5G(次世代高速通信システム)投資に関連して一躍物色手掛かりとなった「鉄塔」だが、潜在需要はこの旬のテーマを差し引いてもなお大きいようだ。耐用年数を過ぎた危険な老朽設備が大量にあり、実際に9月に日本列島を直撃した台風15号により1970年代に建てられたものが倒壊した。ETSホールディングス(1789)などの関連銘柄は、地域間を結ぶ送電線「連系線」の増強に絡んでも注目される。

鉄塔
(画像=PIXTA)

日本の鉄塔の数は約24万基。建設ラッシュは、年平均で7000基ほどが新設された70年代だ。一方、気候条件にもよるが、耐用年数はおおむね40年程度とされる。70年代製の設備の多くは更新期を迎えており、60年代以前に建てられたものも含めるとおよそ12万基分の置き換えニーズが眠っていることになる。

橋りょうなど他の老朽インフラと同様に、更新投資がなかなか進んでこなかったのが実情だ。しかし、このほどの台風では千葉県君津市の東京電力ホールディングス(9501)の送電用鉄塔が2基倒壊、大規模停電を招いた。こうした被害は今後も起こり得るため、古い設備は放置しておけない。

また、首都圏への送電能力不足に対応し、国は東北・東京間連系線の構築に約1500億円を投じる。5Gをめぐっては、傾斜地の多い山間部での電波の圏外の解消を23年までに目指す。いずれも鉄塔や送電線の新設につながる要素だ。

直近では、5G人気と相まって、那須電機鉄工(5922・(2))や大谷工業(5939・JQ)、巴コーポレーション(1921)といった鉄塔に関連する銘柄が一斉に急騰した。そして、送電線、電気工事のETSHDも有力だ。

ETSHDは東北電力(9506)が主要顧客。耐用年数超過の老朽化鉄塔の分布は東北地方が全体の約20%と最も多い。効率的に鉄塔をかさ上げする独自技術を擁するほか、送電線工事でも商機が拡大しつつある。株価は13・26週移動平均線のゴールデンクロスが迫り、6月の高値870円奪回から新局面入りする展開が視野に入る。

このほか、鉄塔の関連銘柄には駒井ハルテック(5915)や宮地エンジニアリンググループ(3431)などがある。穴株はプラント工事中堅の田辺工業(1828・(2))。同社も鉄塔の基礎工事から組み立て、架線工事までを手掛けるだけに侮れない存在だ。(12月19日株式新聞掲載記事)

>>話題のテーマや注目株を一足早くお届け「株式新聞WEB」限定プレミアム銘柄も

【関連株式ニュース 株式新聞へ】
日経平均は48円安と3日続落、再度プラス圏入りの場面も買い続かず、週末要因などで様子見=20日後場
マザーズ指数続伸、直近IPO人気が継続=新興市場・20日
大光が急落、上期および通期の業績予想を下方修正
カルナバイオが堅調、BTK阻害剤AS-0871のCTA(臨床試験許認可申請)提出
(再送)20日の東京外国為替市場=ドル・円、小幅軟調