交通手段を一本化、日本も普及加速へ
通常国会が20日に召集される。政府が新たに提出する法案の数は戦後最少の50本強にとどまる見通しだが、大型経済対策を含む2019年度の補正予算のほか、年金制度改革の関連など重要案件がひしめく。株式市場で有力な物色テーマに発展するケースも想定され、注目が怠れない。シリーズで取り上げる第1回目は、鉄道やバスを一本化する次世代の交通サービス「MaaS(マース)」に焦点を当てた。
マースとはIT技術で鉄道やバス、船、タクシーなどの公共交通をひとまとめにするもの。スマートフォンなどを通じて交通手段の中から最適な組み合わせを選び、予約から決済までを一本化する。今国会ではマースの普及促進へ向け、複数の公共事業者が運賃の届出を一括で行うことができる制度を盛り込んだ法案が提出される見通しだ。
マースでは、カーシェアリングやシェアサイクル、電動車いすなどの小型パーソナルモビリティーといった末端の移動手段までを含めたサービスの展開も想定される。また、将来的には自動運転や空飛ぶ車のような次世代技術との融合も可能になる。
マースが16年に実用化されたフィンランドの首都ヘルシンキでは、公共交通機関とレンタカー、タクシーなどを一体化したスムーズな移動が定着している。ドイツや米国、中国でも導入されたほか、フランスでは22年までに日本円にして約1.6兆円を投じてシステムやインフラの整備を進める。
こうした中、少子高齢化に伴う交通サービスの縮小や、ドライバー不足の問題が深刻化する日本もマースに活路を見いだす。既に個人の需要に合わせて経路が決まるデマンドバス、スマホの配車アプリを使った定額タクシーなどの実証実験が各地で重ねられており、それらが浸透するための法整備を待つ段階だ。
日本のマースの中心に立つ2大企業がトヨタ自動車(7203)とソフトバンクグループ(9984)。両社は18年にマース事業を展開するモネ・テクノロジーズ社(東京都港区)を共同で設立した。タクシーの相乗りや船舶通勤といった、新たな移動サービスの提供を目指す。こうした取り組みに連携する企業の数も、立ち上げ時の88社から直近までに474社に増加した。
マースの関連銘柄では、情報管理システムの両毛システムズ(9691・JQ)が関心を集め、昨年12月に1000円台後半だった株価は今年に入り4220円まで急騰した。同社は乗客の乗り降りを自動で検知するAI(人工知能)バス停や、自動運転の検証環境提供を手掛ける。モネ社のコンソーシアムにも参画している。
ここから狙う注目銘柄の一つがユビキタスAIコーポレーション(3858・JQ)。同社はインターネットのセキュリティー対策に強みを持ち、マースをめぐってもニーズをとらえていく意気込みだ。ドライバーの姿勢検知など車室内の安全確保を支援するモニタリングソフトなども販売する。量子コンピューター関連銘柄としても注目される有力小型株だけに、このテーマでも飛躍が期待される。
システナ(2317)は車載周辺技術に強みを持ち、高度道路交通システムやモビリティーサービスの受注を拡大する。5G(次世代高速通信システム)のインフラ機器、IoT(モノのインターネット)を活用したスマート駐車場も手掛け、マース市場の誕生の波に乗りそうだ。
穴株としては、電子チケットサービスを手掛けるギフティ(4449・M)が浮上する。マースでは商業施設や法人サービスとの連携も視野に入り、交通機関や観光地での利用者の認証に使われる電子チケットの存在感も増す。同社は沖縄県で行われる実証実験にも参加する。このほか、長大(9624)やジョルダン(3710・JQ)、電通国際情報サービス(=ISID、4812)などもマークしたい。(1月17日株式新聞掲載記事)
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