“人がもっと幸せになれる未来”のために

ヤマハ発動機
(画像=THE21オンラインより)

10月24日(木)~11月4日(月・祝)の期間、東京ビックサイトで「第46回東京モーターショー2019」が開催されている。「東京モーターショー」は、国内外の自動車・二輪車に関係するメーカーが、ニューモデルや未来の事業を指し示すコンセプトモデルを発表する場として毎年大きな注目を集めているが、その中でもヤマハ発動機の展示は異彩を放っている。いうまでもなく、日本を代表する二輪車メーカーの一つである「ヤマハ」だが、会場で目にするのは二輪車だけではない。レーシングマシンや、オフロードバイクの最新モデルとともに、前輪が二つ、後輪が一つの「LMW(※)」や、走破性を高めた4輪の福祉車両、またAIによって自律移動する“陸上ドローン”のコンセプトモデルなど、「モビリティ」という言葉で総称される“人の生活をより快適に便利にする移動マシン”が多数展示されているのだ。ほかの企業にはないユニークなモノづくりで知られる同社は、「未来の移動体」をどう描いていくのかを取材した。

※LMWとは、モーターサイクルのようにリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の総称

ロボティクスとモビリティ技術の融合

「東京モーターショー」の本開催に先立って行われたプレスカンファレンスでは、同社の代表取締役社長・日高祥博氏が登壇。日高氏が乗って現われたのは、前回の東京モーターショーで発表した『TRITOWN(トリタウン)』だ。LMWを採用し、ライダー自身のバランスコントロールで姿勢制御を行ない、誰でも簡単に操作できる「ラストワンマイル」に特化したモビリティとして、実用化に向けた実証実験を重ねているという。

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「ラストワンマイル」にニーズを満たす『TRITOWN(トリタウン)』。「移動の便利さ、快適さ」を追求しつつ「楽しさ」を加えるのが「ヤマハらしさ」(画像=THE21オンライン)

日高社長はヤマハ発動機の長期ビジョンとして、「ART for Human Possibilities」という言葉を上げる。「ART」とは、「Advancing Robotics」「Rethinking Solution」「Transforming Mobility」の3つのキーワードの頭文字を合わせたもので、「ロボティクスを活用し、社会課題にヤマハらしく取り組み、モビリティに変革をもたらす」というこれからのヤマハ発動機のコンセプトを表わしている。

「様々な交通機関や交通手段が発展するこれからの時代だからこそ、人々の心に訴える『ヤマハブランドの感性』がますますその価値を高めていくだろう」と語る日高氏。「“人を主役としたモビリティの正しい未来”をしっかり描いていきたい」と意気込みを語る。

その未来のモビリティ姿の一例として紹介されたのが、『Land Link Concept(ランドリンクコンセプト)』だ。「自律ソリューションビークル」で、「LINK=呼応し合う」のコンセプトが示す通り、AI画像認識により周囲をセンシングしながら、自ら走路を判断。それぞれが操舵・駆動可能な4つの車輪により、障害物を検知しつつ方向を問わない移動を実現し、高い機動力と人と一緒に作業するために必要な「器用さ」を両立させるという。

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『Land Link Concept(ランドリンクコンセプト)』は“陸上のドローン”。広大な農場での自律した運搬作業など、様々な用途が考えられそうだ(画像=THE21オンライン)

25年の実績を持つEVのパイオニアとして

続いて日高社長が紹介したのが、ヤマハ発動機が得意とするEVの新モデルだ。1993年に世界初の電動アシスト自転車『PAS(パス)』を世に送り出し、2002年には電動コミューター『PASSOL(パッソル)』を発売してきて以来、四半世紀にわたりEV二輪の世界を切り開いてきた。

紹介されたのは、『E01』と『E02』という二つのEVコミューター。前者はエンジン125ccに相当する出力を持ち、都市間を快適に移動できる余裕を持ちつつ、日常ユースでの上質な走りを実現させた。急速充電にも対応し、利便性も進化させている。後者の『E02(イー ゼロツー)』は、50ccエンジンに相当する出力を持つ次世代電動コミューター。小型・軽量で扱いやすいライトなボディに、手軽な着脱式のバッテリーを搭載し、電動ならではの滑らかでスムーズな走りを進化させつつ、毎日が楽しくなる走りの楽しさを実現した。いずれも、ヤマハらしいスポーティーさを感じさせるデザインだ。

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『E01』。都市間を快適に移動できる余裕のパワーと「ワンランク上の走り」がポイント(画像=THE21オンライン)
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『E02』。小型・軽量で着脱式バッテリーを採用し、EVのなめらかな走りをより身近に体験できる

走りに欠かせない「楽しさ」

次に日高社長が紹介したのは楽しく、エキサイティングな走りを実現する「ファンライド」領域の2モデル。『YZF-R1』は、ヤマハモーターサイクルのフラッグシップで、みなぎるパワーを高次元で制御し、サーキットでの走りを極めたファン待望の一台。すでにヨーロッパでは発売されているが、2020年の秋以降に日本での発売も予定している。

『テネレ700』は、道なき道を行くためのアドベンチャーツアラー。「テネレ」とは、サハラ砂漠中南部一帯を指し、現地の言葉では「何もないところ」を意味するという。そんな厳しい自然環境を意味する車名を持つシリーズの最新モデルだ。乗車姿勢に高い自由度を持たせるとともに、耐久性や整備性の高さ、荷物の制裁のしやすさなど、厳しいニーズを満たしつつ、前モデルの『XT660』に比べて約10㎏の軽量化も実現したという。

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“Full Control evolution of track master”をコンセプトに開発された『YZF-R1』。EU5適合の環境性能を実現しながらエンジンやブレーキの性能を進化させた(画像=THE21オンライン)
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『テネレ700』は、砂漠など「道なき道を行く」ためのアドベンチャーツアラーの最新モデル。日本では2020年夏以降に発売予定(画像=THE21オンライン)

「転ばないバイク」はここまできた

そして最後に、今回の東京モーターショーにおける展示の目玉として登場したのが、次世代パーソナルモビリティー『YAMAHA MW-VISION』である。SF映画に出てくる未来のバイクさながらの、丸みを帯びたシェルに覆われたボディ。車輪は前輪二輪、後輪一輪のLMWテクノロジーを採用し、リーン制御技術とリバース機能を搭載。マシンと一体化するコーナリングの楽しさに加え、安心と快適性を高いレベルで実現。さらには、音と光によってライダーとモビリティのインタラクティブなコミュニケーションを可能にするなど、移動を「これまでにない新たな体験」へと昇華させたコンセプトモデルだ。ヤマハ発動機がこれまでの研究で積み重ねてきたロボティクス技術とモビリティ技術を融合させた、まさに未来の乗り物といえる。

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(画像=THE21オンライン)
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ヤマハ発動機が考える「人とモビリティの新しい関わり方」を体現するコンセプトモデル『YAMAHA MW-VISION』。扱いやすさと安全性を実現しつつ、モビリティとのインタラクティブなコミュニケーションなど、「新たな移動体験」を提供する

ヤマハ発動機が一つの目標として掲げてきた「転ばないバイク」の実現がここまできた、と胸を張る日高社長。「人に寄り添ったモノづくり」で独自の地位を築いてきたヤマハ発動機の進化はさらに続いていきそうだ。

『THE21』編集部(『THE21オンライン』2019年11月01日 公開)

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