(本記事は、トマス・J・スタンリー氏(著)、広瀬順弘氏(訳)の著書『1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

金持ちが考える「賢い投資先」とは

株式投資
(画像=Number1411/Shutterstock.com)

近頃、株で大金持ちになった人が続出しているという噂をよく耳にする。では、一代で億万長者になった人たちは、株式投資で大儲けしたのだろうか?

自分の経済的成功を導いた要因として、「上場企業の株式に投資する」を〈非常に重要〉と答えたのは、億万長者のおよそ8人に1人(12%)にすぎない。また、〈重要〉と答えたのは10人に3人(30%)だ。

これは、億万長者の大半が株式に投資していないということではない。そうではなくて、彼らは株式市場を、さまざまな投資対象のなかの1つの選択肢にすぎないと考えているのだ。

経済的成功の要因として、「賢い投資をする」を〈非常に重要〉と答えた億万長者の割合(35%)は、「上場企業の株式に投資する」を〈非常に重要〉と答えた人の3倍にのぼっている。

億万長者は賢い投資をする。しかし、賢い投資先の対象がすべて証券取引所に上場されているわけではない。

上場企業への投資だけが投資ではない、とたいていの億万長者は言うだろう。彼らが〈非常に重要〉な要因として挙げたものを見ていくと、「自分の事業に投資する」(26%)、「最終的には自分で判断する」(29%)、「妥当な収益が見込めれば金銭的リスクを冒す」(29%)などがある。

予想どおり、ほとんどの自営業者・起業家は、自分の事業への投資の重要性をとくに痛感している。このカテゴリーの億万長者の87%は、「自分の事業に投資する」を〈非常に重要〉(50%)または〈重要〉(37%)と考えている。

こうした億万長者たちの投資に対する姿勢を説明する際、私はよく、何年も前にインタビューしたある億万長者の言葉を引き合いに出すことにしている。

私の資産の大本は、自分の商売だよ……。(経済的に)成功している人間は誰もギャンブルなんかしないね。私も賭け事はしない。一財産できると、それをドブに捨てるようなまねはもうする気にはならないものさ。

ほとんどの億万長者は株式に投資しているが、それで大儲けしようと考えているわけではない。株価が上がっても、売買手数料や税金がかかるし、いつか下落するかもしれない。そういったマイナス面も考慮すれば、本業をしのぐ収入源になりうるとは思わないのだ。

また、注意してほしいのは、「自分の事業に投資する」には、「自分の収入の範囲内で生活する」の要素も含まれていることだ。賢い投資家を自認する人たちや、リスクを冒す人たち、そして自分の事業に投資する人たちには共通項がある。

それは、収入の範囲内で生活する傾向が顕著であることだ。彼らは、消費を抑えて倹約すれば、それだけ多くの資金を投資に回せることを知っているのである。

では今度は、億万長者を純資産額で分類して、投資に対する考え方をさぐってみよう。ミリオネア層のなかでもとびぬけて純資産の多い人たちはどうだろう?意外なことに、純資産が1000万ドル以上のスーパーリッチは、純資産レベルの低い金持ちグループよりもさらに、上場企業の株式投資に積極的ではない。

実際、スーパーリッチの3人に1人は、「上場企業の株式に投資する」について、経済的成功を収めるうえで重要な要素ではなかったと答えている。これが純資産200万ドルから500万ドルの億万長者グループになると、同じ回答をしたのは5人に1人だけだった。

また、スーパーリッチの場合、上場株式への投資額より、個人企業や非上場企業への投資額のほうが多い。これが純資産1000万ドル未満の億万長者の場合だと、比率は逆になっている。

同様の流れで、スーパーリッチは投資アドバイザーについて、経済的に成功した要因としてはあまり高く評価しない傾向にある。注意してほしいのは、ここで言う投資アドバイザーとは、上場企業の株式を売り込んだり、株に関するアドバイスをする人たちのことである。

資産の10%以上を遺産相続や贈与で獲得している「遺産相続組」の億万長者と比較した場合、一代で財産を築いた億万長者には、この傾向がとくに顕著に見られる。

自力で億万長者になった人たちは、個人企業や非上場企業への投資のほうにずっと熱心だ。大手上場企業の経営陣が必ずしも有能な人間ばかりでないこと、個人企業にこそ異才の経営者が多いことを、彼らは知っているのである。

●期待資産額を計算しよう

経済的成功をもたらした要因として、億万長者の35%が「賢い投資をする」を〈非常に重要〉な要因と考えているにもかかわらず、「優秀な投資顧問がいる」を〈非常に重要〉と答えたミリオネアがわずか11%だったのはなぜだろう?あるミリオネアはこう語った。

「証券マンが将来値上がりする株を本当に予測できるなら、いつまでも証券ブローカーなんかやっているはずはない。彼らには予測なんかできない。だから株を売って稼いでるんだ」

このような意見があるとはいえ、証券ブローカーが自営業者や弁護士などと並ぶ高給取りであることもまた事実である。全米の富裕層を対象に行った最近の調査では、アンケートの回答者のうち121人の職業が証券ブローカーだった。

彼らの年収は低い人で数十万ドル、高い人は100万ドルを優に超える。ということは、証券ブローカーこそが最も資産を蓄積しやすい職業なのだろうか?それとも自営業者や起業家、経常幹部、弁護士や医者だろうか?私は年齢と収入を考慮に入れた独自の比較方法をとってみた。

働いている年月が長ければそれだけ資産も増えるはずだし、また、収入が多ければそれだけ資産も多くなるはずだ。私は、年齢と収入という資産に大きな影響を与える要素から、その人の予想される資産額を算出するために、次のような計算式を開発した。これを使えば、それぞれの回答者の「期待資産額」がわかるはずだ。

