(本記事は、堀口龍介の著書『1分で売る 最小の労力で成果を最大化させる「AI時代の即決営業」』冬至書房の中から一部を抜粋・編集しています)
「AI時代の即決営業」』シリーズ
悩みや問題を顕在化させる質問
営業の世界では、「ニーズは与えずに引き出せ」ということがよく言われています。ニーズとは、お客様の悩みや問題のこと。「この問題を解決したい」「○○で悩んでいる」 といった悩みをお客様の口から引き出せるかどうかが、プレゼンテーション前の最初の壁になります。
もし、お客様からニーズを引き出す前にプレゼンテーションに入ってしまったら、お客様の警戒心が強まります。すると、あなたの成約率は大幅に下がってしまいます。
次のような経験はないでしょうか。あなたが服屋さんに入っていったとき、呼んでもいないのに、店員さんがあなたの側に寄ってきた。それに対して、あなたはどう思ったでしょうか。
「げっ、こっちに来る」「逃げなきゃ」と思ったことはないでしょうか。
さらに、店員さんが「この服は、今年の最新モデルなんですよ」「イタリア製の本革仕様なんです」などと、いきなり商品説明をしてきたら、あなたはどう感じるでしょうか。
「いきなり何?」「ちょっと突然すぎない?」と思うのではないでしょうか。
あなたのお客様も同じです。悩みや問題が顕在化していない状態でプレゼンテーションに入られると、お客様の警戒心は強くなってしまうのです。
ですから、プレゼンテーションに入る前に、お客様のニーズを引き出しておくことが重要なのです。そもそも、営業とは問題解決業です。お客様の抱える問題や悩みに対しての解決策を商品として、お客様に提供する仕事なのです。
つまり、問題がないと解決できません。問題がなければ、私たち営業の仕事は成立しないわけです。ですから、まずは問題を発生させてください。プレゼンテーションに入る前にお客様の問題を引き出すわけです。
では、どうすれば、お客様の悩みや問題を引き出せるのでしょうか。 それは「質問」です。質問には、大きく分けて、「オープンエッション」と「クローズクエッション」の2種類があります。基本的に、質問される側からすれば、オープンクエッションよりもクローズクエッションのほうが答えやすいもの。
例えば、「あなたはどんな男性がタイプですか?」とオープンクエッションで(広い範囲で)質問されるよりも、「芸能人だと、どんな男性がタイプですか?」とクローズクエッションで(枠を狭めて)質問したほうが答えやすいのです。
芸能人の中でもさらに枠を狭めて、「ジャニーズだったら、誰がタイプですか?」と質問したほうが答えやすいですし、ジャニーズの中でも「嵐のメンバーだったら、誰がタイプですか?」嵐の中でも「櫻井君と松本君、どっちがタイプですか?」と、さらに枠を狭めたほうが答えやすくなるのです。
このように、質問の枠を狭めてクローズしていく質問が「クローズクエッション」です。
質問対象を限定すればするほど相手は答えやすい
この「クローズクエッション」よりも、さらに枠を狭めた「限定質問」という技術があります。限定質問とは、読んで字のごとく、質問対象を限定する質問です。
例えば、「あなたは嵐の櫻井君はタイプですか?」「あなたは嵐の松本君はタイプですか?」のように、質問対象を限定することで質問された相手は答えを出しやすくなるのです。
この限定質問の技術は、お客様の悩みを引き出すために使います。まず、あなたが引き出したいお客様の悩みを、想定できる範囲でいいので、洗い出せる だけ洗い出します。
例えば、ダイエット商品を販売している営業マンだったら、「お腹まわりの肉」「足を細くしたい」「内臓脂肪」「食欲を抑えたい」「基礎代謝量の低下」「老化」「リバウンド」「二重あご」……など、さまざまな悩みを洗い出せます。
このような悩みをあなたの商品に当てはめて洗い出すわけです。そして、洗い出した悩みを限定質問に変えて、お客様に質問していきます。例えば、次のような感じです。
「お腹まわりの肉で悩んでいる人が多いのですが、○○様はお腹まわりの肉でお悩みなどはないでしょうか?」
これは、「お腹まわりの肉」の限定質問です。それに対して、お客様が「いやー、私は別にお腹まわりの肉で悩んでいないのよね」と返事をしてきたら、すぐに別の限定質問に移ります。
「お悩みではないのですね。ありがとうございます。ただですね、足を細くしたいということで悩んでいる方が多いのですが、○○様は足を細くしたいというお悩みはないでしょうか?」
このように、お客様がNOの返答をしてきたら、「サンキュー・バット」の技術を使って、別の限定質問に移ります。
「サンキュー・バット」とは、相手の主張を復唱して、感謝の気持ちを述べます。それから、別の主張をする話法です。ここでは、「お悩みではないのですね。ありがとうございます」と復唱と感謝を述べてから、「ただですね……」とつなげていきます。
いきなり「ただですね……」と切り返すよりも、一度お客様に感謝することで、次の話題への移行が受け入れられやすくなるのです。それでも、またお客様が「いやー、別に足を細くしたいとか悩んでいないのよね」とNOの返答をしてきたとしても、また「サンキュー・バット」の技術を使って、別の限定質問をしていきます。
「お悩みではないのですね。足細いですもんね。ありがとうございます。ただですね、内臓脂肪で悩んでいる方もかなり多いのですが、○○様は内臓脂肪でお悩みではないですか?」
「あ、私、先日の健康診断で、内臓脂肪要注意って言われたのよ」
「え?内臓脂肪要注意って言われたんですか?」
「そうなんですよ」
「そうなんですね」
今、この瞬間にお客様の悩みが引き出せたことになります。「内臓脂肪要注意」という問題が発生したわけです。ここではじめて、営業マンは、その問題に対する解決策を商品として提案できるわけです。
「内臓脂肪が高いと、生活習慣病になる確率が○○%高くなります。そして、内臓脂肪が高い人のために作られたのが、この○○という商品なんです」
繰り返しになりますが、営業の世界では、「ニーズは与えずに引き出せ」が基本です。ニーズを引き出す前に商品説明に入ってしまうと、あなたの成約率は大幅に下がります。プレゼンテーションに入る前に、お客様のニーズをしっかりと引き出しておくことが、あなたの成約率向上につながるのです。