マイホームの購入は「人生に一度の大イベント」という考えが日本では定着しているが、海外ではライフステージに合わせ、「プロパティ・ラダー」をどんどんのぼっていく傾向がある。
生涯にわたり資産を増やし続けるための投資としての観点から、「家の買い替え」を検討してみてはどうだろう。
「プロパティ・ラダー」と「家の買い替え」の違い
プロパティ・ラダー(Property Ladder)=梯子をのぼるように、家を買い替え、ステップアップするという概念だ。単に家を買い替えるだけではなく、ステップアップ=資産価値を増やしていくことが真の目的である。
ファーストタイム・バイヤー(初めてマイホームを購入する人)は、梯子の一番下の段に位置し、子育てや昇進、定年退職といった様々なライフステージに応じ、最適な家へと梯子をのぼっていく。
多くのファーストタイム・バイヤーは、予算に合わせて価格の手頃な家を購入し、資産や所得が増えるにつれ、より資産価格の高い家に買い替える。 そして、子どもが成長し、巣立った後は、夫婦二人で管理しやすい小さな家へと買い替える人も多い。
この場合、「梯子をおりる」という見方もあるが、一概にそうとはいえない。例えば、広さはあるが立地条件があまりよくなかったマンションから、高級住宅地のこぢんまりしたマンションに住み替えるなど、新たに購入した家の資産価値が以前の家を上回る場合、やはり「梯子をのぼる」ことになる。
長期投資としての「買い替え」
前述したように、プロパティ・ラダー をのぼる目的は、より住み心地の良い家を手に入れるためだけではなく、より資産価値の高い家を手に入れるという「長期投資」でもある。
そもそも家の購入自体が投資ではあるものの、例えば35歳で初めてのマイホームを手に入れたからといって、そこで満足しなければならないというルールはない。
5年後、10年後、経済的にさらに投資に回せる余裕があれば、より資産価値の高い、あるいは将来的に資産価値が上がる見込みのある家に買い替え、可能な限りプロパティ・ラダーをのぼっていくことにより、「生涯投資」が実現する。
米住宅オーナーは、9年サイクルで家を買い替える?
米国最大の不動産業界団体である全米リアルター協会(NAR)の2016年の調査によると、米住宅オーナー(所有者)は平均9年ごとに家を買い替えている。20代でプロパティ・ラダーをのぼり始め、70代で頂点に達したと仮定し単純計算すると、生涯にわたり6回も家を買い替えるということになる。
リーマンショック(2008年)以前は、6~7年サイクルだったというから、さらに買い替え頻度が高かったものと推測される。
しかし、プロパティ・ラダーをのぼるペースが失速した現代社会においても、若年層ほど早いサイクルで家を買い替える、あるいは買い替えを計画している傾向が見られることが、米不動産仲介業者Redfinの調査から明らかになっている。ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)では、新たに家を購入した後、その家に移り住み、元の古い家を貸し出すなど、不労所得源として利用する人も多い。