(本記事は、トマス・J・スタンリー氏(著)、広瀬順弘氏(訳)の著書『1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました』文響社の中から一部を抜粋・編集しています)

金持ちが結婚相手に求める5つの要素とは?

結婚相手
(画像=Leonardo da/Shutterstock.com)

なぜ、これほどまでに億万長者の結婚に対する考え方が興味を惹くのだろうか?アメリカの億万長者の平均結婚期間は28年にもおよび、4組に1組は38年以上も夫婦でいる。現在のアメリカ全体の離婚率を考えてみれば、これは驚くべき数字である。億万長者の結婚に対する考え方を探ることは、正しい人生の伴侶を見つけるための指針を与えてくれるにちがいない。

いったい、何が結婚を成功させる秘訣なのだろうか?億万長者が億万長者たりうるのは、彼らが人生のさまざまな大問題に対して正しい決断を下しているからだ。そして、その1つが配偶者の選択なのだ。結婚の年数と純資産額のあいだには、かなり顕著な正比例の関係が見られる。だが、もし離婚ということになれば、資産は大きなダメージを受ける。

したがって、結婚が長続きしている理由として、億万長者が配偶者の「容姿の魅力」を第一に挙げていないのも不思議ではない。もっとも、さまざまなインタビューでも、「容姿の魅力」は回答者のほとんど全員が要因の1つには挙げていたし、それが結婚を長続きさせるプラス因子であることも事実である。だが、それを重視しすぎることはないのだ。回答者の一人は、配偶者の外見の美しさについて、こう語っている──

理想を言えば、知的で正直で、思いやりがあって柔軟な適応力を持っている……そんな女性に肉体的な魅力が備わっているのがいちばんいいんだがね。

この発言こそ、大多数の億万長者の「容姿の魅力」に対する考えを代弁するものである。つまり彼らは、「容姿の魅力」だけで結婚しようなどとは考えないのだ。

億万長者が配偶者を選ぶ際には、知性が重要な位置を占めるが、他にも重要視されている資質がいくつかある。後に億万長者になった人たちは未来の配偶者を、誠実か、朗らかか、信頼できるか、情が細やかかといった点を見て、ふるい分けているようなのである。

いったいミリオネアたちは、こうした選択能力を、どこでどうやって身につけるのだろうか?学生時代のさまざまな体験のなかで、未来の億万長者たちに、その後の経済的な成功を収めるうえで最も大きな影響を及ぼしたのは何であったか?

他の人間を的確に見抜く判断力を身につけたこと。

つまり、ほとんどの億万長者たちが、学生時代の経験から人間の資質について敏感になったということだ。その結果、この人は本当に誠実だろうか、信頼がおけるだろうか、といった判断が、配偶者選びの重要な部分を占めるようになるのだ。

世の親御さん、あなたは子供たちに、ボーイフレンドあるいはガールフレンドのなかには誠実な人もいればそうでない人もいるから、そのちがいに注意するように言い聞かせたことがあるだろうか。その場合、チェックすべき大事な点は、その友だちが誰に対しても誠実であるかどうかである。

いい印象を与えたい人にだけ見せる態度から判断してはならない。本来の性格や躾しつけからにじみ出る誠実さが感じとれるか?それとも、自分の利益になるときだけ誠実そうにしているのか?それを見極める必要がある。

知性的な人たちのすべてが、他の重要な資質も備えているとは限らない。というより、回転の速い頭脳は欠点を隠すように立ち回りがちなので注意が必要だ。求婚者の頭のよさに心酔してしまうのは、相手の外見の魅力にころりと参って何も見えなくなるのと同じである。知性ばかりを重視して、他の重要な資質──誠実さ、明朗さ、信頼性、道徳など──を見落としてはならない。

●重要な資質

なぜ、億万長者の多くは離婚しないのだろうか?ミリオネア・カップルは夫も妻も、結婚を成功させるにはどんな資質が必要か、それをしっかり心得ていることはまちがいない。しかも億万長者の場合に特徴的なのは、夫も妻も、配偶者の持つそれらの資質をまったく同じように評価している点である。

たとえば、男性回答者のほぼ全員(99%)と女性回答者の大部分(94%)が、配偶者の「正直」さを重要な資質としている。他の4つの資質を重要と見なす割合も、男女ほとんど同じである。96%の男性と92%の女性が、自分の配偶者は「責任感がある」と考えている。男性・女性とも同率(95%)の人が、配偶者を「情愛豊か」だと思っている。そして、男女とも大多数の人が、配偶者を「有能」で「協力的」だとも思っている。こうした資質のすべてが、結婚を順調に長続きさせる重要な要素なのだ。

こうしたミリオネア・カップルのお互いに対する高い評価は、これらの資質だけにとどまらない。億万長者に経済的成功の理由を尋ねると、夫からも妻からも決まって同じ答えが返ってくる。どちらも、それを可能にしたのは配偶者の力だと、互いに褒め合うのである。

