養子縁組を行う理由や目的はさまざまですが、現在2種類ある養子縁組はそれぞれに特徴があります。今回はその内容を紹介するとともに養子となった子の相続権や他の相続人にどのような影響があるのか、養子縁組と相続についての概要を解説します。

2種類の養子縁組

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(画像=gerasimov_foto_174/Shutterstock.com)

養子縁組とは、実の親子ではない者の間で法的に親子関係を創設する制度です。養子縁組には「普通養子縁組」「特別養子縁組」の2種類がありますので、まずはその内容から解説します。

普通養子縁組

普通養子縁組は1896年の民法制定時から存在する制度です。「配偶者の子」との間で結ぶいわゆる「連れ子養子」や、財産・家名の承継のために孫との間で結ぶ「孫養子」など、養子縁組をする目的と状況はさまざまです。法律(民法)上は主に次のような制限があります。

1 養親の年齢、養親と養子の年齢
養親は成年に達していることが必要です。また親などの尊属や養親より年長の人を養子にすることはできません。

2 配偶者がいる者の養子縁組
未成年者を養子にする場合は、配偶者がともに養親となることが必要です。それ以外の場合には配偶者の同意を得る必要があります。

3 未成年者を養子とする場合
家庭裁判所の許可を得る必要があります。ただし自身または配偶者の直系卑属を養子とする場合は許可を得る必要はありません。

特別養子縁組

一方で特別養子縁組は1987年の民法改正時に創設された制度で、養子となる子とその実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親と養子が実の親子と同じ親子関係を結ぶための制度です。子どもの福祉の増進を図るためという目的があります。「実親による養子となる子の監護が著しく困難又は不適当であること」などの事情がある場合、かつ子の利益のため特に必要があると家庭裁判所に認められることが必要です。以下の要件を満たす場合に特別養子縁組が成立します。

1 実親の同意
原則、養子となる子の実親の同意が必要です。しかし「実親が意思表示できない」「実親による虐待・悪意の遺棄」など子の利益を著しく害する事由がある場合は、同意が不要となる場合があります。

2 養親の年齢
夫婦共同で縁組を行うことになり、養親となる人は25歳以上でなければなりません。ただし夫婦の一方が25歳以上であれば、もう一方の年齢は20歳以上でも養親となれます。

3 養子の年齢
養子になる子は、養親となる人が家庭裁判所に審判を請求するときに6歳未満である必要があります。ただし子が6歳より前から養親となる人に監護されていた場合には、子が8歳になるまでは審判を請求することが可能です。

4 半年間の監護
縁組成立には、養親となる人が養子となる子を6ヵ月以上監護していることが必要です。そのため縁組成立前に子と一緒に暮らしたうえで、監護状況などを家庭裁判所が考慮して特別養子縁組の成立を決定することになります。

なお3の「養子の年齢」ですが、2019年6月に改正・公布された民法により上記年齢の6歳未満が15歳未満に引き上げられています。さらに特別養子縁組の成立の手続きを2段階に分けることによって、養親となる者の負担を軽減されることになりました。今回の改正は公布の日(2019年6月14日)から1年以内の政令で定める日から施行されることが予定されています。

このように普通養子縁組と特別養子縁組とでは制度そのものの目的や縁組を行うにあたってのさまざまな制限や要件などに違いがあります。

養子の相続権は?

養子の相続に関する権利についても違いがあります。普通養子縁組の場合には実親との法的な親子関係は継続していますので、実親・養親の両方の相続に関する権利がある状態です。一方で特別養子縁組の場合には、実親およびその血族との親族関係が終了しますので、養親の相続に関する権利のみとなります。

“(実方との親族関係の終了)
第八百十七条の九 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する”

出典:電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)

他の相続人に与える影響

こちらは民法上と相続税法上とで影響がそれぞれに変わってきます。民法上は養子の人数に制限はなく法定相続分も実子と同様のため、実子の立場からすると自身の相続分が減ることになります。それに対して相続税法上は養子の人数に制限があり、被相続人に実子がいる場合には1人、実子がいない場合でも2人までしか、養子を法定相続人の数に含めることはできません。

こちらは「相続税の基礎控除額」「生命保険金の非課税限度額」「死亡退職金の非課税限度額」「相続税の総額の計算」の際に影響してきます。最大2人までと制限はあるものの、養子がいない場合と比べて基礎控除額が大きくなり相続税額が軽減されることはメリットです。このように養子縁組をすることで養親・養子はもちろん、他の親族にもさまざまな影響が出る可能性があります。

特に特別養子縁組については養子と実親との関係が終了するため、制度の利用に際しては慎重を期すべきであり専門家への相談も検討しておきたいところです。(提供:相続MEMO


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