(本記事は、松原英多氏の著書『もの忘れをこれ以上増やしたくない人が読む本 脳のゴミをためない習慣』講談社の中から一部を抜粋・編集しています)
ワインや緑茶が認知機能低下を防止する
もちろん、テレビで取り上げる食材も、効果がすべてゼロとも決めつけられません。好例がワインやお茶です。
ワインにまつわるフレンチパラドックスなる言葉があります。フランス人は他の欧米諸国と同じく、肉食も動物性脂肪の摂取も多い。そのわりに、狭心症や心筋梗塞、さらには脳梗塞も少ないといいます。なぜでしょう。
この謎解きのカギは、フランス人の愛飲する、ワインのポリフェノールです。ポリフェノールの影響で、肉食や動物性脂肪の摂取が多くても狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などが少ないのだろうとなって、フレンチパラドックスと呼ばれるようになりました。
もちろん異論も反論もあります。でも、ポリフェノールの健康効果は認められたわけです。
日本人にとってもっと身近なお茶にも効果ありの判定がおりました。
お茶は不思議な存在です。世界各国のどこにでも、食事とともに飲むお茶、またはお茶らしきものが存在します。
日本の緑茶について、金沢大学医薬保健研究域医学系脳老化・神経病態学(神経内科学)の山田正仁教授らの研究班が、緑茶と認知症の関係を調査しました。
追跡期間は約5年。石川県七尾市中島町で、緑茶をまったく飲まない群と、多飲する群との比較をしたのです。
緑茶をまったく飲まない群に比べて、緑茶を週に1~6回飲む群では、認知機能が低下する率が大幅に減ったと報告されています。
わかりやすく言えば、「緑茶を飲むとボケにくい」となります。こうなると、お父さんの「おーい、お茶」も、バカになりませんね。
脳のゴミの悪さをチョコレートが防ぐ
お茶と言えば、何か甘いものが欲しくなります。では、チョコレートはいかがですか。
チョコレートには予想以上の抗酸化作用があります。認知症にとって、抗酸化作用は外せない重要なものです。
アミロイドβが脳神経細胞を死滅させる具体的な方法は酸化作用です。
人にとって酸素は欠かせないもの。われわれは呼吸によって酸素を取り入れます。取り入れた酸素を使い果たせば問題は起こりません。実際には使い切れずにあまりができる。このあまりが猛烈な酸化作用を呈し、脳神経細胞を皆殺しにしてしまうのです。
もちろん体内には、こうした過剰な酸化作用に抵抗する力があります。しかし、入ってくる酸素の量が多すぎるし、もともとの抗酸化作用も老化で弱まります。
あれやこれやで、過剰な酸化作用が進む。その結果、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、動脈硬化、さらにはガンや認知症も誕生します。
酸化作用は正の反応です。正の作用を一切カットもできません。そこで考え出されたのが、抗酸化作用の強化です。
抗酸化作用が強ければ、過剰な酸化作用は食い止められます。
というわけで、周囲を見渡すと、チョコレートが登場します。
スーパーマーケットなどで特定の食品があっという間に売り切れるという現象がありますね。その走りが、「午後は○○おもいッきりテレビ」(日本テレビ系列)で、チョコレートの親戚のココアが健康によいと放映されたところ、ココアブームを巻き起こしたことがあります。
夢よもう一度ではないですが、チョコレートにはココア以上に強い抗酸化作用があります。
「あの甘くて美味しいチョコレートを食べるだけで、ガンや認知症も予防できる」と、飛びつくのは待ってください。正体は、チョコレートに含まれるポリフェノールが効果を発揮するのです。
抗酸化作用の強いのは、カカオポリフェノール量のマーク70以上だといいます。カカオポリフェノール量は70〜99、さらには100%と並びます。マークに数字の多いほど苦みが強く甘みが少なくなり、食べるには相当以上の覚悟が必要になります。
でも、多くの実験を見ると、効果はかなりのものです。メーカーも効果と味の観点で研究を進め、食べやすいものが開発されています。
念のために、高カカオチョコレートに多く含まれるカカオポリフェノールの効能を列記しておきましょう。
1 抗高脂血症作用 2 ガン予防 3 アレルギーやリウマチ性疾患のコントロール 4 認知症予防 5 光老化(紫外線による皮膚への傷害)の予防
現在私も数名のガン患者さんに、高カカオチョコレート摂取を指示しています。人数が少ないので発表にまではいたりませんが、経過は非常に良好で、大学病院の主治医も「効いているのかもしれない」と、妙に納得されています。
将来的には、「その前」の時期からの摂取で、認知症予防にこぎ着けたいとも考えています。