期待資産額=年齢×0.112×所得

たとえば50歳の自営業者、エディソン氏の場合、年間総所得が34万ドルだから、期待される資産額は190万4000ドルになる。45歳、年収15万5000ドルのスマイズ氏の場合は、期待資産額は78万1200ドルである。

もしエディソン氏が実際には期待資産額の2倍の資産を持っていたらどうだろう?その場合、彼は私が「蓄財優等生」と呼ぶカテゴリーに入る。一方、もしスマイズ氏が期待値の半分以下の資産しかなかったら、彼は「蓄財劣等生」ということになる。つまり、スマイズ氏の年齢と収入から計算すると、彼の現実の資産水準は低いということである。

自営業者のおよそ5人に4人(77.7%)が、期待資産額を上回る純資産を持っていた。反面、証券ブローカーで期待資産額を上回っていたのは、わずか3人に1人(34.4%)だった。

この2つの職業グループを、蓄財優等生と蓄財劣等生という尺度で比較してみると、ちがいがいっそう明確になってくる。自営業者の約半数(46.3%)が蓄財優等生だったのに対し、証券ブローカーでこのカテゴリーに入ったのはわずか13.6%だった。ちなみに証券ブローカーの27%は蓄財劣等生だが、自営業者で蓄財劣等生なのはわずか7%だった。

最後に、職業グループ別に、蓄財優等生と蓄財劣等生の比率を見てみよう。自営業者の場合、蓄財劣等生1人に対して蓄財優等生が6.6人もいる。一方、証券ブローカーの場合は、2人に1人が蓄財劣等生だ。

ところであなたなら、投資に関してどんな人にアドバイスしてもらいたいと思うだろうか?私は投資アドバイザーだけでなく、医者、弁護士、その他の専門家に関しても、蓄財劣等生タイプの人とは取引しないことにしている。

彼らの念頭にあるのは、自分の収入を大きく増やすことだけ。派手に消費するために多額の借金を抱えているのがふつうだから、破産の不安もある。そんな状態で優れたサービスを提供できるはずがないと、私は思うのだ。

知恵ある者の家には尊き宝と膏とあり、愚かなる人はこれを呑みつくす。──旧約聖書「箴言」21章20節

金持ちになるには、やっぱり運?

ウェブスターの辞書では「自己鍛錬」を「精神力や徳性を正したり形成したり、あるいは完成させる訓練」と定義している。ならば、精神力の強さを見れば、その人が鍛練されているかどうかがわかるはずだ。

大多数の億万長者は、自分を律する強い精神力を持っている。彼らは自ら高いゴールを設定して、それをめざして邁進する。たいていは他人の指図は受けず、自分の道は自分で決めていく。何時に起きて何時に出勤しろなどと、人に言われることはない。

いったん仕事にかかると、彼らは優先順位を決めて仕事のスケジュールや作業内容を決定する。自分自身の生活を充分管理するだけの精神力があることが、いちいち人から指図されなくては生きていけない他の多くの人たちに差をつけていく。

億万長者を定義すれば、資産を蓄積している人のことになる。だが、アメリカ人の大半は資産を蓄積していない。収入の全部あるいはほとんどを消費に回してしまう結果、およそ10世帯に3世帯で純資産がマイナスになっている。

これに対して、億万長者のほとんどはゼロから資産を築いていて、そのうち少なくとも60%は、遺産を1ドルたりとも相続していない。億万長者の大多数は先人から伝わる方法──すなわち、自力で資産を築いているのだ。

彼らを金持ちにしたのは自分をコントロールする強い心であって、幸運とか偶然の作用とはほとんど無縁である。アンケート調査した億万長者のうち、自分が成功した理由として、「幸運に恵まれる」を〈非常に重要〉な要因と答えた人はわずか12%だけだった。

これと対比してほしいのが、成功の理由として「自分を律する強い精神力がある」を挙げた人(57%が〈非常に重要〉な要素と答えた)と、「たいていの人よりよく働く」を挙げた人(47%が〈非常に重要〉な要素と答えた)の多さである。

彼らが経済的成功を達成したのは、事前に周到な計画を立てて実行していく堅実な姿勢によるものなのである。私は、一代で財を成した億万長者たちから、数えきれないほどこう聞かされている。

働けば働くほど、運は向いてくるものだ。

とくに興味深いのは、億万長者になった医師が運についてどう感じているかということだ。経済的に成功できた理由として、幸運であることを〈非常に重要〉な要素と感じている金持ち医師はわずか4%だけで、対照的に73%が精神的鍛練を〈非常に重要〉と答えている。彼らのほとんどは、高校入学前から医者になろうと考え、その目標を掲げて以来ずっと努力を続けてきた人たちなのである。

もちろん、精神的な鍛錬をすれば必ず金持ちになれるとは言いきれないが、あなたに自分を律するだけの精神力がなければ、金持ちになれる可能性はきわめて少ない。

1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました
トマス・J・スタンリー
アメリカにおける富裕層マーケティングの第一人者。ジョージア州立大学の教授職を経て、ニューヨーク州立大学オルバニー校マーケティング学部の教授となり、1973年にアメリカ全土の億万長者を対象とした初の大規模調査を実施。富裕層向けビジネスを行なう企業や金融機関へのアドバイザーとして活躍。2015年逝去。主な著書にベストセラー『となりの億万長者』(早川書房)。
広瀬順弘(ひろせ・まさひろ)
1932年東京生まれ。青山学院大学英米文学科卒業。アメリカ大使館広報文化局勤務を経て翻訳家となる。フィクション、ノンフィクションを問わず幅広く活躍。2007年逝去。

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