所得が多くなればなるほど気になるのが「税金」です。ここで必要になるのが節税策ですが、取るべき対策は所得額によって異なります。今回は、年収3,000万円を稼ぐ方向けの節税対策をご紹介します。

年収3,000万円と年収1,000万円では節税策が異なる

金融
(画像=takasu/stock.adobe.com)

経営者や医師には年収3,000万円以上稼いでいるというケースが珍しくありません。ここで悩みの種となるのが節税です。というのも、書籍や雑誌、インターネットで話題となる節税策の多くは年収1,000万円前後までの方を対象としているからです。

よく知られた節税策の一つに配偶者控除というものがあります。「配偶者の年間の所得額が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)ならば、納税者の合計所得金額から一律38万円を差し引ける」という内容は多くの方がご存じでしょう。ただ、2018年分以降、控除納税者本人の年間の合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除を受けることはできなくなりました。

このような「所得制限つきの節税策」は他にもあります。例えば、次のようなものです。

・住宅取得等資金の贈与税の非課税:贈与を受けた年分の合計所得額2,000万円以下が条件

・所得税の住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除):控除を受ける年分の合計所得金額3,000万円以下が条件

ふるさと納税などの活用も寄付金控除という制度を用いた節税策の一つですが、こちらも寄付した金額が全額控除されるわけではありません。所得額を基準とした枠内で寄付をしないと損になる点を留意しておくとよいでしょう。

年収3,000万円サラリーマン向け 具体的な節税対策

では、年収3,000万円を稼ぐ人に適した節税策はどのようなものでしょうか。

1.不動産投資で課税所得を抑える

年収3000万円の方に向けた節税対策として、不動産投資を活用する方法は非常に効果的です。不動産投資では、購入した物件の減価償却費や、ローンの利息支払い、管理費や修繕費など、多くの経費が税務上の損失として計上できます。これにより、課税所得を抑えることが可能になります。

具体的には、不動産の減価償却費を計上することで、その物件が時間とともに価値が下がることを反映し、税務上の利益を減少させることができます。また、不動産を購入する際に発生する融資の利息も経費として認められるため、これを利用することで所得をさらに圧縮することができます。

さらに、不動産投資では、購入後の維持管理にかかるコストも経費として計上することができるため、これらを適切に管理することで税負担を軽減することが可能です。これにより、年収が高い方でも効果的に税負担を減らすことができるため、節税対策として非常に有効です。

不動産投資を通じて節税を行う際には、適切な物件選びや、税務に関する知識が必要となりますので、専門の税理士や不動産コンサルタントと協力しながら計画を立てることをお勧めします。

2.資産管理会社(法人)の設立を検討する

年収3000万円の高額所得者にとって、資産管理会社(法人)の設立は非常に効果的です。資産管理会社を設立することで、個人の所得と法人の所得を分け、税負担を最適化することが可能になります。

資産管理会社を設立する最大のメリットは、法人税率が個人の所得税率よりも一般的に低いことです。法人で発生した利益に対しては、法人税率が適用され、さらに適切な経費処理を行うことで課税所得を減らすことができます。たとえば、投資物件やその他の資産を会社名義で購入し、関連する経費(管理費、減価償却費、修繕費など)を会社の経費として計上することができます。

また、資産管理会社を通じて、給与や報酬を法人から個人へ支払うことで、所得を再分配し、個人の所得税負担を軽減することも可能です。さらに、会社を通じて家族を雇用することで、その給与も経費として計上できるため、全体の税負担をさらに抑えることができます。

資産管理会社の設立には、適切な会計知識と税務知識が必要ですので、専門の税理士や会計士と連携し、設立前の計画から運用、税務申告に至るまで専門的なアドバイスを受けることが重要です。このような戦略を通じて、資産を効果的に保護し、税負担を最小限に抑えることが可能になります。

3.iDeCoで老後資産を形成しながら課税所得を抑える

iDeCo(個人型確定拠出年金)を活用することは、老後資産を形成しながら課税所得を効果的に抑える節税対策の一つです。iDeCoは、加入者が自ら選んだ投資商品に毎月一定額を積み立てる私的年金制度で、その大きな魅力は税制面の優遇にあります。

まず、iDeCoへの拠出金は全額所得控除の対象となるため、その分だけ年間の課税所得が減少します。例えば、年間に最大で拠出できる金額(年収によって異なるが、自営業者などは最大68万円)をiDeCoに拠出することで、その金額だけ所得が減少し、所得税及び住民税の負担が軽減されます。

さらに、iDeCoの口座内で発生した運用益(キャピタルゲインや配当)に対しては税金が非課税となります。このため、投資成果を最大限に活用し、長期的な資産形成を図ることができるのです。そして、受け取り時には一定の条件下で公的年金と同様に所得税が低減されるため、効率的に資産を引き出すことが可能です。

加入資格 拠出限度額
第1号被保険者
(自営業者など)
月額6.8万円
(国民年金基金の掛金、または国民年金の付加保険料と合算した金額)
第2号被保険者
(会社員、公務員など)
会社に企業年金がない会社員 月額2.3万円
企業型確定拠出年金のみに加入している会社員 月額2.0万円
DB(確定給付企業年金など)、企業型確定拠出年金に加入している会社員 月額1.2万円
DBのみに加入している会社員
公務員
第3号被保険者(専業主婦(夫)) 月額2.3万円

4.NISAを使って非課税枠内で投資をする(少額投資非課税制度)

投資による収益を非課税で得る手段として、NISA(少額投資非課税制度)の利用は非常に有効です。NISAは、特定の金融商品への投資に対して、一定期間、その収益(キャピタルゲインや配当金)に対する税金が非課税になる制度です。

2024年からの新NISAでは、従来のNISAとつみたてNISAを統合し、より使いやすく、投資しやすい制度へと改変されました。主な変更点は以下の通りです。

非課税保有期間が無期限化: 従来のNISAは5年、つみたてNISAは20年でしたが、新NISAでは保有期間の制限が撤廃されました。つまり、売却せずに保有し続ければ、ずっと非課税で運用することが可能です。

年間投資上限額の引き上げ: 従来のNISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円でしたが、新NISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠をそれぞれ年間240万円と120万円に引き上げ、合計で年間360万円まで投資できるようになりました。 生涯投資上限額の導入: 新NISAでは、生涯を通じて投資できる金額に上限が設けられました。1人あたり1,800万円までとなり、この上限額に達すると、非課税枠がなくなります。

投資商品の選択肢が広がった: 従来のNISAでは、投資対象となる金融商品が限定されていましたが、新NISAでは、上場株式、投資信託、REIT、ETFなど、幅広い金融商品に投資できるようになりました。

参考情報 金融庁 NISA 特設ウェブサイト: https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/

高額所得者にとって、NISAを利用することのメリットは、投資利益を非課税で再投資できることにより、複利効果を最大限に活用できる点にあります。例えば、株式や投資信託などの金融商品に投資を行い、得られた利益を再び投資に回すことで、税負担の影響を受けることなく資産を増やすことが可能です。

NISAを活用する際は、投資対象となる金融商品の選定が重要です。リスクの管理とポートフォリオのバランスを考えながら、自分の投資目標に合った商品を選ぶことが求められます。また、NISA口座は他の投資口座とは異なる特性を持っているため、税制の詳細や運用ルールをよく理解しておくことが大切です。

このようにNISAを利用することで、高額所得者でも効率的に節税しながら資産を形成していくことができ、老後の資金準備にもつながります。投資を行う際は専門家と相談しながら、最適な戦略を立てることが推奨されます。

項目内容
口座を開設できる人日本在住の18歳以上の人
非課税対象となる利益成長投資枠:一定の株式・投資信託等
つみたて投資枠:つみたてNISAと同様
開設できる口座数1人1口座
年間非課税投資枠成長投資枠:240万円
つみたて投資枠:120万円
非課税期間無制限
障害の非課税枠1800万円(成長投資枠は1200万円まで)
金融庁のページをもとに筆者作成

5.ふるさと納税でお得に返礼品をもらう

ふるさと納税は魅力的な節税対策の一つです。ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄付を行うことで、その額ほぼ全額が所得税や住民税から控除される制度です。さらに、寄付をした自治体からは感謝の気持ちとして返礼品がもらえるため、実質的に少額の負担で様々な特産品を受け取ることができます。

特に高額所得者の場合、寄付による税額控除の上限が高くなるため、大きな節税効果が期待できます。ふるさと納税の寄付金控除には一定の限度額がありますが、年収に応じて計算され、控除額が大きくなるほど、その節税効果も高まります。

返礼品は、肉類、海産物、地酒、伝統工芸品など多岐にわたります。自治体によっては高級食材や地域の特別な商品を返礼品として用意しているため、寄付を通じて地域の特色ある商品を楽しむことが可能です。このシステムを利用することで、財政的なサポートを地方に提供しながら、自分自身もお得に特産品を受け取ることができるわけです。

ふるさと納税を行う際は、返礼品の内容や価値、寄付先の自治体が提供する条件などをよく確認することが大切です。また、寄付した金額に見合った適切な返礼品を選ぶことで、最大限の満足を得ることが可能になります。この制度を上手く利用し、節税と地方支援の両方を実現させましょう。

ふるさと納税のステップ

  1. 寄付先自治体を選ぶ 寄付金の使い道: 寄付金は、教育、福祉、まちづくりなど、様々な分野に活用されます。 返礼品: 寄付額に応じて、様々な返礼品が用意されています。 その他: 自治体によっては、住民票のある都道府県以外への寄付を受け付けていない場合もあります。

  2. 寄付をする 寄付金の額: 寄付金の額には、上限があります。詳しくは、総務省のホームページなどで確認できます。 ワンストップ特例制度: ワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告の手続きが簡略化されます。 ワンストップ特例制度を利用するには、寄付時に申請する必要があります。

  3. 寄附金控除を受ける 確定申告: 翌年の確定申告で、寄付金控除を受けることができます。 確定申告には、寄付先自治体から送られてくる「寄附金受領証明書」が必要になります。 ワンストップ特例制度: ワンストップ特例制度を利用した場合は、確定申告は不要です。 ただし、住民税の特別控除を受けるためには、各自治体に申請する必要があります。

ふるさと納税に関する情報 総務省 ふるさと納税ポータルサイト: https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html

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