ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王が11月に来日することが決まりました。ローマ法王の来日は1981年のヨハネ・パウロ2世以来2回目となります。広島・長崎の被爆地への訪問など来日の予定と、世界への絶大な影響力の背景を解説します。

被爆地など訪問

ローマ法王,来日
(画像=Stefano Guidi/Shutterstock.com)

ローマ法王は2019年11月23日~26日の日程で来日します。23日に東京に到着し、24日には長崎を訪れて、爆心地公園で核兵器の廃絶に向けたメッセージを発信する予定です。また長崎では、豊臣秀吉による迫害で処刑された「日本26聖人」殉教の地であり、法王の出身修道会「イエズス会」とゆかりの深い西坂公園を訪れて祈りを捧げるほか、県営野球場でミサを執り行います。その後広島で平和記念公園を訪れ、平和についての集会を開いて、スピーチを行うとのことです。

25日には東京で天皇陛下との会見や安倍首相との会談、東日本大震災の被災者との面会が予定されています。東京ドームで大規模なミサを行い、26日に帰国の途に就きます。

法王が核廃絶を訴える意義

法王が被爆地への訪問でどのようなメッセージを打ち出すのかが注目されています。法王は核兵器の脅威を繰り返し訴えてきました。原爆投下後の長崎で撮影された写真「焼き場に立つ少年」をカードに印刷し、「戦争がもたらすもの」というメッセージを添えて配ったことでも話題になりました。

バチカンは、2017年に国連で採択された核兵器禁止条約にいち早く批准するなど、核廃絶に向けて積極的な取り組みを続けています。被爆地からは、「平和へのメッセージを発信してほしい」と願う声が上がっています。

カトリック教会関係者がこれまでに明らかにしたところによると、法王は被爆地で、核兵器は使用だけでなく製造も含めて「非倫理的」だと非難し、核廃絶を強く訴える意向とのことです。核兵器禁止条約は、核兵器を「非人道的」などと批判していますが、非人道的であるだけでなく、カトリックの教えにも反するより深刻な問題をはらんでいることを法王は訴えようとしているのではないかと関係者は指摘しています。国際政治としてではなく、法王の立場で、核に反対する姿勢を鮮明にする狙いがあるとみられています。

世界では核拡散のリスクがいまだに消えていません。米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約は失効し、両国間の核軍縮の取り組みが不透明になる中、北朝鮮やイランによる核開発、テロ組織や武装集団による核兵器使用への危機感もあります。急速な経済成長を背景に軍事力を高める中国は、核戦力を増強する兆しがみられるとして、米国が警戒感を強めています。

このように世界で核軍縮が後退する現状が憂慮される中、世界に約12億人の信者を抱えるカトリック教会の頂点に立つ法王が、唯一の被爆国である日本から核問題の深刻さや核廃絶を訴える意義と影響は非常に大きいといえます。

絶大な影響力

法王は世界のカトリック教徒のトップ、「神の代理人」として絶大な権威と発信力を持つとともに、バチカン市国の国家元首でもあります。バチカンは面積が皇居の4割弱ほどという世界最小の国家でありながら、大規模なカトリック人口と、世界に張りめぐらされた情報網を背景に、キリスト教以外の国際社会でも非常に大きな影響力を持っています。

過去の紛争や危機の解決にも少なからぬ影響力を発揮してきました。1981年に来日したヨハネ・パウロ2世は、「ベルリンの壁」崩壊で重要な役割を果たしたとされています。初の中南米出身の法王であるフランシスコは、米国とキューバの54年ぶりとなる国交回復を仲介しました。

法王来日を機に、日本は外交などでバチカンとの協力関係を一層強化することが期待されています。軍事力よりも外交で平和を追求する上で連携できる可能性があるなど、日本の外交に大きなメリットをもたらすかもしれません。(提供:JPRIME


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