優良な経営状態にありながらも、後継者がいないために廃業せざるを得なくなる中小企業は、2025年までに127万社にものぼるという。
こうした「大廃業時代」への打ち手の一つが、第三者による事業承継、個人によるスモールM&Aだ。
これまでM&Aの売り手として扱われることのなかった売上額1億円前後の中小企業や、買い手としては資金力に欠けるとされていた個人がインターネットを介して出会い、会社を取引できる時代が到来している。
小規模なM&Aのプラットフォーム「Batonz(バトンズ)」を展開している株式会社バトンズ代表取締役の大山敬義氏に、個人がM&Aをする市場の今後の見通しとともに、実際の譲渡を想定した際のアドバイスを伺った。
スモールM&Aにトライする前に見ておきたい、3つのアドバイス
――個人がM&Aにトライしやすくなったとはいえ、すぐにできるものでしょうか?
難しいことではありません。興味がある方は、まずBatonzのようなサイトに登録をしたり、売り情報を検索したりしてみてください。事業所の場所や売上金額、業種などから、どのような売り情報があるかをチェックできます。
M&Aにあたって特に注意していただきたいのは、以下の3つでしょうか。
・専門家の知識を上手に活用すること
資金が乏しい人ほど、専門家に支払う金額をケチってしまうケースが見受けられますが、これは失敗につながる典型例とも言えるでしょう。
M&Aにかかわる専門家としては例えば、デューデリジェンス(買収監査。会社に給与の未払いや訴訟トラブルなど、買い取るにあたって問題がないかをチェックすること)があります。自分で見た情報だけで「まぁ大丈夫だろう」と判断をしてしまいがちですが、会社の価値とは素人にはなかなか分からないものなのです。
ましてや、自身の専門と違う業種の会社を買い取る際には、それぞれの業界ごとの特徴があるものなのです。例えば卸業者には卸業者の、建設業には建設業の「売り上げの立て方」があります。売上として計上したものが、後日返品によって売上戻りという形で減ることが当たり前の業界もありますし、一年がかりの大きなプロジェクトを進行に応じて毎月売上を立てていく業界もあります。
そうした業界ごとの違いを知らないまま契約してしまうと、思ったように売り上げが作れずに資金難に陥る可能性があります。ですから、業界に詳しい人に協力してもらったり、アドバイザーに交渉を依頼したり、専門家の力をフル活用すべきだと考えます。
専門家といっても、スモールM&Aと企業のM&Aはまったく違うものです。大規模M&Aだけを扱ってきた「M&Aのプロ」ではなく、業界や事業についての知識や経営コンサルタント経験があって事業計画に詳しいなど、譲渡のフェーズごとにより細かく対応できる人を活用しましょう。
・フルファイナンスで買わないこと
企業の買収にかかる全額をフルローンで用意することは絶対におすすめしません。自身がとれると考えるリスクの最大値よりも、常にワンランク小さめの会社を検討するのが鉄則です。
リスク回避の側面もありますが、成長のためのブーストをかける資金を残しておくことでもあります。