(本記事は、阿部George雅行氏の著書『 BQ−身体知能−リーダーシップ』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
あなたがとるべきリーダーシップとは
まずここで、「リーダー」と「リーダーシップ」について、意外と勘違いしている人が多いので明確にしておきたい。
リーダーとは、会社の経営者や役員などの「ポジション」を指す。一方、リーダーシップとは、ポジションではなく「スキル」である。
そう言うと「ではリーダーシップとは、経営層や役職クラスの人たちが身につけるべきスキルでしょう」と多くの人は考えがちだ。しかし、それは誤解である。リーダーシップとは本来、すべての人にとって必要かつ発揮すべきスキルと言える。すなわち年齢や役職やポジションに関係なく、部下がいない人でも新人でも、誰もが発揮すべきスキルがリーダーシップなのだ。
そして、リーダーシップとは、指導力や統率力などと表現され、ある目標の達成のために個人やチームに対して行動を促す力とも言われている。
BQリーダーシップをあなたが発揮する際の手順を、通常のリーダーシップにも使えるステップに沿って4段階で説明しよう。
STEP1 ビジョン
自分自身でビジョンや目的、目標を設定し、自ら動き、周囲をも動かすことができること
BQにおける最終的なビジョンとは、あなたやチームメンバーが仕事のパフォーマンスを高めるために必要な健康を手に入れることである。
STEP2 コミュニケーション
ビジョンをメンバー全員に対して、わかりやすく伝えること
単純にメタボの解消や体調不良の改善を目指そうと言ったところで、「個人の問題」と思われてしまう。あくまでも、目指すものはその先にある仕事のパフォーマンス向上に必要なBQの向上であることを、自分の言葉で明確に伝える必要がある(コーチング的な手法もコミュニケーションに含まれる)。
STEP3 メンバーの動機づけ
ビジョンが実現するように、チーム・メンバーのモチベーションを維持しながら励ますこと
BQに関してのビジョンを理解してスタートしたとしても、仕事が忙しくなかなかBQに向けた行動がとれないケースもある。また、モチベーションが継続せずに挫折してしまうメンバーが出てくるかもしれない。
そんなときこそメンバーのモチベーションがどのようなフェーズにあるかを分析して、段階に応じた働きかけをすることが必要だ。ときには危機感を覚えさせ、継続させるために褒賞を与え、エンパワーメントするなど、動機づけが継続できるようにメンバーとかかわっていくのだ。
STEP4 チームビルディング
一人では成し遂げられない目的や目標が達成できるチームを作り上げるということ
「WHAT・WHY・HOW」という問題発見解決のフレームワークをチームビルディングのプロセスでも用いることで、個人ではなくチームとしてもBQを高めていくことができる。
まずチームとしてありたい姿(To be=目標)、例えば「仕事のパフォーマンスを最大化しBQを高めるためのチーム作り」というビジョンを立てる。現状(=FACT)について個別に分析して、そのギャップを明確にする(WHAT)。そして、WHY(問題の原因)、HOW(解決に向けた対策)という順でプロセスを洗い出していく。
そのプロセスにおいて、メンバーが個々に6T(体調、体力、体質、体形、体勢、体動)のどの部分がパフォーマンス向上の阻害要因になっているのかを明確にしつつ自己開示と相互理解を繰り返していく。
例えば、チームの営業成績が不調な場合、その阻害要因(WHY)が体調なのか、体力なのか、体形なのか、体動なのかは人によって異なり、そうなれば必然的に解決のためのアプローチ(HOW)も違ったものになる。すべてのメンバーのWHYとHOWを明確にしたうえで、チームとして行動に移す必要がある。
そして、「タックマンモデル」などのフレームワークを用いて「チームビルディング」を行いつつ、チーム全体でビジョン達成に向けて突き進むのである。
BQリーダーシップを発揮するための手順をBQを絡めてひととおり示したところで、次の項目からはリーダーシップに必要不可欠な要素を、基本に立ち返っておさらいしていこう。
まずは自身がBQを身につける
ここまで述べたリーダーシップにおける手順を確実に進めていくには、組織の大小にかかわらず、そして解決すべき問題のテーマに関係なく、以下の3つの力が必要だ。
(1)メンバーからの信頼を得る (2)明確なビジョンを持ち、チーム全体に提示する (3)メンバー個人やチーム全体の状況を管理・指導する
(2)と(3)についてはすでに前段で述べた。では、(1)の信頼を得るにはどうすべきか。特に、若手が周囲にリーダーシップを発揮するには、信頼感なくしてなし得ることはできない。
そのヒントとなるのが、「セルフリーダーシップ(自己統制力)」である。周囲に対してリーダーシップを発揮するのではなく、自らを高めるために用いるものだ。それは、自ら目標を立てて、現実とのギャップを捉え、自分の将来のために自らをドライブして、自らの意思に基づいて正しい状況判断を行い、主体的に行動する力である。
企業研修などの人材育成の分野でもいまやセルフリーダーシップは必須の科目であり、筆者自身も、企業の新人研修や管理職研修、キャリア研修の場でよく扱っているテーマである。
個々のメンバーが自分自身にセルフリーダーシップを発揮し、将来目指すべき自分(ありたい姿)と現在の自分とを比較し、その差を客観的に分析(WHAT)する。そのうえで自らの夢や理想に到達するための阻害要因(WHY)と解決策(HOW)を考え実行する。
セルフリーダーシップを身につけ、発揮することで、メンバーから信頼を得ることにつながる。上司や先輩からの指示を待たずに主体的に仕事を進め、仕事に対する責任感や使命感を強く持ち続けていれば、メンバーからの信頼感は自ずと高まる。
プライベートにおいても、「友人から飲み会の誘いがあったけど、取引先との接待が続いて睡眠不足だからやめておこう」とか「昨日はあまり歩かなかったから、今日は2駅前で降りて1万歩を目指そう」などBQ改善に向けた取り組みに対して自己統制できている姿にメンバーからの信頼感は当然増すだろう。
自ら描く夢や目標達成に向けて最大の努力をし、実現する能力こそがセルフリーダーシップのポイント。これが周囲への模範となり、信頼感の醸成につながるのだ。
リーダーというポジションであればなおさら、セルフリーダーシップなくしてチームやメンバーの信頼を得ることは難しい。
「メタボ解消のためにウォーキングを推奨する」「従業員の健康のために禁煙運動を推進する」「質の良い睡眠のために休肝日をもうけよう」など理想を述べ、実行するようにメンバーに伝えたところで、リーダー自らが喫煙していたら説得力はなく、周囲からの信頼は得られるわけがないのである。
例えば役員クラスを対象とした健康経営セミナーを行う場合によくあるパターンだが、人事部からは「禁煙を推奨しようと考えている」「健康診断の全員受診とメタボ対策を掲げている」と言われるものの、その会社の役員からは「実はタバコがやめられなくて……」「自分のメタボはしょうがない」と言われる残念なパターンだ。
そんなときは、私は「あなたたちができないことを部下たちが率先してやるわけはありません」とはっきり申し上げている。
リーダー自らが率先垂範してBQセルフリーダーシップを実行し周囲を巻き込んでいく。つまり、新人、若手、ベテラン、役員、経営者などポジションに関係なく発揮するべきスキルがBQリーダーシップおよびBQセルフリーダーシップなのである。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます