総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」によれば、日本人は減少し続けているのに対し、外国人が急速に増加している。2019年1月1日時点の人口は、日本人が前年から約43万人減少したのに対し、外国人は約17万人増加した。特に、若年層(15歳~29歳)と中壮年層(30歳~64歳)では、2014年を100とした時、外国人の若年層は159、中壮年層も121となり、大きく増加している。
外国人の増加要因として、外国人労働者と留学生の大幅な増加が挙げられる。厚生労働省「外国人雇用状況」によれば、外国人労働者数は、2013年度の約72万人から、2018年度には約146 万人へと約2倍に増加した。2019年4月に出入国管理法が改正され、今後5年間で最大34万人の外国人労働者の受け入れが見込まれている。また、日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査結果」によれば、外国人留学生も、2013年度の約16.8万人から、2018年度には約29.9万人へと大きく増加した(2013年度対比78%増加)。2008年に、政府は2020年までに留学生を30万人まで増やす方針を示していたが、既に目標をほぼ達成したことになる。
都道府県毎の外国人増加率(2014年から2019年)をみると、若年層の増加率が最も高い都道府県は沖縄県(148%増)であり、次いで福島県(136%増)であった。50%以上増加した都道府県は、32にのぼる(図表1・左図)。また、中壮年層の増加率が最も高い都道府県は島根県(62%増)であり、次いで北海道(55%増)であった(図表1・右図)。首都圏だけなく、地方でも外国人が大幅に増加していることが分かる。
一方で、「住まい」に関する外国人受け入れの体制は整っていない。2019年6月公表の総務省「高度外国人材の受入れに関する政策評価 政策評価書」によれば、日本で勤務している外国人や留学生が「日本での生活環境の短所や困っている点」として最も多かった回答は「住宅の確保が困難」であった(図表2)。具体的な事例として、「外国人が借りられる住居が少ない」や「住居を借りる際に保証人を求められることが多い」等が挙がっている。
これに対し、行政機関の対応もまだ十分ではない。日本経済新聞社が2018年11月から12月にかけて実施した調査によれば(1)、外国人が住まいを確保するための「居住支援や入居差別の解消」の支援を実施している自治体は26%に留まっている。
また、国土交通省が不動産事業者を対象に実施した「不動産売買・賃貸業務における外国人対応に関する調査」(2015年10月~11月)によれば、外国人向けに物件資料を作成している事業者は2割未満に留まった。また、「外国人客に対する対応マニュアルは整備していない。整備する予定はない」と回答した事業者が8割以上を占めており、不動産仲介現場での外国人客の対応にも、不十分な部分が見られる。
こうしたなか、国土交通省は2017年8月に「不動産事業者のための国際対応実務マニュアル」を公表し、外国人の居住を支援する動きが始まっている。また、空き家を活用し、外国人に住居を提供する動きもみられる。マーチャント・バンカーズ(株)は、空き家を外国人就労者向けの社宅に開発して提供する事業を開始した。また、京浜急行電鉄(株)、横浜市金沢区、横浜市立大学は共同で、空き家のアパートを大規模改修し、留学生をターゲットとしたシェアハウスを開設した。
今後も、外国人労働者や留学の流入は続くと見込まれ、特に、住宅市場や労働需給等に大きな影響を及ぼす若年層と中壮年層ではその存在感は急速に高まっている。外国人の住居に関する不安の解消は課題の1つであり、行政をはじめとして、安定した住居の確保に対する支援が進むことが望まれている。住宅投資を考える上でも、居住支援の今後の取り組みを注視したい。
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(1)「外国人共生、支援に遅れ 主要市区に専門窓口なし6割」日本経済新聞電子版 2019年2月8日
吉田資 (よしだ たすく)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員・総合政策研究部兼任
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