要旨

日銀,不動産価格,REIT
(画像=(写真=PIXTA))
  1. 12月短観では、大企業製造業の業況判断D.I.が0と前回調査から5ポイント低下し、4四半期連続での景況感悪化が示された。D.I.の水準は、異次元緩和開始前の2013年3月調査以来の低水準にあたる。また、大企業非製造業も2四半期連続で景況感が悪化した。大企業製造業では、米中貿易摩擦等に伴う海外経済の減速が続くなか、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減と台風の影響が加わったことで三重苦の様相となり、景況感が明確に悪化した。前回調査以降、円安やITサイクルの底入れ感など一部前向きな材料もあったものの、こうした悪材料の影響を相殺するには力不足だった。大企業非製造業も消費増税や台風19号による営業休止などを受けて景況感が悪化したが、政府による増税対策の効果もあって、弱含み程度で踏みとどまった。
  2. 先行きの景況感にも持ち直しは見られなかった。秋以降、米中貿易摩擦に緩和の動きが現れているほか、ITサイクル回復への期待もあるものの、海外経済を巡る不透明感が根強いことから、製造業の先行きに持ち直しはみられなかった。非製造業でも、前回の消費増税後のように内需回復の遅れが懸念されているとみられ、先行きにかけて景況感の悪化が見込まれている。
  3. 2019年度の設備投資計画は前年比3.3%増へと上方修正された。例年12月調査では、中小企業で計画が具体化してくることによって上方修正されるクセが強いが、今回の上方修正幅は例年同時期と比べて大差はない。海外経済の減速や米中貿易摩擦等による事業環境の先行き不透明感によって、一部企業では設備投資を見合わせたる動きが発生しているとみられる。ただし、人手不足に伴う省力化投資や情報化対応投資、都市再開発関連投資、老朽化設備の更新投資といった景気との関連が薄い投資需要が下支えになることで、全体として力強さを増しているわけではないものの、底堅さは維持されている。
日銀短観(12月調査)
(画像=ニッセイ基礎研究所)