(本記事は、阿部George雅行氏の著書『 BQ−身体知能−リーダーシップ』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
組織としての業績向上にもBQが必要
BQ(Body Intelligence Quotient=身体知能)と、それを構成する6つのT(体調、体力、体質、体形、体勢、体動)が、個人の生産性向上に及ぼす影響については概おおむね解説してきた。ここからは組織として、いかにしてBQを高める取り組みを行っていくべきかを説明していく。
実は、本書で一番お伝えしたいことはBQの高い組織づくりの重要性の浸透と、そのために必要なリーダーシップ論にある。そのわけを腹落ちしてもらうために、私が企業でコンサルティングやセミナーを行ってきたクライアントにありがちなパターンを、段階的に述べてみよう。
1 従業員の健康には興味はあるものの、あくまでも「個人の問題」としてしか捉えておらず、会社としては「健康診断を受けるように」など、注意喚起に留める程度のケース。
2 あくまでも会社で負担する健康保険の医療費削減というコスト面のみに注目しているケース。
3 健康経営を「働き方改革」(主に残業規制や有給休暇の消化)の一環として捉え、イメージアップ戦略として着手し、従業員の健康を考慮する企業であることをアピールするために(ブラック企業とは思われたくないなど)実践しているケース。
4 資金的に余裕のある場合であれば栄養士などを採用して、社員食堂のランチを健康的なメニューに変えたり、スポーツジムの費用を一部負担したり、健康診断のほかに人間ドックの費用を一部負担するなど、福利厚生の充実を図るケース。
多くの企業が、この4つめのパターンまでに留まってしまっているのが現状である。もちろん、福利厚生が手厚いことは悪いことではないし、むしろ従業員の健康をサポートする意味では重要であることは間違いない。
しかし、何度も述べるように、健康経営の真の目的は、アブセンティズムやプレゼンティズムにかかる生産性の低下というマイナスのコストを減らし、これまで以上にパフォーマンスを発揮して活き活きと働く環境をつくっていくことにある。
働き方改革に代表される残業削減、健康経営に代表される福利厚生充実だけではまだまだ十分ではないということであり、その先にある社員一人ひとりの業務のパフォーマンス向上にフォーカスした取り組みにはまだまだ成長の余地があるということだ。
これまでのように生産性の公式全体にはメスを入れずに、単純に分母である残業時間削減を連呼するだけでは、現場は疲弊し、「残業代が減っただけ」と不満を持つ従業員が激増するだろう。従業員の残業代が減る分にはいいものの、副作用として売り上げが落ち、その対策として新たに従業員を雇うことになれば悪循環と言えよう。福利厚生も同様に会社の費用負担は決して少なくない。
リーダーによる健康経営の本質的な理解や重要性の浸透がなければ、従業員の不満は膨れ上がり、組織が疲弊し、売り上げが落ち、コストが上がるだけで、誰一人幸せにはなれない。
現場のリーダーがBQを高めることで従業員が健康になり、かつ仕事のパフォーマンスが上がれば、残業せずとも給料やボーナスアップという形でメリットがある。会社にとってもコスト削減と売り上げアップが同時に実現でき、従業員の会社へのエンゲージメントも高まるはずである。
社員の「健康」の実現は社員個人だけの問題ではない。また、健康経営は企業のイメージ戦略のためだけにあるものでもない。「社員の健康と会社の業績には強く関係がある」ことを現場のリーダーとして念頭において、まずはあなた自身が身近な自分のチーム内でBQリーダーシップを強く発揮していくことが第一歩であるのだ。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます