結果の概要:成長率は前期並みの成長を維持、市場予想を回る
1月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は19年10-12月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。10-12月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率(1)で+2.1%となり、前期(同+2.1%)並みの成長を維持、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の同+2.0%を上回った(図表1・2)。この結果、19年の成長率は前年比+2.3%となり、18年の+2.9%から低下した。
10-12月期の成長率を需要項目別にみると、個人消費が前期比年率+1.8%(前期:+3.2%)と前期から伸びが鈍化した(図表2)。また、民間設備投資が▲1.5%(前期:▲2.3%)とマイナス幅は縮小したものの、3期連続のマイナス成長となった。さらに、在庫投資の成長率寄与度は▲1.09%ポイント(前期:▲0.03%ポイント)と前期からマイナス幅が大幅に拡大した。
一方、住宅投資は前期比年率+5.8%(前期:+4.6%)と2期連続のプラス成長となったほか、政府支出は+2.7%(前期:+1.7%)と前期から伸びが加速した。また、外需の成長率寄与度が+1.48%ポイント(前期:▲0.14%ポイント)と前期から大幅な成長押上げに転じた。
当期は個人消費の伸びが鈍化したほか、在庫投資が成長を押し下げたものの、外需の成長押上げによって前期並みの成長を維持する結果となった。
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(1)以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。
結果の詳細:
●(個人消費・個人所得)耐久財消費の伸びが大幅に鈍化
10-12月期の個人消費は、サービス消費が前期比年率+2.0%(前期:+2.2%)となり、前期からの伸び鈍化が小幅に留まった一方、財消費が+1.2%(前期:+5.3%)と大幅に伸びが鈍化した(図表3)。財消費では、耐久財が+2.1%(前期:+8.1%)と前期から大幅に伸びが鈍化したほか、非耐久財も+0.8%(前期:+3.9%)と伸びが鈍化した。
耐久財では、娯楽財・スポーツカーが+3.3%(前期:+17.0%)と前期から大幅に伸びが鈍化したほか、家具・家電が+3.2%(前期:+6.0%)、自動車・自動車部品も+0.8%(前期:+2.5%)と前期から伸びが鈍化した。
非耐久財では、衣料・靴が+5.9%(前期:▲2.3%)、ガソリン・エネルギーが+4.7%(前期:▲1.0%)と前期からプラスに転じた一方、食料・飲料が▲1.0%(前期:+5.5%)と前期からマイナスに転じた。
サービス消費は、医療サービスが+2.9%(前期:+0.6%)、娯楽サービスが+2.8%(前期:+0.1%)と前期から伸びが加速した一方、住宅・公共料金が+0.8%(前期:+2.3%)と前期から伸びが鈍化した。
実質可処分所得は前期比年率+1.5%(前期:+2.9%)と前期から伸びが鈍化した(図表4)。貯蓄率は7.7%(前期:7.8%)と前期から小幅ながら低下した。
●(民間投資)設備機器投資、建設投資の減少が持続
10-12月期の民間設備投資は、知的財産投資が前期比年率+5.9%(前期:+4.7%)と前期から伸びが加速したものの、設備機器投資が▲2.9%(前期:▲3.8%)と2期連続のマイナスとなったほか、建設投資が▲10.1%(前期:▲9.9%)と、前期からさらにマイナス幅が拡大し、設備投資全体の足を引っ張った(図表5)。
建設投資では、資源関連が▲18.3%(前期:▲29.5%)と2桁のマイナスが持続したほか、電力・通信が▲2.8%(前期:+1.5%)、製造業が▲9.5%(前期:+7.3%)と前期からマイナスに転じた。
設備機器投資では、輸送機器が+8.7%(前期:▲11.3%)と前期からプラスに転じた。一方、情報処理関連が▲2.0%(前期:▲6.4%)とマイナス幅が縮小したものの、2期連続でマイナスとなったほか、産業機器が▲13.1%(前期:+6.7%)と前期から大幅なマイナスに転じた。
知的財産投資では、ソフトウエアが+11.6%(前期:+9.9%)、研究・開発が+1.7%(前期:+0.6%)と前期から伸びが加速したほか、娯楽・文学等が+4.1%(前期:+4.1%)と前期並みの伸びを維持した。
最後に住宅投資は、集合住宅が前期比年率▲11.7%(前期▲9.1%)と2期連続のマイナスとなったものの、戸建てが+12.8%(前期:+4.5%)と2期連続でプラスとなったほか、前期から大幅に伸びが加速して全体を押し上げた。
●(政府支出)連邦、州・地方政府ともに前期から伸びが加速
10-12月期の政府支出の内訳は、連邦政府が前期比年率+3.6%(前期:+3.3%)、州・地方政府が+2.2%(前期:+0.7%)といずれも前期から伸びが加速した(図表6)。
連邦政府支出では、非国防支出が+1.6%(前期:+5.0%)と前期から伸びが鈍化したものの、国防関連支出が+4.9%(前期:+2.2%)と前期から伸びが加速して、連邦政府支出全体を押し上げた。
●(貿易)財輸入が2桁の落ち込み
10-12月期の輸出入の内訳をみると、輸出が前期比年率+1.4%(前期:+1.0%)と前期から伸びが加速したほか、輸入が▲8.7%(前期:+1.8%)と前期から大幅なマイナスに転じており、当期は輸出入ともに貿易赤字を縮小させた(図表7、8)。
輸出を仔細にみると、財輸出は▲1.1%(前期:+2.1%)と前期からマイナスに転じたものの、サービス輸出が+6.4%(前期:▲1.3%)と前期からプラスに転じ輸出全体を押し上げた(図表7)。財輸出では、資本財(自動車関連除く)が+1.3%(前期:▲2.3%)、工業用原料が+13.9%(前期:+5.0%)と前期からプラスに転じたものの、自動車関連が▲23.2%(前期:+14.0%)、消費財(食料、自動車関連除く)も▲12.6%(前期:+1.0%)と前期からマイナスに転じた。また、食料・飲料が▲31.2%(前期:▲8.7%)と前期からマイナス幅が大幅に拡大し、輸出全体を押し下げた。
輸入は、サービス輸入が+4.3%(前期:+4.8%)と前期から小幅ながら伸びが鈍化したほか、財輸入が▲11.6%(前期:+1.1%)と2桁のマイナスに転じて輸入全体を押し下げた(図表8)。財輸入では、資本財(自動車関連除く)が▲1.4%(前期:▲0.9%)、工業用原料が▲8.2%(前期:▲0.4%)と前期からマイナス幅が拡大したほか、自動車関連が▲24.8%(前期:▲4.4%)、消費財(食料・自動車関連を除く)が▲23.6%(前期:+6.5%)と2桁の大幅な落ち込みとなった。
●(物価・名目値)コアPCE価格指数は前期比、前年同期比ともに前期から伸びが鈍化
10-12月期のGDP価格指数は、前期比年率+1.4%(前期:+1.8%)と前期から伸びが鈍化し、市場予想(同+1.8%)も下回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+3.6%(前期:+3.8%)と前期から伸びが鈍化した(図表9)。
一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数(2)は、前期比年率+1.6%、前年同期比+1.5%(前期:+1.5%、+1.4%)と前期比、前年同期比ともに小幅ながら前期から伸びが加速した(図表10)。もっとも、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率+1.3%、前年同期比+1.6%(前期:+2.1%、+1.7%)と、こちらは総合指数とは対照的に前期比、前年同期比ともに前期から伸びが鈍化しており、基調としての物価に上昇圧力の高まりはみられない。
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(2)現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。
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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員
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