今より収入や資産が増えていくごとに比例して、その金額が大きくなるほど「幸せになれるのか?」ということを調査したデータがあります。はたして収入に比例して幸福度は無限に高まるのでしょうか。実はこの相関性について調べた興味深い研究結果がアメリカと日本にあります。

年収7万5,000米ドルが幸福度のピーク?

じぶん銀行
(画像=PIXTA)

2015年にノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のAngus Deaton(アンガス・ディートン)教授らは、過去にアメリカ国民を対象に年収と幸福度に関する調査を2008~2009年にかけて実施しました。その調査結果によれば、年収7.5万米ドル(1米ドル=106円換算で約800万円)までは収入が増えるにつれて幸福度も上がる傾向にあります。しかしその相関性は年収7.5万米ドルを境に伸びがゆるやかになります。

つまり年収7.5万米ドルでも年収10万米ドルでも、幸福度に大きく影響はしていないと見ることができます。収入がたくさん増えるということは、それだけ仕事に費やす時間や抱えるストレスも増す可能性を含んでいます。年収が増えることでさまざまな購買や体験もできる反面、こうした要因がからむことで幸福度に伸びが見られなくなるのかもしれません。

日本では世帯年収3,000万円が幸福度のピーク?

日本の場合のお金と幸福度の相関性はアメリカ人と同じなのでしょうか。先出の調査結果と調査の指標基準に違いはありますが、2019年5月に内閣府が発表した「『満足度・生活の質に関する調査』に関する第1次報告書」によると、世帯年収の幸福度は次の通りです。

・「500万~700万円未満」5.91点
・「2,000万~3,000万円未満」6.84点
・「1億円以上」6.03点

「500万~700万円未満」の場合と「1億円以上」の場合では0.12点の幸福度の差がありますが、満足度に大きな差は見られません。また、「2,000万~3,000万円未満」まで世帯年収の増加に応じて満足度がピークを迎え、そのラインを超えると総合主観満足度は下がっています。先出の報告書とは金額が大きく異なりますが、満足度の上昇については同じように“限り”があります。

日本においても「ある一定の収入金額から幸福度の上昇には限りがある」傾向が当てはまることが分かります。では年収がこのように幸福度のピークである一定額に達した後は、どのように幸福度を上げていけばいいのでしょうか。

幸福度はどのように判断されている?

先ほどの疑問について考えるとき、ぜひ考慮してもらいたいことがあります。それは人の幸福度はさまざまな要素によって総合的に判断されるということです。2011年8月に幸福度に関する研究会が行った「幸福度に関する研究会報告(案)」によると、年齢や性別によって幸福度を判断する際に重視する要素に偏りがあります。例えば男性では15~24歳までは「友人」がトップです。

しかし25歳以降は「家計」が特に重視されるようになり、55歳を超えると「健康」が首位になります。女性の場合、15~19歳は男性と同じく「友人」がトップですが、20代と30代では「家族」、40歳を超える段階からは男性より早く「健康」を重視する人が多い傾向です。性別やライフステージによって各要素の重要度は変わることが分かります。

またこの調査では「友人」「家計」「家族」「健康」のほか、「精神的ゆとり」「生きがい」「自由時間」も幸福度を判断する際に重視する要素として挙げられています。この各要素の満足度が高まれば、年収を高めつつ幸福度も上昇していくのではないでしょうか。そして興味深いことに、すべての年代において男性のほうが女性よりも平均年収が高い(*1)にも関わらず、男性より女性のほうが「幸せ」と回答する数が多い(*2)のです。

(*1)国税局「平成29年分民間給与実態統計調査」
(*2)内閣府「満足度・生活の質に関する調査」

幸福感を高めるために日々の中でできること

お金と幸福度の相関性は一定額までは上昇しますが、限りもあります。しかし幸福度を構成する各要素に注目してそれぞれの満足度・充実度を高めるように努めれば、年収を高めながら幸福度も上げることが可能になりそうです。『幸福論』(1930年)の著書で知られるバートランド・ラッセルなど多くの識者が、幸福の反対概念は不幸ではなく退屈や無力感だと指摘しています。

そうだとするならば、自分の好きなことなどに刺激を受けることも幸福感につながるはずです。そしてある程度のお金があることは、幸福につながる各要素の満足度を高めるため、刺激を受ける日々を過ごすための一助となり得ます。単純に年収を高め続けるだけでは日々の幸福感は大きく変わらないかもしれませんが、ちょっとしたお金の使い道次第で、自分の幸福感を高めていくことは可能になりそうです。(提供=auじぶん銀行)

執筆者:冨士野喜子(ファイナンシャルプランナー)

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