に入ったら契約(結婚)する」となります。

この「先回り」は、相手にしてほしくない行動を防ぐ上で、とても効果的です。恋愛においても、営業においても、話の前提条件を設定しておくことは、すごく大事なポイントなのです。「無料で話をする代わりに、答えはくださいね」という大義名分が、あなたのエネルギーを強くしてくれます。

お客様の答えは、3つしかありません。「買います」「買いません」、そして「考えます」の3つです。この3つの中の「考えます」を封じ込めるだけで、あなたの成約率は大幅に上がります。

「考えます」は、「先回り」で封じ込める。「前提条件」をしっかり設定して、お客様に「考えます」を言わせないようにしてください。そうすれば、買うのか買わないのか、その場でケリがつく可能性が高くなります。

1分で売る 最小の労力で成果を最大化させる「AI時代の即決営」
著者:堀口龍介
1976年大阪生まれ。別名「セールス堀口」。有名企業をはじめ、トップセールスを目指す営業パーソンに対して、お客様の「考えます」の攻略に特化した業界唯一のメソッドを提供。メディア出演多数。 営業本ランキング1位を獲得した著書『即決営業』/『1分で売る』では、商談の「その日その場」で契約を取るための、とことん具体的なノウハウが学べる。「今日から使える営業本」として口コミで広がり続けている。YouTube再生回数は100万回を突破

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