賃貸物件の契約形態には、一般的な普通借家契約の他に「定期借家契約」があります。あまり使われていませんが、貸し主にも借り主にもメリットがあるとして、積極的に活用している大家さんもいます。定期借家契約とは、どんな契約形態なのでしょうか。

普通借家契約と定期借家契約の違いは?

相続人,メリット,定期借家契約
(画像=SewCream/Shutterstock.com)

定期借家契約の特徴は、契約解除の条件にあります。普通借家契約では、2年などの契約期間が終了しても、入居者は更新料を支払うことでいつまでも住み続けることができます。入居者側からはいつでも契約解除の申し出ができますが、オーナー側からは正当な事由がなければ契約解除ができません。

「正当な事由」に明確な定義はなく、最終的には裁判所の判断で決まります。例えば、オーナーが「アパートを建て替えたいから退去してほしい」と契約解除を求めたものの、正当な事由とは認められなかった判例があります。このことから、普通借家契約は入居者側に有利な契約形態と言われています。

これに対して定期借家契約は、定めた契約期間が終了した時に契約自体が終了します。例えば2年の契約期間なら、2年経過後に入居者は退去しなければなりません。普通借家契約と異なり、「更新」はありません。ただし入居者とオーナーの双方が合意した場合は、「再契約」をして住み続けてもらうこともできます。

また定期借家契約では、基本的に契約期間内の途中解約はできません。入居者はいったん契約したら、契約が満了するまで必ず借り続けることが前提です(やむを得ない事情により、契約の中途解約が認められる場合もあります)。

定期借家契約、立場ごとのメリット

オーナーにとってのメリット

オーナーにとって定期借家契約を利用するメリットは、期間終了後に確実に契約解除できることです。例えば、数年後に建物を建て替えたい、または取り壊したいといった場合、定期借家契約にしておけば建て替えや取り壊しの計画が立てやすくなります。建て替え開始の直前までの短期契約にしておくことで、空室期間をできるだけ短くすることもできます。

また、契約後にトラブルを起こす入居者であることが判明した場合、期間終了後に確実に立ち退いてもらうことができます。

投資用物件ではなくマイホームを一時的に賃貸に出す場合にも、定期借家契約のほうが便利です。「転勤して家を空けて、3年後に戻ってくる」といったケースでは、定期借家契約で貸しておけば、期間終了後に確実に契約を解除でき、自宅を明け渡してもらうことができるからです。

入居者にとってのメリット

定期借家契約は、入居者にもメリットがあります。一般的に定期借家契約の物件は、ファミリーのように長期で住むことが前提の入居者には敬遠される傾向があるため、普通借家契約よりも家賃を安くして入居者を募集します。つまり、入居者は相場よりも安く借りられるというメリットがあるのです。

また、期間が長い契約(5~10年など)であれば、その間の更新手続きや更新料の支払いが不要で、わずらわしさがありません。さらに定期借家契約では、賃料を一括で前払いすることを条件に値引き交渉をすることもできます。

相続人にもメリットがある

定期借家契約は、相続人にもメリットがあります。賃貸用不動産を相続した場合は、その後も賃貸経営を続けるか、物件を売却するかを選ぶことになります。自宅として使う、建て替える、取り壊して土地として売るなどの方針がある場合は、現入居者を退去させなければなりません。しかし、普通借家契約ではそれが難しいのです。

定期借家契約では、契約期間終了後に入居者全員を確実に退去させることができるので、自分の希望どおりに不動産を扱うことができます。相続人にとって、入居者と定期借家契約を結んでいる賃貸用不動産は扱いやすい財産と言えるでしょう。

利用率はまだ低い

定期借家契約の利用率は、まだ低いのが現状です。その背景には、オーナーや利用者、不動産管理会社の理解不足、経験不足などがあります。しかし、上記で説明したように定期借家契約はメリットの多い契約形態です。賃貸経営の選択肢の一つとして、利用を検討してみてはいかがでしょうか。(提供:相続MEMO


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