要旨
- 消費税率は2019年10月に8%から10%に引き上げられた。前回(2014年4月)の税率引き上げ時には消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)が前年比1%台前半から3%台前半まで跳ね上がったが、今回は税率引き上げ前後で上昇率は大きく変わっていない。
- 税率の引き上げ幅が小さかったこと、軽減税率が導入されたことに加え、幼児教育無償化によって消費者物価上昇率が大きく押し下げられたことがその理由だが、幼児教育無償化の影響は一部の世帯に偏っている。
- 世帯主の年齢階級別の消費者物価上昇率を試算すると、幼児教育無償化の影響が最も大きい30~39歳の世帯では、消費税率引き上げ後に前年比▲2%台のマイナスとなっているのに対し、50歳以上の世帯では同1%台まで上昇率が高まっており、その差は約3%まで拡大している。
- 直近(2019年11月)のコアCPI上昇率は0.5%だが、全体の7割を占める50歳以上の世帯は1%程度の物価上昇に直面している。39歳以下の世帯は幼児教育無償化の恩恵が大きいが、支払う必要のなくなった保育料のかなりの部分は貯蓄される公算が大きく、消費の押し上げ効果は限定的と考えられる。消費税率引き上げ後の個人消費は、見かけの物価上昇率以上に実質所得低下の影響を受けている可能性が高い。