事業主であるS氏はグループ・インタビューの席上、38年間連れ添った妻の協力なしではとても成功できなかっただろうと、重ねて強調した。

家内には、頭が上がりません。もし家内がいなかったら、ここまではやってこられなかったでしょう。子供は5人いますが、私は、家内や子供につき添って病院に行ったことさえ一度もありません。家内が全部自分でやってくれたんです……。何もかも全部やってくれました。

億万長者たちの大部分はS氏の意見にうなずくはずだ。サクセス・ストーリーはそれぞれちがっても、そのほとんどすべてに共通の特徴がある。大多数の億万長者が、自分の配偶者は大変協力的だと述べ、協力的であるためには、正直で責任感があり、情愛豊かで有能であることが必要だとしている点である。それが、億万長者たちの長続きする結婚を支える土台なのだ。

一代で億万長者となった起業家、ドン・D氏は、協力的で責任感があり、かつ有能な彼の妻の素晴らしい話を聞かせてくれた。29歳のとき、ドンは事業を起こす計画について妻の意見を求めた。事業を始めるとなると犠牲はつき物だ、と彼は説明した。まず、高給を払ってくれている今の会社を辞めなければならない。ビジネスを始める際の資金調達の問題もあった。「もしかすると、一切合切売ることになるかもしれないが」

すると、家内は私に「うまくいかなかったらどうするの?」って聞いた。「そうだな、他の職を探すさ」って言うと、家内の答えは「いいわ」だった。

しかし2年後、ドン・D氏の事業は行き詰まった。一緒に働いてきた妻は一度も不平をこぼさなかった。ドン・D氏は会社員に戻った。5年後、彼は会社を辞め、再び独立した。妻の祝福と励ましを受けて挑んだ2度目のベンチャーは、1976年の創業以来順調に行っている。そして現在までに彼はさらに3つの事業をスタートさせている。

ドン・D氏は「有能で責任感のある」妻の協力をどう評価しているだろうか?彼の妻は家庭内の仕事をほとんど全部こなしただけでなく、それ以上の働きをした。夫のように物理学の専門知識はないものの、自分も進んでビジネスについて研究し、その運営に必要なテクニックを学んだ。今日、ドン・D氏が始めた4つの事業のうち2つは妻がオーナーとなり、見事な経営者ぶりを発揮している。

結婚して30年になるが、家内は変わらない。昔のまんまです。家内がいなければ何も始まらなかったんじゃないかね……私は頑固で融通がきかないんで。その点、家内は冷静で、落ち着いた人間だから。

ドン・D氏は、自分たち夫婦は完璧なコンビだと言う。お互いに相手の性格や能力を認めて高く評価する。生産的かつ長続きする関係に不可欠な5つの資質を、夫婦ともたっぷり持ち合わせている。2人とも正直で、責任感があり、情愛豊かで、有能で、協力的な人間なのだ。

容姿の魅力は別にして、億万長者たちが配偶者となる人に最初に会ったときに心を惹かれる資質もやはり5つある。知性的で、誠実で、明るく、信頼でき、情愛豊かなところだ。求愛の初期の段階で相手のそうした資質を感じとる億万長者たちのセンサーは、どれだけ正確なのだろうか?

ほとんどの億万長者が、相手の重要な資質としてまず「知性的」であることを挙げる。しかし、「知性的」とはどんな意味なのか?億万長者世帯では、夫の90%、妻の85%が大学を卒業している。とくに妻たちは成績がよく、約80%が上位4分の1に入る成績を収めている。

他の資質についてはどうだろうか?夫も妻も95%が、相手の誠実さに惹かれたと回答しているが、この点に関しては、ミリオネアたちの判断は正しいようだ。回答者たちによれば、誠実であるということは正直だということであり、それが結局、彼らの結婚を長続きさせた重要な要素だという。

回答者の億万長者はほとんどが、30年近くに及ぶ結婚生活で、配偶者に対する最初の評価が正しかったかどうか、充分判断できたはずだ。おそらく今は、相手の本質を確実に理解しているにちがいない。つき合いはじめた頃に信頼できると思った結婚相手は、ただ信頼がおけるだけでなく、責任感もあることがわかった、とミリオネアたちは言う。信頼は責任感を呼び起こし、これも結婚を成功させる要因の1つなのだ。

1億円貯める方法をお金持ち1371人に聞きました
トマス・J・スタンリー
アメリカにおける富裕層マーケティングの第一人者。ジョージア州立大学の教授職を経て、ニューヨーク州立大学オルバニー校マーケティング学部の教授となり、1973年にアメリカ全土の億万長者を対象とした初の大規模調査を実施。富裕層向けビジネスを行なう企業や金融機関へのアドバイザーとして活躍。2015年逝去。主な著書にベストセラー『となりの億万長者』(早川書房)。
広瀬順弘(ひろせ・まさひろ)
1932年東京生まれ。青山学院大学英米文学科卒業。アメリカ大使館広報文化局勤務を経て翻訳家となる。フィクション、ノンフィクションを問わず幅広く活躍。2007年逝去。

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