結果の概要:雇用者数の伸びは前月から鈍化、失業率は横ばい

米国,雇用統計
(画像=PIXTA)

1月10日、米国労働省(BLS)は12月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+14.5万人の増加(1)(前月改定値:+25.6万人)と、+26.6万人から下方修正された前月から大幅に伸びが鈍化、市場予想の+16.0万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も下回った(後掲図表2参照)。

失業率は3.5%(前月:3.5%、市場予想:3.5%)と前月から横ばいとなり、市場予想に一致した(後継図表6参照)。労働参加率(2)は63.2%(前月:63.2%)と、こちらも前月から横ばいとなった(後掲図表5参照)。

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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
(2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

結果の評価:賃金の伸びは抑制された状況が持続

12月の雇用増加数は、GMストの影響剥落で製造業雇用が大幅増加となった前月の反動もあって雇用の伸びが鈍化した。19年通年の月間平均の雇用増加数は+17.8万人と、前年の同+22.3万人は下回ったものの、労働力人口の増加に見合う+10万人を大幅に上回っており、雇用回復期間が9年を超える中では非常に力強い雇用増加と言えよう。

また、家計調査も失業率がおよそ50年ぶりの水準を維持しており、労働需給がタイトであることを確認した。

もっとも、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.1%(前月改定値:+0.3%、市場予想:+0.3%)と、+0.2%から上方修正された前月、市場予想を下回った。前年同月比も+2.9%(前月:+3.1%、市場予想:+3.1%)と、前月、市場予想を下回っており、労働需給が逼迫しているにも関わらず、賃金上昇の伸びは抑制されている(図表1)。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

このようにみると、12月は引き続き労働市場の回復が持続していることを確認したものの、賃金上昇の加速はみられておらず、賃金面から物価上昇圧力が抑制されている状況を示している。

事業所調査の詳細:製造業雇用が減少

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+14.0万人(前月:+19.1万人)と前月から伸びが鈍化した(図表2)。

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民間サービス部門の中では、卸売業が前月比+0.8万人(前月:▲0.3万人)となったほか、小売業が+4.1万人(前月:▲1.4万人)と前月からプラスに転じた。

一方、専門・ビジネスサービスが+1.0万人(前月:+5.3万人)となったほか、医療サービスも+2.8万人(+4.6万人)と前月から伸びが鈍化した。

財生産部門は前月比▲0.1万人(前月:+5.2万人)と小幅ながら前月からマイナスに転じた。建設業では+2.0万人(前月:+0.2万人)と前月から伸びが加速したものの、製造業が▲1.2万人(前月:+5.8万人)とGMストの解消に伴い大幅な増加となった前月の反動もあってマイナスに転じ、全体を押し下げた。

政府部門は、前月比+0.6万人(前月:+1.3万人)と前月から伸びが鈍化した。内訳をみると、連邦政府が横ばい(前月:▲0.2万人)と前月からマイナス幅が縮小したものの、州・地方政府が+0.6万人(前月:+1.5万人)と伸びが鈍化したことが大きい。 前月(11月)と前々月(10月)の雇用増加数(改定値)は、前月が+25.6万人(改定前:+26.6万人)と▲1.0万人下方修正されたほか、前々月が+15.2万人(改定前:+15.6万人)と、こちらも▲0.4万人下方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲1.4万人の下方修正となった(図表3)。

なお、BLSの公表に先立って1月8日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+20.2万人(前月改定値:+12.4万人、市場予想:+16.0万人)と、+6.7万人から大幅に上方修正された前月、市場予想を上回った。このため、雇用の伸びが鈍化した雇用統計とは不整合な結果となった。

12月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が28.32ドル(前月:28.29ドル)となり、前月から+3セント増加した。週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.3時間)とこちらは前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は971.38ドル(前月:970.35ドル)と、前月から増加した(図表4)。

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家計調査の詳細:労働参加率、失業率は前月から横ばい

家計調査のうち、12月の労働力人口は前月対比で+20.9万人(前月:▲5.4万人)と前月からプラスに転じた。内訳を見ると、失業者数が▲5.8万人(前月:▲4.6万人)と2ヵ月連続でマイナスとなったものの、就業者数が+26.7万人(前月:▲0.8万人)と前月からプラスに転じて全体を押し上げた。非労働力人口は▲4.8万人(前月:+22.9万人)と、こちらは前月からマイナスに転じた。

これらの結果、労働参加率は63.2%と前月から横ばいとなった(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は12月が82.9%(前月:82.8%)とこちらは前月から+0.1%ポイント上昇した。男女の内訳は、男性が89.2%(前月:89.3%)と前月から▲0.1%ポイント低下したものの、女性が76.8%(前月:76.5%)と+0.3%ポイント上昇し、全体を押し上げた。

失業率は前月から横ばいと、50年ぶりの水準の低水準を維持しており、労働需給がタイトであることを確認した。なお、今回の発表に併せ、季節調整係数の見直しに伴い15年1月以降の家計調査数値が改訂されたが、19年の失業率は改訂前後で変更は無かった。

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12月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は118.6万人(前月:121.9万人)と前月から▲3.3万人減少した。長期失業者の失業者全体に占めるシェアも20.5%(前月:20.8%)と、前月から▲0.3%ポイント低下した(図表7)。平均失業期間は20.8週(前月:20.2週)とこちらは前月から+0.6週長期化した。

最後に、周辺労働力人口(124.6万人)(3)や、経済的理由によるパートタイマー(414.8万人)も考慮した広義の失業率(U-6)(4)をみると、12月は6.7%(前月:6.9%)と前月から▲0.2%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.2%ポイント(前月:3.4%ポイント)と、前月から▲0.2%ポイント縮小した。

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(3)周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
(4)U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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