画像認識やマッチングなど今や人工知能(AI)はさまざまな場所で活用されています。それはアートの世界でも同様です。しかし、アート界で「AI」といってもイメージしにくい人もいるかもしれません。アート界で注目を浴びているAI技術について解説していきます。

アートとAIが融合した美術展も開催

AI,モネ,睡蓮
(画像=Everett - Art/Shutterstock.com)

東京・六本木の森美術館で「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」が2019年11月19日~2020年3月29日まで開催されています。AIとアートという相反するように見える2つを結びつけた美術展です。100点を超えるプロジェクトや作品は、AIやバイオ技術、ロボット工学、AR(拡張現実)といったテクノロジーとその影響を受けて生まれたものです。

この美術展では、AIがアートにもたらす影響をつぶさに見ることができます。特筆すべきは出展アーティストです。著名なアーティストと共に「Archiphiliaプロジェクト・チーム(竹中工務店)」「エンタテインメントロボット aibo」など企業名や商品名が並びます。美術展の概念を打ち破るこの展示会は、タイトルもIBMが開発したAI「IBM Watson」とのコラボレーションにより命名したものです。

AIによるアート作品は、海外でも人気を集めています。2019年6月にはニューヨークのクリスティーズで「アート+テックサミット」が開催されアートにおけるAI活用の方法を紹介し人気を集めました。実際にAIを使ったアート作品も登場しています。2018年10月にはニューヨークのクリスティーズにおいてAIで描かれた絵画が約4,900万円で落札されたというから驚きです。

作者はフランスのアートグループObviousで「Generative Adversarial Network」アルゴリズムを使って描いたとしています。

真贋判定も可能、美術界に役立つAIが続々登場

作品を生み出す一方でAIに期待されているのがアート界に役立つことです。なかでも注目を集めているのが機械学習による画像認識といわれています。大量にある画像データを学習することでアーティストごとの作品分析や年代別の仕分けなどが可能です。それに伴いアーティスト自身や作品の研究は大きく進化することが予想されます。

また作品の真贋判定にも利用できることが分かってきました。AIにアーティストの筆致を学習させることで機械的に真贋を判定するエンジンが開発され、その精度は約8割に達しているともいわれています。同様に美術館運営自体にもAIは活用できます。カメラと組み合わせて来場者の行動を分析したり表情を読み取ったりすることで来場者の感情を認識することも可能です。

人の流れを理解することで「作品の並びを入れ替える」「アートショップの品ぞろえを変更する」「動員数を伸ばす」「売り上げのアップを図る」などの効果も期待できます。多方面で活躍が期待されるAIですが、6月には大きな偉業を成し遂げました。それは、モネの大作『睡蓮、柳の反映」の修復です。川崎造船所(現・川崎重工業)の初代社長である松方幸次郎氏のコレクションだった『睡蓮、柳の反映』は、2016年に約60年ぶりに発見された時点で画布の上半分近くが欠損していました。

それを国立西洋美術館と凸版印刷は、推定復元を実施したのです。色彩を推定する手がかりとしてAI技術が活用されています。モネの作品から彩色パターンをAIに学習させ一部の色彩情報と合わせて全体の色彩を推定。見事によみがえらせ国立西洋美術館で開催された「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」でその姿を公開しました。

AIは人々の身近な生活を変えていきますが、アートの世界にも同様の変化をもたらしています。ゴッホやピカソといった芸術家たちが描いた作品を寸分違わずAIが再現する……そんな未来が訪れるかもしれません。また人には到底思いもつかないような新しいタイプのアート作品をAIの発案で制作するといった可能性も十分に秘めています。

今後はより一層アートの世界においてもAIの可能性が広がっていくことが予想されるでしょう。(提供:JPRIME


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