相続において不動産を受け継がず、預貯金で相続財産を受け取る場合があります。このような場合でも、不動産投資としてアパートを購入することは可能です。ここでは、レバレッジを効かせたアパート経営の方法について解説します。
遺産分割協議で預貯金を相続したら
遺産相続は、遺言書がない場合、法定相続人全員で「遺産分割協議」を行うことになります。被相続人の妻が存命していれば引き続き土地や家屋を相続して住み、子どもで預貯金を分け合うのが一般的かもしれません。また、遺産分割協議をして預貯金を相続した場合、「資産運用をはじめてみよう」と考える方もいるのではないでしょうか。
とはいえ、株式投資では値下がりリスクがあり、逆に資産を減らすことになりかねません。そこで、思い浮かぶ資産運用の一つが家賃収入を目的とした不動産投資です。
少額の現金でもアパート1棟の購入は可能
不動産投資を行う場合、一番の問題は「物件の購入費用が高額なこと」です。多額の相続財産を引き継いだならともかく、数百万円程の預貯金では不動産の購入には心もとないでしょう。しかし、大家を目指してアパート1棟を購入することはそれほど難しくありません。なぜなら、レバレッジを利用することで不動産投資が可能になるからです。
レバレッジとは、少額の自己資金で大きな投資効果を得る投資手法のことになります。ここでは、具体的な例として1室5万円の家賃を取れる部屋が4室ある小規模アパートを1棟購入した場合の収支をシミュレーションしてみましょう。(購入時の諸費用は除きます)
【条件】
・物件購入費用:3,000万円
・家賃収入月:5万円×4室=20万円
・借入金利(元利均等):2%
・返済期間:20年
・全額自己資金の場合
5万円×4室で月20万円の家賃収入で年間家賃収入240万円になります。ローンは組みませんので返済はありません。手取り収入は240万円です。
・自己資金500万円、借入2,500万円の場合
上記同様、年間家賃収入は240万円です。毎月の家賃収入20万円に対して月の返済金額は12万6,470円となり、年間の返済合計は151万7,640円になります。手取り収入は88万2,360円です。
こちらのケースでは、自己資金500万円で6倍にあたる3,000万円の物件を購入したため、6倍のレバレッジを効かせたことになります。自己資金に対する表面の利回りは17%を超えてきます。
家賃収入で銀行返済も安定化
不動産投資で一番負担が大きいのは毎月の銀行返済でしょう。しかし上記シミュレーションのように、家賃収入を銀行返済に充てることで、それほど負担感なく返済を続けることができます。もちろん、あくまで毎月ローンを完済するまで満室だった場合であり、空室期間があれば収入は減ります。しかし、わずかな自己資金でアパートを経営できるのは、レバレッジ投資ならではのメリットです。
たしかに、全額自己資金のほうが手取り収入は多いですが、自己資金が貯まるまで待っている期間の機会ロスを考えれば、ある程度の自己資金ではじめたほうが早く収入を得ることが期待できるでしょう。
不動産レバレッジはリスクが低い
メリットが多いレバレッジですが、リスクもあります。レバレッジは、自己資金よりも借入額のほうが多いので、担保価値を超える評価損が発生した場合は追加証拠金を納めなければなりません。レバレッジと聞いてすぐ思い浮かぶのはFX(外国為替証拠金取引)です。しかし、FXは為替への投資ですので地政学リスクや世界情勢の変化で大きく円高または円安に振れることがあります。
株式投資も信用取引を利用すればレバレッジ投資となりますが、為替と違い「企業の倒産」もあり得るため、よりリスクが高いといえるでしょう。これら金融系の投資の場合は、相場の変動によって追加証拠金が発生するため、最悪では損切りして取引を終えることになります。その点、不動産投資は国内物件であるかぎり為替変動のリスクはありません。
ファンド型ではなく、現物不動産であれば運用元の破たんに遭遇するリスクも避けられます。リスクは、ローンの返済のみですので物件の価値が下がった場合でも追加証拠金が発生することはありません。毎月の家賃収入でローンを返済し、全額返済すれば担保が解除されて自己資産になる不動産は、レバレッジ投資に適した投資先といえるのではないでしょうか。遺産相続で預貯金を相続した場合は、資産運用の一環として不動産投資を検討する価値もありそうです。(提供:相続MEMO)
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